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第五話 恋未練
⑦亜紀、悲嘆の涙
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亜紀が純子ママのマンションへやって来たのはその数日後だった。
彼女は赤いセーターに紺のスカートと言うスタイリストらしくもないちぐはぐな服装で現れた。顔色も冴えなかった。
何も言わなくても純子ママには亜紀がやってきた理由が判った。
「慎ちゃん、結婚するんだって?」
ずばり言うと亜紀は黙って頷いた。
「酷いじゃないの、あなたと言う人が在りながら。あなた、それで、黙って引き下がって来たの?」
「・・・・・」
「文句を言ってやったの?」
「ええ・・・」
「それでどうだったの?」
「でも、どうしようもないんです」
亜紀が幾ら話し合おうとしても慎一はひたすら頭を下げるだけだと言う。
「僕は君の方が好きだけど、親が煩くてどうしようも無いんだ。済まん、諦めてくれ、頼む」
「あなた、真実に、それで良いのね?」
慎一は黙って答えなかった。
「あなたが自分で、自分の意志で、決めたことなのね?」
「・・・・・」
「せめて結婚を一年でも半年でも伸ばすことは出来ないの?ねぇ、お願い」
「今まで延ばしに延ばして来たから、もう駄目なんだ、それも」
亜紀が突然、わあ~っ、と大声を上げて泣き出した。
慎一は何をすることも出来ず、唯、おろおろと、亜紀の泣き叫ぶ姿を眺めて居た。
どうしても諦めきれない亜紀は、真実のことを知りたいと思い、慎一の気持もしっかり聞きたいと思った。
彼女は上田や慎一の友人達に訊いてみた。
「然しなあ、俺達は当事者じゃないから良く判らないよ」
そう言って逃げられてしまった。
「そうこうするうち、彼の叔父さんと言う人が三百万円のお金を持って訪ねて来たんです。これでなかったことにして諦めてくれ、って・・・」
「あなた、そのお金を受け取ったの?」
「わたしは受け取らなかったけど、叔父さんは強引にドア口にお金を置いて逃げ帰ってしまったんです」
「それで?」
「後は兎に角、もう一度本人に会おう、会って確かめよう、そう思って、朝、会社の入口で彼を待ち伏せたんです」
「そうしたら?」
「あの人、今忙しいから、って逃げちゃったんです」
「全く、最低の男ね」
「会社の上司に泣きつくとか、結婚する相手の家へ押しかけるとか、他に方法も有るんでしょうけど・・・」
「そんなことをしたところで、お互いの醜さが出るだけで、得るものは何も無いと思うわよ、きっと」
純子ママはコーヒーを煎れながら、言った。
「辛いでしょうけど、諦めるのね」
「・・・・・」
「またその内にきっと良い人が現れるわ」
「・・・・・」
「今は死ぬほど辛いだろうけど、時間が経てば忘れて、また元気に生きて行けるものよ」
純子ママはそう言って慰めるしか無かった。
「私も昔、恋に破れて死ぬほど辛かった。もうこれで自分の一生は終わった、と思った。でも、あの人に逢えて、お蔭で良い夢を見られた、そう思ったら何となく立ち直れたのよ」
純子ママは慰めたが、亜紀は目頭にハンカチを当てるだけだった。
彼女は赤いセーターに紺のスカートと言うスタイリストらしくもないちぐはぐな服装で現れた。顔色も冴えなかった。
何も言わなくても純子ママには亜紀がやってきた理由が判った。
「慎ちゃん、結婚するんだって?」
ずばり言うと亜紀は黙って頷いた。
「酷いじゃないの、あなたと言う人が在りながら。あなた、それで、黙って引き下がって来たの?」
「・・・・・」
「文句を言ってやったの?」
「ええ・・・」
「それでどうだったの?」
「でも、どうしようもないんです」
亜紀が幾ら話し合おうとしても慎一はひたすら頭を下げるだけだと言う。
「僕は君の方が好きだけど、親が煩くてどうしようも無いんだ。済まん、諦めてくれ、頼む」
「あなた、真実に、それで良いのね?」
慎一は黙って答えなかった。
「あなたが自分で、自分の意志で、決めたことなのね?」
「・・・・・」
「せめて結婚を一年でも半年でも伸ばすことは出来ないの?ねぇ、お願い」
「今まで延ばしに延ばして来たから、もう駄目なんだ、それも」
亜紀が突然、わあ~っ、と大声を上げて泣き出した。
慎一は何をすることも出来ず、唯、おろおろと、亜紀の泣き叫ぶ姿を眺めて居た。
どうしても諦めきれない亜紀は、真実のことを知りたいと思い、慎一の気持もしっかり聞きたいと思った。
彼女は上田や慎一の友人達に訊いてみた。
「然しなあ、俺達は当事者じゃないから良く判らないよ」
そう言って逃げられてしまった。
「そうこうするうち、彼の叔父さんと言う人が三百万円のお金を持って訪ねて来たんです。これでなかったことにして諦めてくれ、って・・・」
「あなた、そのお金を受け取ったの?」
「わたしは受け取らなかったけど、叔父さんは強引にドア口にお金を置いて逃げ帰ってしまったんです」
「それで?」
「後は兎に角、もう一度本人に会おう、会って確かめよう、そう思って、朝、会社の入口で彼を待ち伏せたんです」
「そうしたら?」
「あの人、今忙しいから、って逃げちゃったんです」
「全く、最低の男ね」
「会社の上司に泣きつくとか、結婚する相手の家へ押しかけるとか、他に方法も有るんでしょうけど・・・」
「そんなことをしたところで、お互いの醜さが出るだけで、得るものは何も無いと思うわよ、きっと」
純子ママはコーヒーを煎れながら、言った。
「辛いでしょうけど、諦めるのね」
「・・・・・」
「またその内にきっと良い人が現れるわ」
「・・・・・」
「今は死ぬほど辛いだろうけど、時間が経てば忘れて、また元気に生きて行けるものよ」
純子ママはそう言って慰めるしか無かった。
「私も昔、恋に破れて死ぬほど辛かった。もうこれで自分の一生は終わった、と思った。でも、あの人に逢えて、お蔭で良い夢を見られた、そう思ったら何となく立ち直れたのよ」
純子ママは慰めたが、亜紀は目頭にハンカチを当てるだけだった。
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