森の愛し子〜治癒魔法で世界を救う〜

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【第二章】セレイム王国へ

治療の次は料理

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 厨房へ着いたレイと、レヴィン。
 さすがは王城の厨房といったところか、厨房は広く、従業員と見られる者が二十名程いる。
 厨房内は、しっかりと清掃されていて清潔に保たれている。

「急に来てすまない。料理長はいるか?」
 レヴィンが厨房にいる者たちに声を掛ける。
 突然の訪問に、厨房の者たちは作業する手を止め、静まり返る。
「はい!レヴィン副団長、どうされましたか?」
 呼び掛けに答えた、一人の男。彼がここの料理長のようだ。
 鍛え上げられたその体は、高身長のレヴィンをもすっぽり隠してしまうほどだ。

「バルト、すまないが少し厨房を使わせてくれないか?」
 料理長の名は、バルト・カーター。日に焼けた逞しい身体に、赤髪の短髪が印象的だ。
「それは構いませんが、何か作られるのですか?」
「ああ。私が作るのではないんだが」
 と言って、レヴィンはレイに視線をやる。
「……どなたで?」
 その視線を追って、レイのことを見たバルト。
「治癒師のレイ殿だ」
「治癒師の方が、どうしてこちらへ?」
「竜の間にいる人の中で、食欲がなくてスープを飲まない人がいたから、少し味を変えて作ろうと思って」
 レイがバルトの疑問に答えた。

「私どもの作ったスープに何か問題でもありましたか?」
「料理には何の問題もなかったわ。ただ、食欲が湧かない人には、いつもスープは濃かったみたいなの」
「レイ殿が作ることに関して、陛下からの許可は頂いている」
 フォローを入れるように、説明を加えたレヴィン。
「……そうですか。厨房は空いているので、構いませんよ。何かお手伝いできることがあれば、仰ってください」
 バルトは、レイが厨房に入ることを受け入れた。
 付き添いのレヴィンは、厨房の入り口付近で待機する。
「ありがとう。早速なんだけど、さっき作ってくれたスープの材料を少し使わせてほしいの」
「分かりました」
 そういうと彼は、すぐに食材を用意した。

 スープの材料は、鶏むね肉、じゃがいも、ニンジン、玉ねぎ、コンソメ、と至ってシンプルなものだ。
「これが材料です」
「助かるわ。バルト、さん?」
「はい」
「材料を切るの手伝ってくれないかしら?」
「ええ。分かりました」
「ありがとう。早速だけど、じゃがいもとニンジンはいつもより小さく、口に入れやすいサイズに切ってほしいの。私は、玉ねぎと鶏肉を切るから」
「はい。お任せください」
 二人は、分担して料理作りに取り掛かる。
「レイ殿、大きさは、これくらいで構いませんか?」
「ええ。大丈夫」

 料理長のバルトの手伝いもあって、下準備はあっという間に完了した。
 下準備が済むと、レイは鍋に火をかけた。鍋が温まると、油を引き鶏肉を炒め始める。
 肉の表面に、ある程度火が通ったら、次にニンジンとじゃがいもを入れていく。
「料理はよくされるのですか?」
 彼女の手際の良さに、感心したバルトがスープが煮詰まるのを待ちながら質問をした。
「ええ。毎日」
「なるほど。毎日作られているのなら、その手際の良さは納得です。正直、料理を作り直すと言われたときは、少し腹が立ちました」
 料理を作りながら、バルトは感情を吐露した。先ほどは、冷静に見えたがそうではなかったようだ。
「……そうよね。突然あんなこと言われたら、誰でも腹が立つわよね、考えなしだったわ。ごめんなさい」
 レイは素直にバルトに謝った。彼女は人に対して冷たいが、自分に非があれば必ず謝ることができる人だ。
「ですがレイ殿に指摘いただき、気づけなかった私にとって学びになり、料理長として一つ成長出来ました。今は感謝しています」
 バルトは、白い歯を見せて笑った。
「そう」
 レイは、彼の言葉に、目をぱちくりとさせた。感謝されるとは思っていなかったようだ。
「後は、もう少し煮詰めたら完成ね」
「ええ。そうですね」
 後は、スープの完成を待つだけだ。
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