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11話 暴かれた真相
しおりを挟むセンシアさんの影と対話をしているのだろうか、プルジャがぶつぶつと何やら呟いていた。
そして場面はまた切り替わる。これはおれが勇者の称号を授与された時の光景だ。王から剣を受け取るおれを、彼女はまるで我が事のように嬉しそうに微笑みながら見ていた。そしてその日、おれ達は二人で祝杯を挙げ共に喜び合った。
「おめでとう! ヴァレント! 遂にこの日が来たわね!」
「ありがとう! これも君がいてくれたお陰だレベリオ。次の討伐が無事成功したらおれと結婚してくれないか?」
彼女は顔抑え下を向いて泣いていた。おれはこの時てっきりうれし涙を流しているのかと思っていたが、今となってはこの時彼女はどんな思いだったのだろうか。
「もちろんよ、ヴァレント――」
その言葉がまた遠ざかるように消えていくと部屋の中が暗くなった。天井には星空が現れ遠くには野営の拠点だろうか、いくつかのかがり火が見える。暗闇でうっすらと見えるのはレベリオとロディの姿だった。周囲を気にするようなレベリオの小さな声が聞こえる。
「この討伐遠征が終わったら結婚してくれとヴァレントに言われました」
「いいじゃないか。結婚してやりなさい」
「よろしいのですか?」
「もちろんだとも。その方が全てを知った時に奴は絶望するだろう」
嘲るような笑い声が闇夜に微かに響いた。ロディがレベリオを引き寄せゆっくりと彼女の頬を撫でた。
「その代わり、奴の子種を残す事は許さん。わかっているな?」
「はい……心得ております」
「怪しまれぬよう体は重ねてやるといい。すでに純潔ではない事は悟られぬようにな」
レベリオが軽く頷くと二人は闇の中で深い口づけを交わした。再びおれの中の憎悪の炎が激しく燃え上がった。ガタガタと壁や床が震え始める。
「お、おいヴァレント……落ち着け」
珍しくアンクバートが焦ったような声を出した。プルジャがおれをちらりと見る。
「止める?」
おれは深く呼吸をし、溢れ出そうになる魔力を抑え込んだ。
「大丈夫だ……続けてくれ」
そして再び景色は変わっていく。ダンジョンの主と戦っている様子。そして王都への凱旋。おれとレベリオの結婚式。それらはまるで絵巻物のように次から次へと移り変わっていった。
月の光が差し込むベッドの上でおれとレベリオが眠っていた。彼女はするりとおれの腕から抜け出すと、物音を立てぬようこっそりと室内を歩いた。引き出しを開け小瓶を手に取った。おそらくは避妊薬だろう。
蓋を開け一瞬だけ彼女は飲むのを躊躇った。すると耳元の印がわずかに光り、彼女は小さな悲鳴を上げた。やがて痛みに耐えるように彼女は震える手で薬を飲み干した。
彼女はおれが眠るベッドへと戻るとしばらくの間おれの寝顔を見つめていた。そして小刻みに体を震わせながら声を押し殺して泣き始めた。その声を聞かれまいと彼女は一人バルコニーへと向かう。
月を見上げその光に照らされたレベリオの頬には涙が伝っていた。消え入るような声で彼女は呟く。
「ごめんなさい……ヴァレント……」
涙を浮かべながら彼女がこちらに目を向けた。まるで自分を見ている母の顔を見つめるように。
「助けて……母さん」
その瞬間、目の前の光景が霧が晴れたように消え失せた。ふーっと息を吐きながらプルジャがその場に座り込んだ。
「疲れた。ちょっと休む」
すでにセシリオさんの影も消えていた。やれやれといった表情のアンクバートが煙管に煙草の葉を詰め始めた。
「これで大体の真相はわかったみたいだな。だが一つ腑に落ちねぇのは、いくら不意打ちとはいえ聖女が呪いにかかるもんかね? 加護の力だなんだのが働くんじゃねえのか?」
その点はおれも疑問だった。いくら古代の呪具だからといって、易々と聖女に服従の契約など結べるのだろうか? おれが考えに耽っているとプルジャが口を開いた。
「彼女はたぶん聖女じゃない。きっと私と同じネクロマンサー」
驚きのあまりあんぐりと口を開けたアンクバートの手元から、ゴトンと音を立てて煙管が滑り落ちた。
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