森の愛し子〜治癒魔法で世界を救う〜

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【第二章】セレイム王国へ

国王に挨拶へ

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 竜の間でレヴィンと別れ、謁見の間へと向かった二人。
 目の前には、豪華な花が両脇に飾られ、王座に座っている王と、その王を前に跪く者の場面が彫刻された扉が広がっている。ここが謁見の間のようだ。

「セルビオス・スィン・セレイム国王陛下。竜騎士団団長、カイン・アルバート、ただいま戻りました」
 扉の前で戻ってきたことを報告したカイン。
 ―セルビオス・スィン・セレイム。彼はセレイム王国を統治するこの国の王である。

 カインが言い終えると、謁見の間の扉が内側から開かれた。
 謁見の間は、入り口から王座までの一直線上に赤い絨毯が敷かれ、部屋の中心に当たる天井には、大きなシャンデリアが存在感を見せる。二人は、その扉を潜った。
 赤い絨毯の上を歩き、国王の近くまで来るとカインは跪いた。レイもそれに倣い、彼の少し後ろで跪く。

「カイン、よくぞ戻ってきてくれた」
「ありがたき、お言葉」
「して、そなたの隣におる、少女は誰だ」
 セルビオスは早速、レイに目を付けた。
「戦いで負傷した瀕死の私を助けてくださった、命の恩人でございます」
「ほう。命の恩人か……」
 レイを見極めるような視線を送るセルビオス。
「そなた、名を何という」
「レイと申します。姓はありません」
「(姓がないと……)出身は何処だ」
 姓は、平民であれば誰でも持っているものだ。姓を持たないと言った彼女を、セルビオスは怪しむ。
「分かりません。物心がつく前に暗闇の森に捨てられたので」
「暗闇の森だと?それは真か?その森に入った者が生きて帰れたことはない」
 彼の目が鋭く光る。
「真にございます。暗闇の森に捨てられ、暗闇の森で育ちました」

「……陛下。発言をお許しください」
 二人の会話に、カインが割って入った。
「構わぬ」
「ありがとうございます。…彼女が暗闇の森で暮らしているのは、真実でございます。今回の戦いで、私が攻撃を受け、暗闇の森に墜落したのは陛下のお耳にも届いていると思います」
「ああ。聞いておる」
「その森で今日、彼女が私たちを見つけ、助けてくださいました。傷を治してくれた後、食糧を持っていない私たちに食事を用意してくださり、食事を終えてすぐ、私たちは彼女とセレイム王国に戻って参りました。この事に嘘はございません。これは、彼女が暗闇の森で暮らしているという、証拠にはなりませんか」
 カインが落ちつた口調でレイと出会ったいきさつを話す。
「なるほどな。あの森でお前を助け、食事まで用意したというのは、そこに暮らしていなければ不可能なこと。……レイ、と言ったな」
「はい」
 セルビオスの目は、まっすぐレイを捉える。
「疑ってすまなかった。今回の件、感謝する」
 そう言い、彼は頭を下げた。
「っいえ、私は何も……」
 突然、頭を下げたセルビオスに困惑するレイ。謁見の間にいる他の者も同様のようだ。
 しばらくの沈黙が続いた。
 すると、
「一国の王が、容易く頭を下げるのではない」
 突然聞こえてきた声に、どよめく謁見の間。
「(え?)」
 それはレイも同じだ。
「何者だ!」
 セルビオスが、声を荒げる。

 その声を合図に、声の主がレイたちの前に現われた。
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