65 / 99
第五話 恋未練
⑧慎一の、亜紀への未練
しおりを挟む
「慎ちゃん、あなた、そんな騒動まで起こして奥さんと結婚したと言うのに、今になって、亜紀ちゃんが忘れられない、って言うの?」
「・・・・・」
「冗談も良い加減にしなさいよ!」
「・・・・・」
「あなた、今の奥さんが好きだから結婚したんでしょう?」
「・・・・・」
「好きだから亜紀ちゃんを袖にしたんでしょう?」
「それほど好きって訳ではなかったけど・・・」
「でも、嫌いじゃなかったのよね」
慎一は微かに頷いた。
「じゃあ、その人を愛してあげれば良いじゃない」
「そりゃあ、そうだけど・・・」
「やっぱり亜紀ちゃんのことが忘れられないって言う訳?」
慎一はまた微かに頷いた。
純子ママはため息を漏らした。
「あなたはもう結婚して奥さんが居るのよ。子供は未だだろうけど、夫なのよ。奥さんが可哀相だとは思わない?」
「・・・・・」
「そんなこと、責任ある男の言うことじゃないでしょう!」
純子ママに説教されて慎一は頭を深く垂れた。
「勝手過ぎるわよ。男らしく諦めなさい!」
「でも・・・」
慎一がそろそろと頭を上げた。
「彼女に悪いことをしたと思っているんだ。きちんと謝りたいと思っている」
「今更そんなことを言っても無駄よ。もう全ては終ったんだから」
「・・・・・」
「やめなさいよ、逢うのなんか」
純子ママは水割りを一気に飲み込んだ。無性に腹が立って来た。
「亜紀ちゃんはあなたを忘れる為に、あなたに関係あるものは全部処分して、仕事先も変わってマンションも移ったのよ。あなたに振られたショックから漸く立ち直ってまたスタイリストの仕事を始めたの。あなたが未だ亜紀ちゃんを愛しているなら、そっとして置いてあげなさい」
慎一は薄暗い照明の中でじっとグラスを見詰めていた。
「それに、あなたが逢いに行っても亜紀ちゃんは会わないと思うわ。あなたはもう他人なんだからね」
「・・・・・」
「どうしても逢うと言うのなら、ちゃんと身辺整理をしてからにしなさい」
「身辺整理?」
「そう。今の奥さんと別れて、独り身になって。でも、別れるほどの勇気も無いんでしょう?あなた」
「・・・・・」
慎一はまたグラスに眼を落した。
「女は一度恨んだら、一生忘れないの。そんなに甘くは無いのよ、女は!」
「・・・・・」
「こんなことなら初めから亜紀ちゃんとすっきり結婚すれば良かったのよ。家の為とか、親に背けないとか、上司だから断れないとか、詰まらぬことをくだくだ言って、結局、自分も亜紀ちゃんも、それに奥さんをも不幸にしているのよ、あなたは!」
純子ママは、男はどうしてこうも母親とか家とか会社とかに執着するのだろうか、と慎一の弱さに益々腹が立って来た。
「さあ、もう良いでしょう、帰って頂戴、店を閉めるから」
慎一は肩を落とし頸うな垂れて、すごすごと帰って行った。
「・・・・・」
「冗談も良い加減にしなさいよ!」
「・・・・・」
「あなた、今の奥さんが好きだから結婚したんでしょう?」
「・・・・・」
「好きだから亜紀ちゃんを袖にしたんでしょう?」
「それほど好きって訳ではなかったけど・・・」
「でも、嫌いじゃなかったのよね」
慎一は微かに頷いた。
「じゃあ、その人を愛してあげれば良いじゃない」
「そりゃあ、そうだけど・・・」
「やっぱり亜紀ちゃんのことが忘れられないって言う訳?」
慎一はまた微かに頷いた。
純子ママはため息を漏らした。
「あなたはもう結婚して奥さんが居るのよ。子供は未だだろうけど、夫なのよ。奥さんが可哀相だとは思わない?」
「・・・・・」
「そんなこと、責任ある男の言うことじゃないでしょう!」
純子ママに説教されて慎一は頭を深く垂れた。
「勝手過ぎるわよ。男らしく諦めなさい!」
「でも・・・」
慎一がそろそろと頭を上げた。
「彼女に悪いことをしたと思っているんだ。きちんと謝りたいと思っている」
「今更そんなことを言っても無駄よ。もう全ては終ったんだから」
「・・・・・」
「やめなさいよ、逢うのなんか」
純子ママは水割りを一気に飲み込んだ。無性に腹が立って来た。
「亜紀ちゃんはあなたを忘れる為に、あなたに関係あるものは全部処分して、仕事先も変わってマンションも移ったのよ。あなたに振られたショックから漸く立ち直ってまたスタイリストの仕事を始めたの。あなたが未だ亜紀ちゃんを愛しているなら、そっとして置いてあげなさい」
慎一は薄暗い照明の中でじっとグラスを見詰めていた。
「それに、あなたが逢いに行っても亜紀ちゃんは会わないと思うわ。あなたはもう他人なんだからね」
「・・・・・」
「どうしても逢うと言うのなら、ちゃんと身辺整理をしてからにしなさい」
「身辺整理?」
「そう。今の奥さんと別れて、独り身になって。でも、別れるほどの勇気も無いんでしょう?あなた」
「・・・・・」
慎一はまたグラスに眼を落した。
「女は一度恨んだら、一生忘れないの。そんなに甘くは無いのよ、女は!」
「・・・・・」
「こんなことなら初めから亜紀ちゃんとすっきり結婚すれば良かったのよ。家の為とか、親に背けないとか、上司だから断れないとか、詰まらぬことをくだくだ言って、結局、自分も亜紀ちゃんも、それに奥さんをも不幸にしているのよ、あなたは!」
純子ママは、男はどうしてこうも母親とか家とか会社とかに執着するのだろうか、と慎一の弱さに益々腹が立って来た。
「さあ、もう良いでしょう、帰って頂戴、店を閉めるから」
慎一は肩を落とし頸うな垂れて、すごすごと帰って行った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる