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主婦って寄生?じゃなくて共生なの?
⑥
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「事務所の掃除?」
入ったばかりで厚かましいかとも思ったが、道子はダメ元で波多野に申し出てみた。
「ボランティアでかまわないの! でもね、お掃除が仕事の会社なのに事務所の掃除がいまいちなのはちょっと残念だと思うのよ。私が是非ともやりたいわ」
「やってくれるのはありがたいですよ」
波多野はにっこり笑った。というわけで、道子は毎日の仕事のあと事務所の掃除もすることになった。同じ時間帯に出勤してくる片岡さんという奥さんが、事務所の常勤は社長しかいないから掃除が間に合わないのよと教えてくれた。波多野は垂れ目が愛らしく、いかにも世話をしてあげたくなるタイプである。道子は奮い立った。
最初は勝手に仕事を見つけてきた杏奈に腹が立ったが、波多野に出会えたことは結果的にとても良かった。更に会社で使っている業務用の清掃セットが物凄く使いやすく、仕事がとても楽しいのである。自宅用も是非ほしい。
道子は今まで主婦が働きに出るのは貧乏の象徴だと思っていた。リアルに貧乏だった頃は子供の数が多いのを言い訳に働くことはしなかったのだが、とにかく家事や育児を疎かにしてまでお金が必要な場合の仕方のないことだという認識だった。しかし外の世界とは意外と楽しいのだった。瑠璃夏を保育園に早くも預けようとしている杏奈も、きっとこの楽しさ故に働き続けるのだろう。主婦は己の楽しさなど封印して、家族の為に尽くすのが本当はいい。しかし働くステージが用意されているのなら、外に出たいと考える主婦が多いのも当然なのだろう。
「社長、バツイチなのよ。詳しくは知らないけど、脱サラするときに離婚したらしいわ」
片岡さんが言っていた。きっと家も散らかっているに違いない。ああ、掃除してあげたい。医者が不健康なように、清掃業者が不潔ではいけないではないか。
まず事務所の掃除をやるところまでは算段はついた。もうちょっと仲良くなればもしかしたら、ご自宅も掃除して差し上げたい。いやいや、一体何を考えているのかしら。でも、働きに出てリフレッシュできるし、和馬の家にお金は入れられるし、その上道子の頑張りで事務所や波多野の家がきれいになるなんて素晴らしい。道子はごちゃごちゃ考えながら、掃除に励んだ。
入ったばかりで厚かましいかとも思ったが、道子はダメ元で波多野に申し出てみた。
「ボランティアでかまわないの! でもね、お掃除が仕事の会社なのに事務所の掃除がいまいちなのはちょっと残念だと思うのよ。私が是非ともやりたいわ」
「やってくれるのはありがたいですよ」
波多野はにっこり笑った。というわけで、道子は毎日の仕事のあと事務所の掃除もすることになった。同じ時間帯に出勤してくる片岡さんという奥さんが、事務所の常勤は社長しかいないから掃除が間に合わないのよと教えてくれた。波多野は垂れ目が愛らしく、いかにも世話をしてあげたくなるタイプである。道子は奮い立った。
最初は勝手に仕事を見つけてきた杏奈に腹が立ったが、波多野に出会えたことは結果的にとても良かった。更に会社で使っている業務用の清掃セットが物凄く使いやすく、仕事がとても楽しいのである。自宅用も是非ほしい。
道子は今まで主婦が働きに出るのは貧乏の象徴だと思っていた。リアルに貧乏だった頃は子供の数が多いのを言い訳に働くことはしなかったのだが、とにかく家事や育児を疎かにしてまでお金が必要な場合の仕方のないことだという認識だった。しかし外の世界とは意外と楽しいのだった。瑠璃夏を保育園に早くも預けようとしている杏奈も、きっとこの楽しさ故に働き続けるのだろう。主婦は己の楽しさなど封印して、家族の為に尽くすのが本当はいい。しかし働くステージが用意されているのなら、外に出たいと考える主婦が多いのも当然なのだろう。
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片岡さんが言っていた。きっと家も散らかっているに違いない。ああ、掃除してあげたい。医者が不健康なように、清掃業者が不潔ではいけないではないか。
まず事務所の掃除をやるところまでは算段はついた。もうちょっと仲良くなればもしかしたら、ご自宅も掃除して差し上げたい。いやいや、一体何を考えているのかしら。でも、働きに出てリフレッシュできるし、和馬の家にお金は入れられるし、その上道子の頑張りで事務所や波多野の家がきれいになるなんて素晴らしい。道子はごちゃごちゃ考えながら、掃除に励んだ。
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