森の愛し子〜治癒魔法で世界を救う〜

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【第二章】セレイム王国へ

新たな仕事

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 やり取りが落ち着いた頃、一人の治癒師がやって来た。
「治癒師様。お話しのところ申し訳ありません。実は、相談したいことがありまして」
「何かあったの?」
「実は治していただいた騎士の一人が、食事を摂ってくれないのです」
「食事って。どんなの?」
「むね肉のスープです。野菜も同時に取れるので、厨房の者に作ってもらったのですが……」
「その騎士のところまで案内して」
「は、はい!こちらです」
「団長さん。夜ご飯は少し後にしてもらっていいかしら」
「ああ。構わない。騎士を頼む」
「ええ」
 レイは治癒師について行く。

「カイン、お前ずいぶんとあの人を信頼しているな」
「まあな。レイ殿は、信頼できる人だ」
 彼女の背後では、カインとレヴィンの二人がそんな会話をしていた。

「治癒師様、この者でございます」
「あなた、食事を摂らないって、聞いたけど何か理由があるの?」
 レイは、食事を摂らない騎士と目線を合わるために、彼の前に屈み状況を聞いた。
「あ、ああ。腹は減っているんだが、のどが通らないんだ」
「食べられないものがあるとか?」
「いや、好き嫌いはない。ただ、なんだか受け付けなくて」
「そのスープって、ある?」
 レイは、治癒師に尋ねた。
「はい。こちらです」
 器に入ったスープを持ってきた治癒師。
 レイは、そのスープの香りを嗅いだ。
「濃いわね。多分この匂いが原因ね」
「匂いですか?ですが、他の者は問題なく食べてましたよ?」
「精神的ショックがあったりすると、すると匂いに敏感になったりするのよ」
「そうなのですか」
「ええ。そのスープ作り直せるかしら」
「え?」
 突然、作り直すと言い出したレイに、戸惑いを隠せない治癒師。
「食材はまだある?」
「ええ。厨房に」
「……私が厨房に入って作るのって、出来ないわよね」
「難しいかと……」
 レイたちが話していると、竜の間に誰かが入ってきた。

「それなら、私が許可を出そう」
「陛下!」
 そう、竜の間に入ってきた人物は、セルビオスだった。
 王の突然の訪問に、竜の間はどよめいた空気が流れる。
「国王。どうしてここに」
 レイも彼が来たことに驚いている。
「今、通りかかったのだ。少し気になってな」
 セルビオスはそう言って、竜の間を見回した。
「お騒がせして申し訳ありません」
 レイの隣にいた治癒師が彼に謝った。
「構わんよ。……レヴィン」
 彼は治癒師に言葉を返し、レヴィンに指示を出す。
「はい」
「お前は、レイ殿と厨房へ行き、スープを作ってきなさい。料理長には、レイ殿が調理することを国王が許可したと伝えればよい」
「はっ」
「いいのですか?」
 レイは、セルビオスに確認を取る。
「ああ。私にも分けてくれ」
 そう言ってセルビオスは彼女に、ウインクをした。
「ふふ。分かりました」
 お茶目な姿を見せる彼に少しかわいらしさを覚えたレイは、思わず笑ってしまう。
「レイ殿、行きましょう」
 レヴィンが、厨房へ向かうためレイに声を掛けた。
「ええ」
 二人は、竜の間を後にし厨房へ向かった。

「レイ殿は、分からない人だな。協力的なのか、非協力的なのか」
 カインがそんなことを呟いた。その呟きをレオンが拾う。
「人でも、獣でも、自分の前で死なれるのは、見逃せない子だからな。それが、あの子の魅力でもある」
「それは、そうですね」
 カインの彼女の背中を見つめる目は優しさで満ちている。
 また同じように彼女を見るレオンは、娘の成長を見守る父親のようだった。
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