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色んな好みが違う!朝飯和or洋だけじゃない!
①
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「杏奈さん、話があるの」
いきなり道子がそんなことを言い出して、杏奈はまだ内容を聞いていないのに重苦しい気持ちになった。
道子が波多野の会社で働き始めて一ヶ月が経過しようとしていた。同居は断固拒否したかったのに、結果「働いてお金を入れてるんだからいいじゃない」みたいな道子の強気を産み出してしまい、新たな物件を探す気配はない。
まさか「物件を探そうと思うの」みたいな話だったらいいけど、と道子の顔を見る。
「杏奈さん、私が波多野さんのところに勤めに出て一ヶ月が過ぎたわ」
「はぁ、そうですね。頑張っていますね」
「……私、あなたを誤解していた」
「は?」
「あなたは私を追い出したいが為に、嫌がらせで仕事をさせているのかと思っていた」
……厳密に言うとその通りであり、誤解ではないが。
「でも働くってとても楽しいことだわね。こんな楽しいことを教えてくれて、波多野さんを紹介してくれて、本当に感謝しているの。ありがとう杏奈さん」
道子は一方的にそう言うと、いきなり包み紙を取り出した。
「えっ何ですかこれ」
「開けてみて。自分のお給料で買ったのよ」
えーっ。なんだその、初任給で親にプレゼント買うみたいな展開は。
しかしめぼしいものが入っているやも知れぬと思い、杏奈は包装紙をピリッと開いた。
瑠璃夏用の服だった。
なんというか、薔薇柄? みたいな赤とピンクの派手な模様にレースが大量にあしらわれている、これはTシャツだろうか。
「可愛いでしよ」
道子が目をキラキラさせながらこちらを見ている。
……ださい。
しかもゴージャスすぎていつ着るんじゃーい。
サイズ的に少し大きいので、保育園入園辺りから着れそうだが、杏奈の好みとはかけ離れ、こんな服を好んで着せる母親だと周りから思われたらどうしよう。
道子が反応を待っている。
「ありがとうございますー。とっても可愛いですね。もう少し大きくなったら着せますねー」
杏奈は闇の感情を圧し殺し、笑顔で道子に言った。正解を言った。大人の対応をした。
道子は嬉しそうにしている。これで良かったんだ。ギスギスするより、いいんだ。自分に言い聞かせるが実際嬉しくない。勝手に娘のものを買わないで欲しい。
しかしこれを皮切りに、道子は他にも色々なものを勝手に買ってくるようになってしまったのだ。
いきなり道子がそんなことを言い出して、杏奈はまだ内容を聞いていないのに重苦しい気持ちになった。
道子が波多野の会社で働き始めて一ヶ月が経過しようとしていた。同居は断固拒否したかったのに、結果「働いてお金を入れてるんだからいいじゃない」みたいな道子の強気を産み出してしまい、新たな物件を探す気配はない。
まさか「物件を探そうと思うの」みたいな話だったらいいけど、と道子の顔を見る。
「杏奈さん、私が波多野さんのところに勤めに出て一ヶ月が過ぎたわ」
「はぁ、そうですね。頑張っていますね」
「……私、あなたを誤解していた」
「は?」
「あなたは私を追い出したいが為に、嫌がらせで仕事をさせているのかと思っていた」
……厳密に言うとその通りであり、誤解ではないが。
「でも働くってとても楽しいことだわね。こんな楽しいことを教えてくれて、波多野さんを紹介してくれて、本当に感謝しているの。ありがとう杏奈さん」
道子は一方的にそう言うと、いきなり包み紙を取り出した。
「えっ何ですかこれ」
「開けてみて。自分のお給料で買ったのよ」
えーっ。なんだその、初任給で親にプレゼント買うみたいな展開は。
しかしめぼしいものが入っているやも知れぬと思い、杏奈は包装紙をピリッと開いた。
瑠璃夏用の服だった。
なんというか、薔薇柄? みたいな赤とピンクの派手な模様にレースが大量にあしらわれている、これはTシャツだろうか。
「可愛いでしよ」
道子が目をキラキラさせながらこちらを見ている。
……ださい。
しかもゴージャスすぎていつ着るんじゃーい。
サイズ的に少し大きいので、保育園入園辺りから着れそうだが、杏奈の好みとはかけ離れ、こんな服を好んで着せる母親だと周りから思われたらどうしよう。
道子が反応を待っている。
「ありがとうございますー。とっても可愛いですね。もう少し大きくなったら着せますねー」
杏奈は闇の感情を圧し殺し、笑顔で道子に言った。正解を言った。大人の対応をした。
道子は嬉しそうにしている。これで良かったんだ。ギスギスするより、いいんだ。自分に言い聞かせるが実際嬉しくない。勝手に娘のものを買わないで欲しい。
しかしこれを皮切りに、道子は他にも色々なものを勝手に買ってくるようになってしまったのだ。
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