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01. 悪役令嬢は、寿命長寿がお好き
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(いやいやいや!? よりにもよってフィアンナって、バッドエンド一択じゃん!!)
残念ながら私の人生はこれが2週目なので勘弁してもらいたい。
なにをどうしたらこうなった。
「……アンナ、フィアンナ!!」
耳元で叫ばれた新しい名前にびくりとし、反射的に声を上げる。
「ふぁ、ふぁい!」
ふぁいってなんだ。ふぁいって。今日一日でどれだけ散々な目に……。
「本当に大丈夫か? もう一度横になっていなさい、すぐ医者を――」
「いっ! いえ、遠慮、じゃない。大丈夫ですわ! 起きたばかりでふらふらとしてしまっただけですの」
こ、言葉遣いが分からない。このくらいの子どもってどのくらいまで話せた!?
焦る私をじっと見てくるお父様――アルバート・ヴィシャス公爵は私をまじまじと見てくる。
心配してくれてるのは分かるけど、眉間の皺が真っ暗谷になってるます。怖いとかそういうの通り越して大人も泣きますよお父様。
中身がOLの美幼女がいうんだから間違いない。
「……立ちくらみ、か。どこか転んで頭を打ったりはしていないのか? 先ほど額を抑えていただろう」
か、観察力すごいな。ある意味頭打った位、中身変わったのも合ってます!
けど額を抑える原因はぐいぐい眼前に来られるってことも理由の一つです!
「まだ風邪がきちんと治っていないのだろう、あまり魔力が安定していないこの時期にお前も診てもらうのは嫌だろうが、やはり魔法医を呼んできちんと治すのがいいだろう。そうすればお前も楽しみにしていた茶会にも出ることができる。どうだろうか」
えっ、お茶会とか器を吞む前に回すってことくらいしか知識としてないんですが、それは。というかそれは日本式だ。しかも流れ的に医者に診てもらってお茶会やる流れになってるしどうなってんだ。
「え、ええ。わかりました。お父様の仰るとおりにいたしますわ」
こうなったらなるようになるしかない。ごくりとつばを飲み込んで気合を入れる。
最悪、体調が悪くていつもの半分の力も出なかったぜハハハ作戦でゴリ押しする。
「そうか! ではすぐにでも医者を呼ぼう、魔法医は転移の呪文が扱えるから安心するといい。もうすぐ楽になるからな」
別の意味に聞こえるのだが、その言い方はいかがなものかと思いますよ。過敏になっているのだからそういう話はNGでお願いしてもらいたいですね。
などという念が彼に通じるなら苦労はしていない。
お父様は善は急げとばかりに立ち上がり歩き出すとドアノブに手を掛けこちらへ向かって発声した。
「無理をせずに横になっていなさい。後でまた魔法医を連れて部屋へ戻って来る。何かあったらベルですぐにジェラールを呼びなさい」
「はい、分かりました」
ぱたりと閉まるドア。
水を得た魚張りに元気になったお父様に、逆に彼が心労で大変だったのではないかと思い直してきた。この世界では私のほかに兄弟がいるかは分からないが、あの様子だと私以外にいない気がする。今日にでもそれとなく尋ねてみよう。
……そういえばさっきお父様はジェラールと言っていたが。
「それって、どう考えても執事のジェラールのことだよね」
フィアンナには5つ年上の青年執事――ジェラール・シュヴァリエ。身辺警護兼あらゆることの雑事を任せる執事が付き従っており大抵のことは彼に任せるきらいがあった。それが原因でダンスパーティーの断罪ではいなかった時期や時間を訳に事細かに洗い出され、逃げ場を失ったが故に全て白状するというのが彼の大きな役どころだ。
彼は確かフィアンナの兄代わりのような存在で路頭に迷っていたころ、お母様――イレーナ・ヴィシャスが彼を執事として雇うことに決めたのよね。それで、実質乳飲み子の辺りから関わっていた。というのが限定版データブックに記載されていた。残念ながら彼はフィアンナに関わる全エンディングで断罪後、謝罪の旨を手紙に残して失踪する。
「って……そうか。ジェラールも、宰相殿も、みんなバッドエンド、なのか」
……そうだ。彼だけではない。今後の自分の身の振り方次第では周りの人の人生を大きく変わるのだ。自分だけではなくヴィシャス公爵家の解体、また、屋敷で働くジェラールを筆頭とした執事や女中たち使用人そのほかヴィシャス家に関わったものたちはあらぬ疑いをかけられるのだ。
病気にかかった木は周りに移さないように根こそぎ刈っていく。それが王家、ルカ王子のやり方だった。
もちろん。宰相殿も例外じゃない。
愛したほうが悪いのか、愛されたほうが悪いのか。
「白薔薇の花嫁」は真実の愛がテーマだった。
華々しく好きな人と結ばれる人もいれば、嫉妬にかられてその華が枯れるまで愛してほしいと叫ぶ者もいる。それらはすべて表裏一体であることに気づいてほしいと原作者は言っていた。
フィアンナ・ヴィシャスとシルヴァン・オーギュスト。
彼女たちは本当に真の愛を勝ち取ることができたのだろうか。
私はそればかりを考えて、何度も何度も何度も。ゲームの電源を押し続けた。
少しでも彼女たちの気持ちを理解したいがために。
「でも、分かんないんだよなぁ」
ポツリ零れる、本音。
だからこそ、私は本当の「フィアンナ」にはなれない。なることなどできないのだ。
演じてしまうことは「真実の愛」ではない。
私は彼女のように愛を叫ぶことが、怖くてできない。ただ一つのために多くを犠牲にすることなどできない。だから、だからこそ知りたいと思う。分かりたいと思う。でも。
「悪役令嬢って、難し」
やはり、分からない。
残念ながら私の人生はこれが2週目なので勘弁してもらいたい。
なにをどうしたらこうなった。
「……アンナ、フィアンナ!!」
耳元で叫ばれた新しい名前にびくりとし、反射的に声を上げる。
「ふぁ、ふぁい!」
ふぁいってなんだ。ふぁいって。今日一日でどれだけ散々な目に……。
「本当に大丈夫か? もう一度横になっていなさい、すぐ医者を――」
「いっ! いえ、遠慮、じゃない。大丈夫ですわ! 起きたばかりでふらふらとしてしまっただけですの」
こ、言葉遣いが分からない。このくらいの子どもってどのくらいまで話せた!?
焦る私をじっと見てくるお父様――アルバート・ヴィシャス公爵は私をまじまじと見てくる。
心配してくれてるのは分かるけど、眉間の皺が真っ暗谷になってるます。怖いとかそういうの通り越して大人も泣きますよお父様。
中身がOLの美幼女がいうんだから間違いない。
「……立ちくらみ、か。どこか転んで頭を打ったりはしていないのか? 先ほど額を抑えていただろう」
か、観察力すごいな。ある意味頭打った位、中身変わったのも合ってます!
けど額を抑える原因はぐいぐい眼前に来られるってことも理由の一つです!
「まだ風邪がきちんと治っていないのだろう、あまり魔力が安定していないこの時期にお前も診てもらうのは嫌だろうが、やはり魔法医を呼んできちんと治すのがいいだろう。そうすればお前も楽しみにしていた茶会にも出ることができる。どうだろうか」
えっ、お茶会とか器を吞む前に回すってことくらいしか知識としてないんですが、それは。というかそれは日本式だ。しかも流れ的に医者に診てもらってお茶会やる流れになってるしどうなってんだ。
「え、ええ。わかりました。お父様の仰るとおりにいたしますわ」
こうなったらなるようになるしかない。ごくりとつばを飲み込んで気合を入れる。
最悪、体調が悪くていつもの半分の力も出なかったぜハハハ作戦でゴリ押しする。
「そうか! ではすぐにでも医者を呼ぼう、魔法医は転移の呪文が扱えるから安心するといい。もうすぐ楽になるからな」
別の意味に聞こえるのだが、その言い方はいかがなものかと思いますよ。過敏になっているのだからそういう話はNGでお願いしてもらいたいですね。
などという念が彼に通じるなら苦労はしていない。
お父様は善は急げとばかりに立ち上がり歩き出すとドアノブに手を掛けこちらへ向かって発声した。
「無理をせずに横になっていなさい。後でまた魔法医を連れて部屋へ戻って来る。何かあったらベルですぐにジェラールを呼びなさい」
「はい、分かりました」
ぱたりと閉まるドア。
水を得た魚張りに元気になったお父様に、逆に彼が心労で大変だったのではないかと思い直してきた。この世界では私のほかに兄弟がいるかは分からないが、あの様子だと私以外にいない気がする。今日にでもそれとなく尋ねてみよう。
……そういえばさっきお父様はジェラールと言っていたが。
「それって、どう考えても執事のジェラールのことだよね」
フィアンナには5つ年上の青年執事――ジェラール・シュヴァリエ。身辺警護兼あらゆることの雑事を任せる執事が付き従っており大抵のことは彼に任せるきらいがあった。それが原因でダンスパーティーの断罪ではいなかった時期や時間を訳に事細かに洗い出され、逃げ場を失ったが故に全て白状するというのが彼の大きな役どころだ。
彼は確かフィアンナの兄代わりのような存在で路頭に迷っていたころ、お母様――イレーナ・ヴィシャスが彼を執事として雇うことに決めたのよね。それで、実質乳飲み子の辺りから関わっていた。というのが限定版データブックに記載されていた。残念ながら彼はフィアンナに関わる全エンディングで断罪後、謝罪の旨を手紙に残して失踪する。
「って……そうか。ジェラールも、宰相殿も、みんなバッドエンド、なのか」
……そうだ。彼だけではない。今後の自分の身の振り方次第では周りの人の人生を大きく変わるのだ。自分だけではなくヴィシャス公爵家の解体、また、屋敷で働くジェラールを筆頭とした執事や女中たち使用人そのほかヴィシャス家に関わったものたちはあらぬ疑いをかけられるのだ。
病気にかかった木は周りに移さないように根こそぎ刈っていく。それが王家、ルカ王子のやり方だった。
もちろん。宰相殿も例外じゃない。
愛したほうが悪いのか、愛されたほうが悪いのか。
「白薔薇の花嫁」は真実の愛がテーマだった。
華々しく好きな人と結ばれる人もいれば、嫉妬にかられてその華が枯れるまで愛してほしいと叫ぶ者もいる。それらはすべて表裏一体であることに気づいてほしいと原作者は言っていた。
フィアンナ・ヴィシャスとシルヴァン・オーギュスト。
彼女たちは本当に真の愛を勝ち取ることができたのだろうか。
私はそればかりを考えて、何度も何度も何度も。ゲームの電源を押し続けた。
少しでも彼女たちの気持ちを理解したいがために。
「でも、分かんないんだよなぁ」
ポツリ零れる、本音。
だからこそ、私は本当の「フィアンナ」にはなれない。なることなどできないのだ。
演じてしまうことは「真実の愛」ではない。
私は彼女のように愛を叫ぶことが、怖くてできない。ただ一つのために多くを犠牲にすることなどできない。だから、だからこそ知りたいと思う。分かりたいと思う。でも。
「悪役令嬢って、難し」
やはり、分からない。
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