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【第三章】王都国立学園へ
出発
しおりを挟む書斎の扉を開き出ると、エイミーが扉のすぐそばでレイたちを待っていた。
「エイミーさん。すみません、お待たせしました」
「いえ。レイ様たちのお見送りは、カイン様がしてくださるようなので、私はここで失礼致します」
そう言うと、彼女は速やかにその場を立ち去った。
「え?」
レイはエイミーの残していった言葉に、思わず声が漏れる。
そんな彼女の背後から誰かが声を掛けた。
「父さんたちと話は済んだのか?」
「団長さん。ええ。見送りなんて、別にいいのに」
声を掛けたのは、近くで彼女たちを待っていたカインだった。
「私が送りたいだけだ。気にするな」
そうして、三人は正門へ向かった。
「レイ殿たちはいつ、こっちに戻ってくるんだ?」
歩きながらカインはレイに話し掛けた。
「明日のお昼には王都に戻ると思うわ」
「そうか。戻ってきたら、王都を観光するといい。食べ歩きもいいぞ。出店の店主は優しい人が多いから、おまけをつけてくれるかもしれない」
彼は楽しそうにレイたちに、城下町の魅力を伝える。
「それはいいわね」
「レイ。私はまた、ケルウの肉が食いたい」
レオンが二人の会話に入る。
「そうね。明日は、ペガサス亭で夕食にしましょう」
「よし」
彼は、嬉々とした目をした。
まるで、プレゼントを楽しみにしている子どものようだ。
「レオン殿に、それほど気に入っていただけて、良かったです」
「また、上手い店があったら紹介してくれ」
「ええ。ぜひ」
カインはレオンに対してはにかんだ。
レオンもまた、彼に微笑み返した。
話が落ち着いたところで、ちょうど正門前に着いたレイたち。
「本当にここまででいいのか?」
「ええ。ありがとう」
「いや、礼を言うのは私の方だ」
「もうそれは聞き飽きたわ」
彼女は困ったように笑った。
「そうか」
カインはレイに指摘され、照れ笑いした。
「じゃあ、私たちはこれで」
「ああ。また時間が取れたら遊びに来てくれ」
「ええ」
「ああ」
カインと別れ、レイとレオンはアルバート邸を後にした。
アルバート邸を出て、二人は今、城下町を歩いている。
「昨日は、街を見る余裕がなかったけど結構、賑わっているのね」
「そうだな。街の者たちが活き活きしているな」
二人の言う通り、明るい時間の街は、夜とはまた違う賑わいを見せている。
様々な店が立ち並び、呼び込む声があちこちから聞こえてくる。
「アクセサリー類の小物も売っているのね。王都に戻ってきたらゆっくり店を見て回ろうかしら」
「食べ歩きもできそうだ」
レイとレオンは辺りを見回しながら言葉を交わす。
「ふふ。貴方は本当に食べるのが好きね」
彼の食い意地の強さに、彼女は思わず笑みがこぼれる。
「今に始まったことじゃないだろう」
二人は、そのまま城下町を抜けてセレイム王国の門を潜って、その場を後にし、暗闇の森へ向かった。
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