12 / 23
12話 呪いの解呪
しおりを挟む
宰相の執務室で私は再び尋問を受けていた。ロディの問い掛けに対し、私は事前に決めていた架空の話を淡々と喋っていた。質問が終わると書記官が書類を抱えながら部屋を出て行った。
「もう呪いは解いてあげてもいいでしょう? ロディ様」
部屋の隅で待機していたアジュダが私の方へと近寄ってきた。後ろには魔法省の人間が二人ほど付き添っている。
「よろしく頼む、アジュダ」
ロディがそう言いながら席を立つと、私はアジュダに手を引かれ部屋の中央に置かれた椅子に座った。
「心配しないでレベリオ。これと似たような呪いは解呪した事あるから。ちょっと……いや結構痛いかもしれないけど我慢してね」
私を安心させようとアジュダがにこりと微笑んだ。私も軽く笑みを返しながら頷いた。
私を囲うようにして三人が三角形に立ち身構えた。正面に立つアジュダが長い詠唱を唱え始めると足元に魔法陣が現れる。首筋の呪術印がじりじりと焼けるように熱くなっていく。私は奥歯を噛み締め必死に堪えた。皮を剥ぎ取られるような激痛が首筋に走った。
「うっ!」
意識が飛びそうになった瞬間、ようやく魔法陣が消え痛みが和らいでいった。首筋からわずかな血がつーっと流れた。全身の力が抜け、ふらりと倒れそうになった私をアジュダが支えた。
「頑張ったねレベリオ。もう大丈夫だよ」
彼女は私を抱きしめながらハンカチを取り出すと首から流れる血を拭き取ってくれた。
「ちょっと出血したみたいだね。ちゃちゃっと自分で治しちゃって」
アジュダにそう言われたが、私はその小さな傷さえ今は治す事が出来ない。
「体に力が入らなくて……魔法が出せないの」
アジュダにだけ聞こえるような小声で私は言った。彼女は少し驚いた表情を見せたがすぐに柔らかな笑みを浮かべた。
「ロディ様。念のためレベリオを治癒室に連れて行ってもいいでしょうか?」
「ああ、その方がいいだろう」
特に心配した様子も見せずロディはそう答えた。私はアジュダに支えられるようにして執務室を後にした。治癒室へと向かう途中、私はアジュダの耳元でささやいた。
「あなたに話したい事があるの……」
彼女は何も言わずに頷いた。服従の契約が解かれた今、ようやく真実を伝える事が出来る。私はこれまでの事を彼女に語り始めた。
「どういう事だ?」
おれはプルジャに問い掛けた。彼女はぺたりと床に座り込みながらおれを見上げた。
「ネクロマンサーは使役した死霊の力を操る事が出来る。たぶん聖女様は母親の力を使っていた」
「使うつっても限度があるんじゃねえのか? レベリオは聖女認定を受けてんだぞ?」
アンクバートが煙管を拾い上げ再びタバコの葉を詰めながら訊いた。
「普通は全部の力を引き出す事は不可能。でも彼女達は親子。より深く死霊との結びつきが持てるはず」
確かにプルジャの推測は頷けるものがある。だがどうしても解せないのは、なぜその事をおれに教えてくれなかったのだろうか。今回の一連の事も含め、小さな疑問の数々がおれの中に暗い影を落としていく。
「とりあえずはもう少しセンシアさんの記憶を見せてくれないか?」
おれがそう言うとプルジャはよいしょと立ち上がった。だがその時、アンクバートが椅子を倒しながら立ち上がった。
「待て! 遠くに魔物の気配がする。しかも大量だ」
彼の言葉を受けおれも索敵を試みる。わずかに感じた魔物の気配が徐々に強くなっていった。
「スタンピードだ――」
おれとアンクバートはすぐさま屋敷の出口へと向かう。プルジャの吐いた長い溜息が背後から聞こえてきた。
「もう呪いは解いてあげてもいいでしょう? ロディ様」
部屋の隅で待機していたアジュダが私の方へと近寄ってきた。後ろには魔法省の人間が二人ほど付き添っている。
「よろしく頼む、アジュダ」
ロディがそう言いながら席を立つと、私はアジュダに手を引かれ部屋の中央に置かれた椅子に座った。
「心配しないでレベリオ。これと似たような呪いは解呪した事あるから。ちょっと……いや結構痛いかもしれないけど我慢してね」
私を安心させようとアジュダがにこりと微笑んだ。私も軽く笑みを返しながら頷いた。
私を囲うようにして三人が三角形に立ち身構えた。正面に立つアジュダが長い詠唱を唱え始めると足元に魔法陣が現れる。首筋の呪術印がじりじりと焼けるように熱くなっていく。私は奥歯を噛み締め必死に堪えた。皮を剥ぎ取られるような激痛が首筋に走った。
「うっ!」
意識が飛びそうになった瞬間、ようやく魔法陣が消え痛みが和らいでいった。首筋からわずかな血がつーっと流れた。全身の力が抜け、ふらりと倒れそうになった私をアジュダが支えた。
「頑張ったねレベリオ。もう大丈夫だよ」
彼女は私を抱きしめながらハンカチを取り出すと首から流れる血を拭き取ってくれた。
「ちょっと出血したみたいだね。ちゃちゃっと自分で治しちゃって」
アジュダにそう言われたが、私はその小さな傷さえ今は治す事が出来ない。
「体に力が入らなくて……魔法が出せないの」
アジュダにだけ聞こえるような小声で私は言った。彼女は少し驚いた表情を見せたがすぐに柔らかな笑みを浮かべた。
「ロディ様。念のためレベリオを治癒室に連れて行ってもいいでしょうか?」
「ああ、その方がいいだろう」
特に心配した様子も見せずロディはそう答えた。私はアジュダに支えられるようにして執務室を後にした。治癒室へと向かう途中、私はアジュダの耳元でささやいた。
「あなたに話したい事があるの……」
彼女は何も言わずに頷いた。服従の契約が解かれた今、ようやく真実を伝える事が出来る。私はこれまでの事を彼女に語り始めた。
「どういう事だ?」
おれはプルジャに問い掛けた。彼女はぺたりと床に座り込みながらおれを見上げた。
「ネクロマンサーは使役した死霊の力を操る事が出来る。たぶん聖女様は母親の力を使っていた」
「使うつっても限度があるんじゃねえのか? レベリオは聖女認定を受けてんだぞ?」
アンクバートが煙管を拾い上げ再びタバコの葉を詰めながら訊いた。
「普通は全部の力を引き出す事は不可能。でも彼女達は親子。より深く死霊との結びつきが持てるはず」
確かにプルジャの推測は頷けるものがある。だがどうしても解せないのは、なぜその事をおれに教えてくれなかったのだろうか。今回の一連の事も含め、小さな疑問の数々がおれの中に暗い影を落としていく。
「とりあえずはもう少しセンシアさんの記憶を見せてくれないか?」
おれがそう言うとプルジャはよいしょと立ち上がった。だがその時、アンクバートが椅子を倒しながら立ち上がった。
「待て! 遠くに魔物の気配がする。しかも大量だ」
彼の言葉を受けおれも索敵を試みる。わずかに感じた魔物の気配が徐々に強くなっていった。
「スタンピードだ――」
おれとアンクバートはすぐさま屋敷の出口へと向かう。プルジャの吐いた長い溜息が背後から聞こえてきた。
0
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる