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第四話 思わぬ躓き
④凛乃、車の中で水谷と出来てしまう
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烏丸御池の西南の角で、凜乃は人待ち顔で立っていた。其処は以前、水谷と待ち合わせた喫茶店「スターダスト」の前だった。
暫くして、一台の小型車がすう~っと近づいて彼女の前に停まった。車は埃だらけだった。水谷が運転席から顔を出した。
「奥さん、はい、どうぞ」
そう言って、助手席のドアを開けた。
凜乃は硬い表情で頷くと直ぐに車に乗り込み、彼女が座ると同時に水谷は車を発進させた。
「待ちましたか?」
「いえ、特には・・・社から車でいらしたんですか?」
「ええ」
「水谷さんの車ですか?」
「そうです、僕と同じです」
「えっ?」
「スクラップ寸前のオンボロ車です」
「・・・あのぉ、ちょっと訊いても良いかしら?」
「何を?」
「水谷さん、奥さんは?」
「女房は可哀そうな奴なんです」
「・・・どういう意味ですか?」
「病院に居るんです」
「えっ?」
「神経をやられましてね」
「まあ・・・」
「神経の細い一途な女なんです。子供が出来ない躰だと解ってからいけなくなったんです。僕の在りもしない浮気の幻惑に怯えたりして、とうとう自殺の真似事をして、目が離せなくなったんです」
「ちっとも存じ上げなくて・・・」
「あなたにこんなプライベートな話をしてしまうなんて・・・だらしのないことですね」
「どうしてです?」
「他人の不幸なんて、聞いても詰まらない話でしょうから・・・」
「でも、私たちは、少なくとも、真っ赤な他人という訳ではないでしょう」
言ってしまってから、凜乃は狼狽えて言い直した。
「あの、少なくとも、お友達ですわ、わたし達・・・」
「未だ少し、時間が早いようですね」
「何が?」
「インタビューの約束の時間ですよ。ちょっと東山の方へ行ってみましょうか?」
水谷の運転する小型車は市街を抜けて紅葉する山間を直走った。
深い山間へ入ったところで彼は車を停めた。辺りには車も人影も無かった。
「随分遠くへ来てしまった・・・」
「・・・・・」
水谷は煙草を取り出したが、思い直したようにまた直ぐに胸ポケットへ仕舞い込んだ。
「母が、お茶を習え、と言いますの」
「お茶?何で?また」
「女も何か一つだけでも身に着けておいた方が良い、と言うんです」
「欲張りですねぇ、あなたは」
「女の一生には色々と思いがけないことが起こるでしょう、他人に言えない辛さや切なさなど・・・そんな時、お茶に救われたと母が言っていました」
水谷がいきなり凜乃を抱擁して唇を重ねた。
彼女は一瞬、抗って水谷を押し返そうとしたが、全身の力が抜けてしまって、彼に強く抱き竦められて夢中で水谷の首に腕を廻した。
漸く二人が顔を離した時、凜乃の頬を涙が伝い落ちた。
「悪かった・・・」
そう言って、水谷は凜乃の涙を吸い取った。
「好きだったんだ、初めて逢った時から。いつかこんな日が来ることを予感していたんだ、僕は」
「あたしも・・・」
凜乃は渇いた声で言って、水谷の胸に顔を埋めた。
突然、水谷が凜乃の躰をシートの上に押し倒し、彼女の上着を剥ぎ取った。凜乃は一瞬、眉を険しく寄せ、息を詰めて彼を凝視した。
水谷は無言でスリップの肩紐を引き千切り、凜乃の肩が剥き出しになった。
彼女は必死の力で起き上がろうとした、が、水谷は凜乃の乳房の谷間に顔を押し付けるようにして彼女を倒した。狭いシートの上で凜乃は子猫のように身体を縮め、水谷の手が彼女のスカートのファスナーを引き下げた時、何かを叫ぼうとしたが声にならなかった。
水谷が彼女のスカートを一気に引き下ろして圧し掛かって行った。
それから、二人は逢瀬を重ねるようになった。
午後四時ごろ、夫の昭夫が突然、右の頬を抑えて帰って来た。
「あら、あなた・・・」
「歯が痛くなって、な・・・医者に行って、其のまま会社を早退して来たんだ」
そう言いながら、うっ、と唸ってまた頬を抑えた。
「酷く痛むの?」
「うっ・・・」
「休んだらどう?」
言いながら二人は寝室へ入って行った。
昭夫が直ぐにベッドに横になり、凜乃は昭夫の脱ぎ捨てた上着をハンガーに架け、靴下を脱がせ、掛布団を整えて、甲斐甲斐しく動いた。
「あの歯医者、抜かなくても良いのに抜きやがったんだよ」
「あまり喋らない方が良いんじゃない?お水を持って来るわ」
出て行こうとした凜乃に昭夫が追い被せるように言った。
「おい、凜乃。何だか急に大人っぽくなったな。凄く優しくて色っぽくなって来たよ」
「私は変わって無いわよ」
凜乃は酷く狼狽えながらも、辛うじて平静に答えた。
暫くして、一台の小型車がすう~っと近づいて彼女の前に停まった。車は埃だらけだった。水谷が運転席から顔を出した。
「奥さん、はい、どうぞ」
そう言って、助手席のドアを開けた。
凜乃は硬い表情で頷くと直ぐに車に乗り込み、彼女が座ると同時に水谷は車を発進させた。
「待ちましたか?」
「いえ、特には・・・社から車でいらしたんですか?」
「ええ」
「水谷さんの車ですか?」
「そうです、僕と同じです」
「えっ?」
「スクラップ寸前のオンボロ車です」
「・・・あのぉ、ちょっと訊いても良いかしら?」
「何を?」
「水谷さん、奥さんは?」
「女房は可哀そうな奴なんです」
「・・・どういう意味ですか?」
「病院に居るんです」
「えっ?」
「神経をやられましてね」
「まあ・・・」
「神経の細い一途な女なんです。子供が出来ない躰だと解ってからいけなくなったんです。僕の在りもしない浮気の幻惑に怯えたりして、とうとう自殺の真似事をして、目が離せなくなったんです」
「ちっとも存じ上げなくて・・・」
「あなたにこんなプライベートな話をしてしまうなんて・・・だらしのないことですね」
「どうしてです?」
「他人の不幸なんて、聞いても詰まらない話でしょうから・・・」
「でも、私たちは、少なくとも、真っ赤な他人という訳ではないでしょう」
言ってしまってから、凜乃は狼狽えて言い直した。
「あの、少なくとも、お友達ですわ、わたし達・・・」
「未だ少し、時間が早いようですね」
「何が?」
「インタビューの約束の時間ですよ。ちょっと東山の方へ行ってみましょうか?」
水谷の運転する小型車は市街を抜けて紅葉する山間を直走った。
深い山間へ入ったところで彼は車を停めた。辺りには車も人影も無かった。
「随分遠くへ来てしまった・・・」
「・・・・・」
水谷は煙草を取り出したが、思い直したようにまた直ぐに胸ポケットへ仕舞い込んだ。
「母が、お茶を習え、と言いますの」
「お茶?何で?また」
「女も何か一つだけでも身に着けておいた方が良い、と言うんです」
「欲張りですねぇ、あなたは」
「女の一生には色々と思いがけないことが起こるでしょう、他人に言えない辛さや切なさなど・・・そんな時、お茶に救われたと母が言っていました」
水谷がいきなり凜乃を抱擁して唇を重ねた。
彼女は一瞬、抗って水谷を押し返そうとしたが、全身の力が抜けてしまって、彼に強く抱き竦められて夢中で水谷の首に腕を廻した。
漸く二人が顔を離した時、凜乃の頬を涙が伝い落ちた。
「悪かった・・・」
そう言って、水谷は凜乃の涙を吸い取った。
「好きだったんだ、初めて逢った時から。いつかこんな日が来ることを予感していたんだ、僕は」
「あたしも・・・」
凜乃は渇いた声で言って、水谷の胸に顔を埋めた。
突然、水谷が凜乃の躰をシートの上に押し倒し、彼女の上着を剥ぎ取った。凜乃は一瞬、眉を険しく寄せ、息を詰めて彼を凝視した。
水谷は無言でスリップの肩紐を引き千切り、凜乃の肩が剥き出しになった。
彼女は必死の力で起き上がろうとした、が、水谷は凜乃の乳房の谷間に顔を押し付けるようにして彼女を倒した。狭いシートの上で凜乃は子猫のように身体を縮め、水谷の手が彼女のスカートのファスナーを引き下げた時、何かを叫ぼうとしたが声にならなかった。
水谷が彼女のスカートを一気に引き下ろして圧し掛かって行った。
それから、二人は逢瀬を重ねるようになった。
午後四時ごろ、夫の昭夫が突然、右の頬を抑えて帰って来た。
「あら、あなた・・・」
「歯が痛くなって、な・・・医者に行って、其のまま会社を早退して来たんだ」
そう言いながら、うっ、と唸ってまた頬を抑えた。
「酷く痛むの?」
「うっ・・・」
「休んだらどう?」
言いながら二人は寝室へ入って行った。
昭夫が直ぐにベッドに横になり、凜乃は昭夫の脱ぎ捨てた上着をハンガーに架け、靴下を脱がせ、掛布団を整えて、甲斐甲斐しく動いた。
「あの歯医者、抜かなくても良いのに抜きやがったんだよ」
「あまり喋らない方が良いんじゃない?お水を持って来るわ」
出て行こうとした凜乃に昭夫が追い被せるように言った。
「おい、凜乃。何だか急に大人っぽくなったな。凄く優しくて色っぽくなって来たよ」
「私は変わって無いわよ」
凜乃は酷く狼狽えながらも、辛うじて平静に答えた。
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