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③道連れ
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オートバイは夕方の渋滞の中を快適にすり抜けて、インターチェンジから高速道路へ入った。速度が増すと、後ろの雅子の身体が達夫にぴったりとくっ付いて来た。
「ねえ、タツ・・・」
後ろで雅子が何か大声で叫んだ。が、風と排気音で何を言っているのか、聞き取れない。
「えっ、何?」
達夫は叫び返しながら少し速度を落とした。だが、今度は物凄い爆音が後ろから迫って来て又しても何も聞こえない。バックミラーを見ると、達夫のとは比べものにならない大型のオートバイが三台、それほどスピードを出しているようには見えなかったが、次第に追い迫いて来た。
三台のオートバイは直ぐに達夫たちと並んだ。
ヘルメットと防風眼鏡で顔が完全に隠れているので、どんな連中なのか良く解らないが、達夫たちのオートバイの後になり先になりしながら頻りに大声で野卑な言葉を浴びせかけて来た。出来ることなら速度を上げて振り切ってしまいたいが、到底振り切れる相手ではない。仕方なく、達夫はむしろ速度を下げ加減にしてそのまま雁行していると、そのうち、揶揄うのに飽きたのか、相手はいきなり速度を上げ、次々と達夫のオートバイをすれすれに掠めるようにして瞬く間に遠ざかって行った。
「嫌な人たちね!」
後ろで雅子が叫んだ。
「何て言ったんだ?」
達夫が聞き取り易いように速度を下げたまま怒鳴った。
「えっ?何だ?」
後ろで雅子がまた叫んだ。
「何でもない。ほんとうに嫌な奴らだ、って言っただけ」
「気にするな。焼き餅を妬いていただけさ」
そう怒鳴り返した時、一瞬、訳の解らない不安が達夫の胸を掠めた。が、快調に響き続ける排気音のリズムが直ぐに不安を打ち消し、達夫はスロットルを一杯に挙げて、そのリズムを更に高めて行った。
長い緩やかな上り坂を過ぎて、ゆっくりと左へ曲がり込んだ辺りに、故障車の為の退避場所が在った。其処を通り過ぎる時、さっきの三台のオートバイが停まっているのが見えた。すっかり忘れていた不安が達夫の中でまた急に膨らんで来た。
「しっかり摑まって居ろよ!スピードを上げるぞ!」
達夫は後ろへ向かって怒鳴り、速度を一杯に上げた。幸い、今度は長い緩やかな下り坂が始まり、達夫のオートバイは快調にスピードを上げて薄暮の中へ突っ込んで行った。
だが、間も無く後ろの方から聞き覚えのある爆音が三台、互いに絡み合いながら聞こえ始め、瞬く間に近づいて来た。達夫のオートバイは全速に上げていたが、忽ち並ばれてしまった。そして、達夫たちのオートバイを囲むようにして、一台は横に、一台は後ろにぴったりとくっ付き、もう一台は先導するように前についた。雅子が達夫の腰に回した腕にぎゅっと力を込め、身体ごとしがみ付いて来た。
達夫はまた先程のように速度を落としてやり過ごそうとしたが、すぐ後ろについているオートバイがけたたましくホーンを鳴らして追い立てた。相手のオートバイは排気量でも重量でも軽く此方の三倍は有りそうだった。後ろにしろ横にしろ、この速度で接触したらすっ飛ぶのは此方である。左側は路肩で、速度を更に上げて前へ抜けることなど到底出来ることではなかった。四台のオートバイは暫くそのまま、小型オートバイの出せるぎりぎりの速度で、暗くなった高速道路を一塊となって走り続けた。達夫は不安と恐怖に圧し拉がれそうだった。後ろでしがみ付いている雅子の身体が錘のように重く感じられた。不安と恐怖は愈々高まって行った。
やがて前方に次の出口が見えて来た。前を走るオートバイが左折灯を点滅させ始めた。横のオートバイも左折灯を点けながら、頭を車体の半分ほども達夫のオートバイの先に出した。出口が来ると、速度を落とすことなく左へ曲がって行く先頭車に続いて、右横のオートバイも左へハンドルを切ったので、達夫のオートバイは頭を抑えられ、それに従いて左折するしかなかった。後ろからは最後の一台が、時折、けたたましくホーンを鳴らして追い上げて来るので、達夫は速度を落とすことも出来ず、危ういバランスを取りながらスリップせずに何とかカーブを曲がり抜けた。
国道へ出ても状況は変わらなかった。
十分ほど走ったところで、先頭車の合図で、達夫のオートバイはまた一本の脇道へ追いやられた。舗装された細い登り道で、坂を一気に駆け上ると、急に舗装が切れ、土がむき出しになった広い真っ暗な台地が拡がっていた。三台のオートバイは達夫たちのオートバイをその台地の奥まで引っ張って行ってエンジンを切らせ、自分たちもエンジンを止めた。
其処は海に面した高台に造成中の宅地らしかった。達夫たちが車を停めたのは、造成地が殆ど終る先端で、正面は崖が海に向かって落ち込み、左手は台地よりも一段と高い未造成の雑木林で暗く覆われた丘になっていた。
「おい、降りろ!」
先頭のオートバイから降りた背の高い男が近付いて来て言った。ヘルメットと防風眼鏡は着けた侭だった。他の二台のオートバイは少し離れた場所で、達夫たちが逃げ出せば、直ぐに逃げ道を塞げるように待ち構えていた。
「さっさと降りろ!」
男は達夫の前に立ちはだかるようにして言った。男の身体は肉体労働に従事しているか、運動選手なのか、兎に角、ごつい大きな躰だった。
達夫が降りた後、雅子が座席から降りようとして少しもたついた。
「早くしろ!」
男は低い声でそう言うと皮の手袋を填めたままの手で、雅子の肩を引っ張った。
「何するのよ!」
雅子が右手で男の手を払い除けた。彼女の手の爪が、勢いで、男の首の辺りを引っ掻いた。男は素早く手袋を脱ぐと激しく雅子の両頬を叩いた。掌が頬を叩く鋭い音が夜気に走って雅子はよろめいた。
男が達夫の方を向いた。
「さっきから、随分と調子良くやっていたな。良い気になるな!」
言葉と一緒に男の拳が達夫の頬を打ち、眼の前が一瞬赤く燃えて、達夫はよろけて膝を着いた。口の中に生暖かい血が流れ、その匂いが口中一杯に拡がった。
「女をちょっと借りるだけだ、文句を言うなよ。お前はおとなしく其処で見て居ろ!おとなしくして居りゃ何もしねえが、変な真似を仕上がったら其処の崖からオートバイ諸共海の中へ放り込むからな」
「・・・・・」
「おい、こっちに来るんだ!」
男は雅子の方に向きながら素手で彼女の腕を掴んで引っ張った。雅子は二、三歩よろめくようにして前へ進んだ。彼女が歯を食い縛って必死に堪えているのが見えた。
「さっさと、あっちへ行くんだ!」
男は造成地と丘の間に僅かに残っている草地を指差した。其処には夏草が膝の高さほどに茂っていた。
「早く行け!」
男は雅子の背中を乱暴に突いて押した。雅子はよろめき乍らのろのろと歩いた。男はヘルメットを外して放り投げ、足を外股に踏みしめながら彼女を後ろから追い立てた。
達夫と男との距離は未だ三米も離れていなかった。達夫は雅子が今、自分から無限の彼方へ遠ざかって行くような気がした。助けてとも叫ばず、歯を食い縛ったままのろのろと自分から離れて行く彼女の背中を見て達夫は瞬時に思った。
あいつは唯の行きずりではない!この一年間、好き合って今日まで二人で馴染んで来た道連れだ!
道連れと言う言葉には、二人の人間同士の存在に関わる全ての意味が込められているように達夫には思えた。その考えは一瞬のうちに達夫の脳裏を駆け巡った。達夫の視線は今、永遠に向かって離れて行こうとする雅子の背に固定した。
彼は暗闇の中で静かに、然し、素早く、すぐ前にある自分のオートバイの工具箱を開け、一番太い鉄のスパナを取り出した。次の瞬間、達夫は音を殺して闇の中を数歩走り、気配で振り向きかけた男のこめかみにそのスパナを力一杯振り下ろした。
「逃げろ!マコ!」
達夫は雅子に叫びながら、もう一度、スパナを握り直して、棒立ちになった相手の鼻柱に向かって力一杯振り下ろした。
雅子は一瞬後ろを振り返ったが、次の瞬間、眼の前の丘へ向かって弾かれたように駆け出し、灌木と草の茂った急な斜面を茂みの中へ身を隠すようにして登り始めた。
男は達夫の足元に蹲って倒れ、後ろで見張って居た二人の男がオートバイを下りて駆け寄って来た。一人は達夫を目指し、もう一人は雅子を追おうとした。
達夫は自分の方へ来る男には構わず、雅子を追う男を追って走った。そして、追い着くや否や、鉄のスパナで男の後頭部を殴打した。わぁ~っと頭に手をやって膝間付いた男の肩に更に強烈な一撃を加えて叩きのめした。それから、自分に追い縋った男の顔に振り向きざまにスパナを薙ぐように振り回した。スパナは鈍い音を立てて相手の右のこめかみに当たり、相手が耳の辺りを抑えて怯んだ隙に今度は正面から顔を打ちつけた。
「マコ、下りて来い!今なら逃げられる!」
達夫は瞬時に考えた。
三人は今、倒れている。直ぐには起きられまい。もし、一人くらい追って来ても、一台だけならどうにでもなる。国道にまで出れば、ホーンを鳴らしてでもライトを点滅してでも通り掛かる自動車に助けを求めることが出来る。逃げるのは今だ!
二人は東京へ帰るべくオートバイに跨った。
雅子は達夫の行為に運命の糸みたいなものを感じていた。
この人は今、一つ間違えば袋叩きに逢って半殺しにされるか、或は、ひょっとして生命を落とすかも知れないのに、一人で死に物狂いに闘って私が輪姦されるのを防いでくれた!
達夫も思っていた。
俺は死ぬほど怖かったが、俺の中で何かの叫び声が挙がり、その声に動かされた。今夜こいつとこういう出来事に出くわして、こんな風にやり過ごしたことを俺は一生忘れることは無いだろう!
オートバイは一路、闇の中を東京の達夫の部屋へと疾走した。
「ねえ、タツ・・・」
後ろで雅子が何か大声で叫んだ。が、風と排気音で何を言っているのか、聞き取れない。
「えっ、何?」
達夫は叫び返しながら少し速度を落とした。だが、今度は物凄い爆音が後ろから迫って来て又しても何も聞こえない。バックミラーを見ると、達夫のとは比べものにならない大型のオートバイが三台、それほどスピードを出しているようには見えなかったが、次第に追い迫いて来た。
三台のオートバイは直ぐに達夫たちと並んだ。
ヘルメットと防風眼鏡で顔が完全に隠れているので、どんな連中なのか良く解らないが、達夫たちのオートバイの後になり先になりしながら頻りに大声で野卑な言葉を浴びせかけて来た。出来ることなら速度を上げて振り切ってしまいたいが、到底振り切れる相手ではない。仕方なく、達夫はむしろ速度を下げ加減にしてそのまま雁行していると、そのうち、揶揄うのに飽きたのか、相手はいきなり速度を上げ、次々と達夫のオートバイをすれすれに掠めるようにして瞬く間に遠ざかって行った。
「嫌な人たちね!」
後ろで雅子が叫んだ。
「何て言ったんだ?」
達夫が聞き取り易いように速度を下げたまま怒鳴った。
「えっ?何だ?」
後ろで雅子がまた叫んだ。
「何でもない。ほんとうに嫌な奴らだ、って言っただけ」
「気にするな。焼き餅を妬いていただけさ」
そう怒鳴り返した時、一瞬、訳の解らない不安が達夫の胸を掠めた。が、快調に響き続ける排気音のリズムが直ぐに不安を打ち消し、達夫はスロットルを一杯に挙げて、そのリズムを更に高めて行った。
長い緩やかな上り坂を過ぎて、ゆっくりと左へ曲がり込んだ辺りに、故障車の為の退避場所が在った。其処を通り過ぎる時、さっきの三台のオートバイが停まっているのが見えた。すっかり忘れていた不安が達夫の中でまた急に膨らんで来た。
「しっかり摑まって居ろよ!スピードを上げるぞ!」
達夫は後ろへ向かって怒鳴り、速度を一杯に上げた。幸い、今度は長い緩やかな下り坂が始まり、達夫のオートバイは快調にスピードを上げて薄暮の中へ突っ込んで行った。
だが、間も無く後ろの方から聞き覚えのある爆音が三台、互いに絡み合いながら聞こえ始め、瞬く間に近づいて来た。達夫のオートバイは全速に上げていたが、忽ち並ばれてしまった。そして、達夫たちのオートバイを囲むようにして、一台は横に、一台は後ろにぴったりとくっ付き、もう一台は先導するように前についた。雅子が達夫の腰に回した腕にぎゅっと力を込め、身体ごとしがみ付いて来た。
達夫はまた先程のように速度を落としてやり過ごそうとしたが、すぐ後ろについているオートバイがけたたましくホーンを鳴らして追い立てた。相手のオートバイは排気量でも重量でも軽く此方の三倍は有りそうだった。後ろにしろ横にしろ、この速度で接触したらすっ飛ぶのは此方である。左側は路肩で、速度を更に上げて前へ抜けることなど到底出来ることではなかった。四台のオートバイは暫くそのまま、小型オートバイの出せるぎりぎりの速度で、暗くなった高速道路を一塊となって走り続けた。達夫は不安と恐怖に圧し拉がれそうだった。後ろでしがみ付いている雅子の身体が錘のように重く感じられた。不安と恐怖は愈々高まって行った。
やがて前方に次の出口が見えて来た。前を走るオートバイが左折灯を点滅させ始めた。横のオートバイも左折灯を点けながら、頭を車体の半分ほども達夫のオートバイの先に出した。出口が来ると、速度を落とすことなく左へ曲がって行く先頭車に続いて、右横のオートバイも左へハンドルを切ったので、達夫のオートバイは頭を抑えられ、それに従いて左折するしかなかった。後ろからは最後の一台が、時折、けたたましくホーンを鳴らして追い上げて来るので、達夫は速度を落とすことも出来ず、危ういバランスを取りながらスリップせずに何とかカーブを曲がり抜けた。
国道へ出ても状況は変わらなかった。
十分ほど走ったところで、先頭車の合図で、達夫のオートバイはまた一本の脇道へ追いやられた。舗装された細い登り道で、坂を一気に駆け上ると、急に舗装が切れ、土がむき出しになった広い真っ暗な台地が拡がっていた。三台のオートバイは達夫たちのオートバイをその台地の奥まで引っ張って行ってエンジンを切らせ、自分たちもエンジンを止めた。
其処は海に面した高台に造成中の宅地らしかった。達夫たちが車を停めたのは、造成地が殆ど終る先端で、正面は崖が海に向かって落ち込み、左手は台地よりも一段と高い未造成の雑木林で暗く覆われた丘になっていた。
「おい、降りろ!」
先頭のオートバイから降りた背の高い男が近付いて来て言った。ヘルメットと防風眼鏡は着けた侭だった。他の二台のオートバイは少し離れた場所で、達夫たちが逃げ出せば、直ぐに逃げ道を塞げるように待ち構えていた。
「さっさと降りろ!」
男は達夫の前に立ちはだかるようにして言った。男の身体は肉体労働に従事しているか、運動選手なのか、兎に角、ごつい大きな躰だった。
達夫が降りた後、雅子が座席から降りようとして少しもたついた。
「早くしろ!」
男は低い声でそう言うと皮の手袋を填めたままの手で、雅子の肩を引っ張った。
「何するのよ!」
雅子が右手で男の手を払い除けた。彼女の手の爪が、勢いで、男の首の辺りを引っ掻いた。男は素早く手袋を脱ぐと激しく雅子の両頬を叩いた。掌が頬を叩く鋭い音が夜気に走って雅子はよろめいた。
男が達夫の方を向いた。
「さっきから、随分と調子良くやっていたな。良い気になるな!」
言葉と一緒に男の拳が達夫の頬を打ち、眼の前が一瞬赤く燃えて、達夫はよろけて膝を着いた。口の中に生暖かい血が流れ、その匂いが口中一杯に拡がった。
「女をちょっと借りるだけだ、文句を言うなよ。お前はおとなしく其処で見て居ろ!おとなしくして居りゃ何もしねえが、変な真似を仕上がったら其処の崖からオートバイ諸共海の中へ放り込むからな」
「・・・・・」
「おい、こっちに来るんだ!」
男は雅子の方に向きながら素手で彼女の腕を掴んで引っ張った。雅子は二、三歩よろめくようにして前へ進んだ。彼女が歯を食い縛って必死に堪えているのが見えた。
「さっさと、あっちへ行くんだ!」
男は造成地と丘の間に僅かに残っている草地を指差した。其処には夏草が膝の高さほどに茂っていた。
「早く行け!」
男は雅子の背中を乱暴に突いて押した。雅子はよろめき乍らのろのろと歩いた。男はヘルメットを外して放り投げ、足を外股に踏みしめながら彼女を後ろから追い立てた。
達夫と男との距離は未だ三米も離れていなかった。達夫は雅子が今、自分から無限の彼方へ遠ざかって行くような気がした。助けてとも叫ばず、歯を食い縛ったままのろのろと自分から離れて行く彼女の背中を見て達夫は瞬時に思った。
あいつは唯の行きずりではない!この一年間、好き合って今日まで二人で馴染んで来た道連れだ!
道連れと言う言葉には、二人の人間同士の存在に関わる全ての意味が込められているように達夫には思えた。その考えは一瞬のうちに達夫の脳裏を駆け巡った。達夫の視線は今、永遠に向かって離れて行こうとする雅子の背に固定した。
彼は暗闇の中で静かに、然し、素早く、すぐ前にある自分のオートバイの工具箱を開け、一番太い鉄のスパナを取り出した。次の瞬間、達夫は音を殺して闇の中を数歩走り、気配で振り向きかけた男のこめかみにそのスパナを力一杯振り下ろした。
「逃げろ!マコ!」
達夫は雅子に叫びながら、もう一度、スパナを握り直して、棒立ちになった相手の鼻柱に向かって力一杯振り下ろした。
雅子は一瞬後ろを振り返ったが、次の瞬間、眼の前の丘へ向かって弾かれたように駆け出し、灌木と草の茂った急な斜面を茂みの中へ身を隠すようにして登り始めた。
男は達夫の足元に蹲って倒れ、後ろで見張って居た二人の男がオートバイを下りて駆け寄って来た。一人は達夫を目指し、もう一人は雅子を追おうとした。
達夫は自分の方へ来る男には構わず、雅子を追う男を追って走った。そして、追い着くや否や、鉄のスパナで男の後頭部を殴打した。わぁ~っと頭に手をやって膝間付いた男の肩に更に強烈な一撃を加えて叩きのめした。それから、自分に追い縋った男の顔に振り向きざまにスパナを薙ぐように振り回した。スパナは鈍い音を立てて相手の右のこめかみに当たり、相手が耳の辺りを抑えて怯んだ隙に今度は正面から顔を打ちつけた。
「マコ、下りて来い!今なら逃げられる!」
達夫は瞬時に考えた。
三人は今、倒れている。直ぐには起きられまい。もし、一人くらい追って来ても、一台だけならどうにでもなる。国道にまで出れば、ホーンを鳴らしてでもライトを点滅してでも通り掛かる自動車に助けを求めることが出来る。逃げるのは今だ!
二人は東京へ帰るべくオートバイに跨った。
雅子は達夫の行為に運命の糸みたいなものを感じていた。
この人は今、一つ間違えば袋叩きに逢って半殺しにされるか、或は、ひょっとして生命を落とすかも知れないのに、一人で死に物狂いに闘って私が輪姦されるのを防いでくれた!
達夫も思っていた。
俺は死ぬほど怖かったが、俺の中で何かの叫び声が挙がり、その声に動かされた。今夜こいつとこういう出来事に出くわして、こんな風にやり過ごしたことを俺は一生忘れることは無いだろう!
オートバイは一路、闇の中を東京の達夫の部屋へと疾走した。
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