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第9話 回り道
①瑠美、郵便配達人の岡田と親しくなる
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瑠美は中肉中背で均整の取れた姿態を有し、カールした黒髪と綺麗な歯並が魅惑的な二十九歳だった。
彼女は四年前の二十五歳の時に、愛し愛された同僚の津田猛と婚約したが、幸せな結婚を二ヵ月後に控えた或る早朝に、猛が突然、自動車事故で亡くなってしまった。岡山、広島、鳥取の各支店を巡回して業務監査をし、山口や島根の市場調査をするのが目的で早朝に車で出発した。名神と阪神の高速道を乗り継いで山陽自動車道に入る予定であったが、名神高速道の中央分離帯に激突して胸と頭を強打し、殆ど即死の状態でこの世を去った。ブレーキを踏んだ様子が全く無かったことから、居眠り運転ではないかと結論付けられた。
瑠美は幸せの絶頂から奈落の底へ突き落とされた。
それからというもの、毎日毎日、来る日も来る日も、心も身体も抜け殻の状態で日々を過ごした。最愛の人を突然失った喪失感と寂寥感から哀しみに打ち拉がれ、何をする気にもなれず、何をしても心は晴れなかった。瑠美はただただ哀しかった。
猛の三回忌法要も済んで一月余りが経った或る日、父親が瑠美に声を掛けた。
「いつまでも猛君の亡霊にしがみ付いていてはいけない、それでは決して猛君も喜びはしない、むしろ後ろ髪を曳かれる思いだけが彼にも残るのではないか」
三歳年上の兄、真一が東京で華やかに結婚式を挙げて一家を構えたし、交際相手の居る二歳下の妹も適齢期を迎えて結婚準備を加速させていた。瑠美は少し実家での居心地の悪さを感じ始め、彼女の心にも漸く、そろそろ自分の先行きのことを真剣に考えなければいけない、との思いが芽生え始めつつあった。
瑠美の家は、新聞の折込広告やポスティングのチラシ、企業の規定集や社員の名刺、定款や株主総会の案内書などの諸々を印刷する街の印刷屋だった。一階と二階が事務所兼仕事場で、三階と四階が家族の住居だった。兄の真一には家業を継ぐ気持ちが全く無く、大学を卒業すると同時に大手の化学会社に就職して、既に結婚して東京で暮らしている。
「今からまた会社勤めをするのもなかなか大変だろうから、どうだ、家の仕事を手伝ってみないか?」
父からそう誘われたのを機に、瑠美は家業を手伝い始めた。仕事をすれば気も紛れるだろう、心の整理をつける為にも好い機会だと思った。
彼女は両親が家業に必死で取り組んで来たのを見て育ったので、何とかその手助けをしたいという思いを以前から持っていた。
営業と納品は父親が受け持ち、瑠美は庶務や経理の事務全般を担った。
そうして、早くも二年の歳月が流れた。
毎朝十時半頃になると、郵便配達夫がやって来て、郵便物を郵便受けに入れて行く。急ぎの注文書が届くことも間々あったので、瑠美は直ぐにそれを取りに出るのが仕事の一つだった。
ブルブルブルブルブル・・・ブルブルブルブルブル・・・と一軒毎に配達して回るバイクの音が聞こえて来ると、瑠美は家の表へ取りに出た。配達夫が去った後で出ることもあったし、瑠美が先に出て受け取ることもあった。
「有難う、ご苦労様」
配達夫は慇懃に頭を下げて去って行った。
或る時、スカッと晴れた気持の良い初夏の日に、配達夫がバイクを降りて玄関の前に立った。
「書留郵便です。印鑑を戴けますか?」
彼はそれほど大柄ではなく、身長百七十センチくらいかと瑠美は判じた。濃い紺色の制服を纏い、バイクの荷台のカートには沢山の郵便物が入っているのが見えた。何処と言って特徴の無い男だったが笑顔が独特だった。白い八重歯が悪戯な子供を思わせる、憎めない爽やかな笑顔だった。歳の頃は四十歳くらいか?
彼は、瑠美に印鑑を返し書留を手渡してから、会社宛ての何通かの手紙を渡しつつ、その憎めない笑顔を向けて、言った。
「ご機嫌如何ですか、お嬢さん?」
瑠美は一瞬驚いて相手を凝視し、胸の中で呟いた。
三十女を掴まえて、お嬢さんだなんて、一体どういう心算なんだ?そもそもこの男は何者なんだ?
瑠美は氷のような冷たい無表情な顔で彼を見返した。
どう見たって真っ当な郵便配達夫じゃないな、正真正銘の馬鹿じゃないの?この街中で見も知らぬ人間に馴れ馴れしく笑い掛けたら、それはキ印に決まっているわ!
それから、彼は英語の歌を口遊みながらバイクに跨って遠ざかって行った。
ところが、明くる日も又、彼は瑠美が出て来るのを待って居て、同じように振舞った。瑠美も又、昨日と同じように、氷のように冷たい無表情な顔で見返した。すると、彼はまたあの笑顔を見せて、英語の歌を唄いながら次のブロックへ向かって行った。
三日目になると、彼は瑠美のことを名前で呼び始めた。瑠美宛の手紙を見て名前を覚えたようであった。
それが、二週間を過ぎる頃には、瑠美は郵便配達夫を待つようになっていた。
朝起きて、仕事場に出ると、もう窓の外にちらちらと眼をやり始め、ブルブルブルブルブルというバイクの音に耳を澄ますようになった、あのキ印の気違い染みた笑顔が早く見えないかと思って。が、彼女は未だ彼の前で姿を作ったり、思わせ振りな仕草をするようなことは一度もしなかった。ただ、郵便物を取りに出る時には、何時の間にか、事務服を脱ぎ、鏡を見て髪に軽く手を遣ったりするようにはなっていた。
そのうちに、或る日のこと、彼は切手の貼ってない小包を瑠美に手渡した。そして、ニコッと笑い、いつもの英語の歌を唄いながら去って行った。
瑠美は早速にその小包を開けて見た。笑顔を形取った大きなボタン型のネックレスが入っていた。カードには「愉しい一日を~郵便配達夫の岡田時彦より~」と書かれていた。
なかなかやるじゃない、と瑠美は思った。が、彼女は直ぐに冷静さを取り戻した。
私はあの男につけ入る隙を与えたのかも知れない、あの男のことは何一つ知らないし、とんでもない変質者かも知れないのに・・・
それから暫くの間、瑠美は配達夫の岡田が来ても、郵便物を取りに出なかった。窓のカーテンの隙間から覗くと、彼は笑顔どころか今にも泣き出しそうな顔をして郵便物を郵便受けに入れ、ブルブルと遠ざかって行った。
その内に、瑠美は次第に彼が気の毒になって来た。考えてみれば、岡田は瑠美にスマイルボタンのネックレスを呉れただけだった。彼女は胸に呟いた。だからって彼が女誑しのプレイボーイとは限らないわ・・・
翌週の月曜日、瑠美は又、バイクの音が聞こえると家の表に出て見た。
近づいて来た岡田はむっつりした顔で郵便物を瑠美に手渡した。
瑠美が声をかけた。
「ねえ、あの笑顔は何処へ行ったの?」
「だって、あんた、俺のこと、怒っているんだろう?」
「わたしは誰のことも怒ってなんかいないわよ」
それが契機で二人はよく話すようになった。
或る時、岡田が瑠美を誘った。
「一緒に食事をしたいんだが、つきあってくれないかね。一杯奢りもしたいしね」
「平日は仕事で駄目だけど、日曜日なら良いわよ」
岡田は、ぶっきら棒にただ一言、そうか、と言っただけだった。彼はその日にでも一緒に食事をしたかったのである。四十歳にもなる男が、まるで聞き分けの無い子供のように・・・
彼女は四年前の二十五歳の時に、愛し愛された同僚の津田猛と婚約したが、幸せな結婚を二ヵ月後に控えた或る早朝に、猛が突然、自動車事故で亡くなってしまった。岡山、広島、鳥取の各支店を巡回して業務監査をし、山口や島根の市場調査をするのが目的で早朝に車で出発した。名神と阪神の高速道を乗り継いで山陽自動車道に入る予定であったが、名神高速道の中央分離帯に激突して胸と頭を強打し、殆ど即死の状態でこの世を去った。ブレーキを踏んだ様子が全く無かったことから、居眠り運転ではないかと結論付けられた。
瑠美は幸せの絶頂から奈落の底へ突き落とされた。
それからというもの、毎日毎日、来る日も来る日も、心も身体も抜け殻の状態で日々を過ごした。最愛の人を突然失った喪失感と寂寥感から哀しみに打ち拉がれ、何をする気にもなれず、何をしても心は晴れなかった。瑠美はただただ哀しかった。
猛の三回忌法要も済んで一月余りが経った或る日、父親が瑠美に声を掛けた。
「いつまでも猛君の亡霊にしがみ付いていてはいけない、それでは決して猛君も喜びはしない、むしろ後ろ髪を曳かれる思いだけが彼にも残るのではないか」
三歳年上の兄、真一が東京で華やかに結婚式を挙げて一家を構えたし、交際相手の居る二歳下の妹も適齢期を迎えて結婚準備を加速させていた。瑠美は少し実家での居心地の悪さを感じ始め、彼女の心にも漸く、そろそろ自分の先行きのことを真剣に考えなければいけない、との思いが芽生え始めつつあった。
瑠美の家は、新聞の折込広告やポスティングのチラシ、企業の規定集や社員の名刺、定款や株主総会の案内書などの諸々を印刷する街の印刷屋だった。一階と二階が事務所兼仕事場で、三階と四階が家族の住居だった。兄の真一には家業を継ぐ気持ちが全く無く、大学を卒業すると同時に大手の化学会社に就職して、既に結婚して東京で暮らしている。
「今からまた会社勤めをするのもなかなか大変だろうから、どうだ、家の仕事を手伝ってみないか?」
父からそう誘われたのを機に、瑠美は家業を手伝い始めた。仕事をすれば気も紛れるだろう、心の整理をつける為にも好い機会だと思った。
彼女は両親が家業に必死で取り組んで来たのを見て育ったので、何とかその手助けをしたいという思いを以前から持っていた。
営業と納品は父親が受け持ち、瑠美は庶務や経理の事務全般を担った。
そうして、早くも二年の歳月が流れた。
毎朝十時半頃になると、郵便配達夫がやって来て、郵便物を郵便受けに入れて行く。急ぎの注文書が届くことも間々あったので、瑠美は直ぐにそれを取りに出るのが仕事の一つだった。
ブルブルブルブルブル・・・ブルブルブルブルブル・・・と一軒毎に配達して回るバイクの音が聞こえて来ると、瑠美は家の表へ取りに出た。配達夫が去った後で出ることもあったし、瑠美が先に出て受け取ることもあった。
「有難う、ご苦労様」
配達夫は慇懃に頭を下げて去って行った。
或る時、スカッと晴れた気持の良い初夏の日に、配達夫がバイクを降りて玄関の前に立った。
「書留郵便です。印鑑を戴けますか?」
彼はそれほど大柄ではなく、身長百七十センチくらいかと瑠美は判じた。濃い紺色の制服を纏い、バイクの荷台のカートには沢山の郵便物が入っているのが見えた。何処と言って特徴の無い男だったが笑顔が独特だった。白い八重歯が悪戯な子供を思わせる、憎めない爽やかな笑顔だった。歳の頃は四十歳くらいか?
彼は、瑠美に印鑑を返し書留を手渡してから、会社宛ての何通かの手紙を渡しつつ、その憎めない笑顔を向けて、言った。
「ご機嫌如何ですか、お嬢さん?」
瑠美は一瞬驚いて相手を凝視し、胸の中で呟いた。
三十女を掴まえて、お嬢さんだなんて、一体どういう心算なんだ?そもそもこの男は何者なんだ?
瑠美は氷のような冷たい無表情な顔で彼を見返した。
どう見たって真っ当な郵便配達夫じゃないな、正真正銘の馬鹿じゃないの?この街中で見も知らぬ人間に馴れ馴れしく笑い掛けたら、それはキ印に決まっているわ!
それから、彼は英語の歌を口遊みながらバイクに跨って遠ざかって行った。
ところが、明くる日も又、彼は瑠美が出て来るのを待って居て、同じように振舞った。瑠美も又、昨日と同じように、氷のように冷たい無表情な顔で見返した。すると、彼はまたあの笑顔を見せて、英語の歌を唄いながら次のブロックへ向かって行った。
三日目になると、彼は瑠美のことを名前で呼び始めた。瑠美宛の手紙を見て名前を覚えたようであった。
それが、二週間を過ぎる頃には、瑠美は郵便配達夫を待つようになっていた。
朝起きて、仕事場に出ると、もう窓の外にちらちらと眼をやり始め、ブルブルブルブルブルというバイクの音に耳を澄ますようになった、あのキ印の気違い染みた笑顔が早く見えないかと思って。が、彼女は未だ彼の前で姿を作ったり、思わせ振りな仕草をするようなことは一度もしなかった。ただ、郵便物を取りに出る時には、何時の間にか、事務服を脱ぎ、鏡を見て髪に軽く手を遣ったりするようにはなっていた。
そのうちに、或る日のこと、彼は切手の貼ってない小包を瑠美に手渡した。そして、ニコッと笑い、いつもの英語の歌を唄いながら去って行った。
瑠美は早速にその小包を開けて見た。笑顔を形取った大きなボタン型のネックレスが入っていた。カードには「愉しい一日を~郵便配達夫の岡田時彦より~」と書かれていた。
なかなかやるじゃない、と瑠美は思った。が、彼女は直ぐに冷静さを取り戻した。
私はあの男につけ入る隙を与えたのかも知れない、あの男のことは何一つ知らないし、とんでもない変質者かも知れないのに・・・
それから暫くの間、瑠美は配達夫の岡田が来ても、郵便物を取りに出なかった。窓のカーテンの隙間から覗くと、彼は笑顔どころか今にも泣き出しそうな顔をして郵便物を郵便受けに入れ、ブルブルと遠ざかって行った。
その内に、瑠美は次第に彼が気の毒になって来た。考えてみれば、岡田は瑠美にスマイルボタンのネックレスを呉れただけだった。彼女は胸に呟いた。だからって彼が女誑しのプレイボーイとは限らないわ・・・
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「だって、あんた、俺のこと、怒っているんだろう?」
「わたしは誰のことも怒ってなんかいないわよ」
それが契機で二人はよく話すようになった。
或る時、岡田が瑠美を誘った。
「一緒に食事をしたいんだが、つきあってくれないかね。一杯奢りもしたいしね」
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