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第五話 恋未練
⑥慎一、他の女性と結婚する
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それが半年前辺りから慎一は亜紀を「純」に連れて来なくなった。
純子ママは慎一にそれとなく訊いてみた。
「ねえ、最近、亜紀ちゃん、一緒に来ないけど、どうかしたの?」
「うん、まあね・・・」
「仕事が忙しくなって、飲みに来る暇なんて無いのかしら?」
「うん、忙しくなってはいるだろうな」
「他にも何か有るの?」
「ああ、俺にも色々あってね・・・」
慎一がそこで口を噤んだので純子ママもそれ以上は訊ねなかった。
後で判ったことだが、慎一はその頃から今の奥さんとの結婚のことを周りや両親等からいろいろ言われていたらしかった。
純子ママはそれまでの経緯から、当然、慎一は亜紀と結婚するものと思っていたが、三カ月後に慎一から、結婚する、と打ち明けられた相手は純子ママの全然知らない女性であった。
「ママ、俺、結婚することになったよ」
「そう、それはおめでとう!亜紀ちゃんも了承したのね?」
「いや、相手は彼女じゃないんだ」
「えっ?亜紀ちゃんじゃないの?」
「うん、別の女性だよ」
「どうして、亜紀ちゃんじゃないの?」
「うん、まあ、いろいろ事情があって・・・」
「ふう~ん」
暫く沈黙が続いた。
「それで、亜紀ちゃんの方は納得したの?」
「なんとか・・・」
「大丈夫なのね?」
慎一は頷いたが、何となく歯切れが悪かった。
「でも、どうして亜紀ちゃんと一緒にならないの?あんなに一生懸命にあなたに尽くしていたのに」
一時、亜紀は漸く軌道に乗り出したスタリストの仕事を休んでまで慎一に寄り添って生きていた。それを知って居るだけに純子ママとしては釈然としなかった。
「あなたが尿管結石やメニエル病で入院した時なんか、毎日、仕事の帰りに病院へ寄って、一生懸命に看病していたんでしょう?」
「それはそうなんだけど・・・親父やおふくろが煩くてね」
「だって、あなたの奥さんでしょう、あなたが、この娘と結婚する、と言ってしまえば良い訳でしょう」
「毎日お袋に口説かれて泣かれると、面倒臭くなって来ちゃってねぇ」
「でも、お母さんの為に奥さんを貰う訳じゃないでしょう」
「・・・・・」
「あなた、ほんとうは亜紀ちゃんに飽きて、新しい人の方が良くなったんじゃないの?」
「違う、そうじゃないんだ」
「じゃ、亜紀ちゃんがスタイリストなんて、宛てにもならない仕事をしていて、実家も余り裕福じゃないから?」
「そんなこと関係無いよ」
「それとも、うちのようなバーに勤めたことが有るから?」
純子ママは急に亜紀が可哀相に思えて来た。
「一体、彼女の何が気に喰わないのよ?」
「別に気に喰わないことなんか無いんだ」
「解からないわねぇ、あなたって人が」
純子ママは真実、慎一の気持が解らなくなっていた。
数日後、慎一の知人である上田健二が店にやって来た時、純子ママはそっと聞いてみた。
「全く、慎ちゃんも見かけによらず、へなちょこだわね」
「男って意外と保守的なんだよ。口では威勢の良いことを言うけど、いざとなると、臆病で何も出来ないんだ」
「でも、小学生や中学生じゃあるまいし、れっきとした大学出の一流商社のサラリーマンが、なによ」
「彼女を紹介したのが会社の本部長だったんで、断り辛かったんだよ、あいつも」
「将来の出世に響くっていうわけ?」
「将来の出世どころか、下手をすると、明日からの仕事にも影響するよ、サラリーマンは」
「そんな世界なの、サラリーマンって?」
「ああ、まあね。それよりも、今度結婚する人の方がおふくろさんに似ているんだよ」
「あなた、逢ったの?」
「この前、紹介されたんだけど、ふっくらとした愛らしい感じでね」
「じゃあ、何でもお母さんに似た人なら、良いって訳?」
「そんな訳じゃないけど、あいつ、亜紀ちゃんの性格のきつい処が気になったんじゃないのかな」
「でも、其処が良い、って言っていたわよ、慎ちゃん」
「彼女としては良いけど、結婚となるとね」
「女はおとなしそうに見えても中味は解らないわよ。いっそ、亜紀ちゃんみたいにはっきりしている人の方が優しいものよ」
「でも、今度の人の方が、良い家のお嬢さんだしな」
「でも、慎ちゃんは、そんなこと関係無い、って言っていたわよ」
「そう言うけど、やっぱり考えているさ」
「男って打算的なのね」
「恋愛じゃなく、結婚となると、多少、打算も入るだろうよ」
「ああ、解った、男ってそういうもんですかねぇ」
へなちょこ男の身勝手を擁護する上田に腹を立てた純子ママは、多少気色ばんだ態で彼の前を離れた。
純子ママは慎一にそれとなく訊いてみた。
「ねえ、最近、亜紀ちゃん、一緒に来ないけど、どうかしたの?」
「うん、まあね・・・」
「仕事が忙しくなって、飲みに来る暇なんて無いのかしら?」
「うん、忙しくなってはいるだろうな」
「他にも何か有るの?」
「ああ、俺にも色々あってね・・・」
慎一がそこで口を噤んだので純子ママもそれ以上は訊ねなかった。
後で判ったことだが、慎一はその頃から今の奥さんとの結婚のことを周りや両親等からいろいろ言われていたらしかった。
純子ママはそれまでの経緯から、当然、慎一は亜紀と結婚するものと思っていたが、三カ月後に慎一から、結婚する、と打ち明けられた相手は純子ママの全然知らない女性であった。
「ママ、俺、結婚することになったよ」
「そう、それはおめでとう!亜紀ちゃんも了承したのね?」
「いや、相手は彼女じゃないんだ」
「えっ?亜紀ちゃんじゃないの?」
「うん、別の女性だよ」
「どうして、亜紀ちゃんじゃないの?」
「うん、まあ、いろいろ事情があって・・・」
「ふう~ん」
暫く沈黙が続いた。
「それで、亜紀ちゃんの方は納得したの?」
「なんとか・・・」
「大丈夫なのね?」
慎一は頷いたが、何となく歯切れが悪かった。
「でも、どうして亜紀ちゃんと一緒にならないの?あんなに一生懸命にあなたに尽くしていたのに」
一時、亜紀は漸く軌道に乗り出したスタリストの仕事を休んでまで慎一に寄り添って生きていた。それを知って居るだけに純子ママとしては釈然としなかった。
「あなたが尿管結石やメニエル病で入院した時なんか、毎日、仕事の帰りに病院へ寄って、一生懸命に看病していたんでしょう?」
「それはそうなんだけど・・・親父やおふくろが煩くてね」
「だって、あなたの奥さんでしょう、あなたが、この娘と結婚する、と言ってしまえば良い訳でしょう」
「毎日お袋に口説かれて泣かれると、面倒臭くなって来ちゃってねぇ」
「でも、お母さんの為に奥さんを貰う訳じゃないでしょう」
「・・・・・」
「あなた、ほんとうは亜紀ちゃんに飽きて、新しい人の方が良くなったんじゃないの?」
「違う、そうじゃないんだ」
「じゃ、亜紀ちゃんがスタイリストなんて、宛てにもならない仕事をしていて、実家も余り裕福じゃないから?」
「そんなこと関係無いよ」
「それとも、うちのようなバーに勤めたことが有るから?」
純子ママは急に亜紀が可哀相に思えて来た。
「一体、彼女の何が気に喰わないのよ?」
「別に気に喰わないことなんか無いんだ」
「解からないわねぇ、あなたって人が」
純子ママは真実、慎一の気持が解らなくなっていた。
数日後、慎一の知人である上田健二が店にやって来た時、純子ママはそっと聞いてみた。
「全く、慎ちゃんも見かけによらず、へなちょこだわね」
「男って意外と保守的なんだよ。口では威勢の良いことを言うけど、いざとなると、臆病で何も出来ないんだ」
「でも、小学生や中学生じゃあるまいし、れっきとした大学出の一流商社のサラリーマンが、なによ」
「彼女を紹介したのが会社の本部長だったんで、断り辛かったんだよ、あいつも」
「将来の出世に響くっていうわけ?」
「将来の出世どころか、下手をすると、明日からの仕事にも影響するよ、サラリーマンは」
「そんな世界なの、サラリーマンって?」
「ああ、まあね。それよりも、今度結婚する人の方がおふくろさんに似ているんだよ」
「あなた、逢ったの?」
「この前、紹介されたんだけど、ふっくらとした愛らしい感じでね」
「じゃあ、何でもお母さんに似た人なら、良いって訳?」
「そんな訳じゃないけど、あいつ、亜紀ちゃんの性格のきつい処が気になったんじゃないのかな」
「でも、其処が良い、って言っていたわよ、慎ちゃん」
「彼女としては良いけど、結婚となるとね」
「女はおとなしそうに見えても中味は解らないわよ。いっそ、亜紀ちゃんみたいにはっきりしている人の方が優しいものよ」
「でも、今度の人の方が、良い家のお嬢さんだしな」
「でも、慎ちゃんは、そんなこと関係無い、って言っていたわよ」
「そう言うけど、やっぱり考えているさ」
「男って打算的なのね」
「恋愛じゃなく、結婚となると、多少、打算も入るだろうよ」
「ああ、解った、男ってそういうもんですかねぇ」
へなちょこ男の身勝手を擁護する上田に腹を立てた純子ママは、多少気色ばんだ態で彼の前を離れた。
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