詩集「支離滅裂」

相良武有

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第一章 二十歳の詩集

⑥青い悲しみ

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 憶えているかい?

 二人が初めて逢った日のことを

 おふくろ同志が知り合いで

 お母さんに連れられて

 僕の病室に入って来たお前は

 手術後で苦悶に歪む僕の顔を見て

 挨拶も碌にせずに

 いきなり吹き出したっけな

 睨みつけてやろうと思って眼を開けたら

 大きな黒い瞳と白い歯が微笑っていた

 あの時のお前の清々しさは

 白い壁の部屋よりも遥かに清浄だった


 憶えているかい?

 二年前の誕生日のことを

 詩の好きだったお前に

 僕の細やかな自作の詩集を贈ったら

 お前はとても喜んでくれたっけな

 リルケを贈った時もあれ程には

 喜んでくれなかったのに

 早速読み出したお前の長い睫の動きを見て

 僕は堪らなくお前が愛しくなった

 そっと抱いた僕の腕の中で

 お前の小さな肩が震えていた

 あの日、初めてのベーゼと共に

 お前は一つ大人になったんだったね


 お前が逝って早や半年

 華を飾る僕の

 深い悲しみ!

 

 
 


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