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第十五話 あぶく恋
②三人の女とは所詮は水掛け論だった
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三人の女が相手だった。藤木が幾ら言い張っても所詮は水掛け論だった。彼は押し黙って相手の出方を待った。
「彼女は独身なんです」
もう一人の友達が口を開いた。
「ご両親に知れたらただでは済まないわ。あなた一体どうなさるお心算?」
藤木は無言のまま三人を交互に見た。
最初は三人とも育ちは決して悪くないと言う印象だった。だが、冷静に観察すると、何処と無く崩れていた。こういう場数を幾度も踏んで来ている強かさがあった。
「どうなさるお心算?」
今度は住人の方が藤木を見据えて言った。
「こうなったからには、奥様と離婚なさるのが当然じゃありません?」
「否、それは出来ません」
藤木が即座に答えた。
「何故ですか?あなたは独身の彼女を弄んだんですよ」
住人の方が挑むような眼差しで言った。
「弄んだかどうかは僕と彼女の問題でしょう」
「わたし達、彼女から相談を受けたからこそ、こうしてお話ししているんです」
住人が食い下がった。
「彼女は何も知らないお嬢さんなんですよ」
何が、何処が、お嬢さんなんだ!・・・
藤木はかっとしたが、口には出さなかった。
「彼女は心からあなたを愛しているんです、結婚したいと・・・」
藤木はきっぱりと言った。
「僕の家内は心臓が悪いんです、それに娘も未だ幼いですから、離婚なんて出来ません」
住人が瑠璃に言った。
「これじゃ埒が明かないわ。あなた奥様と直接話したら?」
藤木が反撃に出た。
「どうぞ、ゆっくり話し合って下さい。その代わり、僕は彼女の叔父さんに逢います。確か、商社の社長さんでしたよね?」
瑠璃がハッと顔を上げた。表情が蒼ざめていた。
住人が訊いた。
「彼女の叔父様なんて関係ないじゃありませんか?」
「これは僕と彼女が二人で話し合うべき問題でしょう。それなのに、あなた達は何の関係も無い僕の妻まで巻き込もうとしている。だから僕も彼女の叔父さんに逢ってお詫びすると同時に、相談に乗って貰いますよ」
女たちはチラッと視線を交わした。
瑠璃は誇り高い女だった。
彼が実際に叔父に逢って実情を打ち明ければ、両親が呼ばれて叱責され、大恥をかくだろう、それは耐え難い屈辱だわ・・・それに、彼はスキャンダルが広がったところでどうと言うことは無いだろう、暫くはバッシングされるかも知れないが、本は却って売れるかも知れないわ・・・
藤木が立ち上って言った。
「責任の半分は僕にも在ります。この人と別れる時には、それ相応のことはします。またお電話下さい」
表へ出た藤木の腋の下に汗が滲み出ていた。彼がそれまで瑠璃に抱いていた幻影が一挙に崩れ落ちていた。彼女が何処にでも居る普通の女に見えて来た。
ああ、彼女ともこれで終わりだな!・・・
せり上がって来る悔恨を藤木は噛み締めた。
突然、ブレーキが軋み、傍にビートルが急停車した。藤木は運転している瑠璃を一瞥し、そのまま無視して歩き続けた。
「乗って・・・お願い」
瑠璃が訴えるような眼差しを藤木に向けた。
「ご免さない」
助手席に座った藤木に、瑠璃が眼を伏せながら言った。
「わたし、あの二人にあなたのことを話したの・・・独身かって聞かれたから、つい、そうだって言っちゃったの」
自分の恋人に妻子が居ると告げることは瑠璃の自尊心が許さなかった。
「だって、あの二人、奥さんも子供さんも居る男の恋人なのよ」
「えっ?」
藤木は驚いて瑠璃を見た。
「二人とも、援助交際なの。お妾さんなのよ、二人とも」
「然し・・・」
藤木が言った。
「何の魂胆があったんだ?」
瑠璃が伏し目がちに答えた。
「あなたが独身かどうか確かめて・・・もし、妻子が居たら、私の生活費を取ってあげるって・・・」
「そうか・・・多分そんなことだろうと思ったよ」
「これ、返すわ」
瑠璃は藤木の戸籍謄本を彼に手渡した。
「勝手にこんなことをして、ご免なさい」
瑠璃は一途な表情を藤木に向けた。
「お願い、怒らないで・・・私、あなたを愛しているの。奥さんや子供さんが居ても構わない。時々、あなたの傍に居られるだけで良いの」
藤木は瑠璃の告白を素直に信じた。
「彼女は独身なんです」
もう一人の友達が口を開いた。
「ご両親に知れたらただでは済まないわ。あなた一体どうなさるお心算?」
藤木は無言のまま三人を交互に見た。
最初は三人とも育ちは決して悪くないと言う印象だった。だが、冷静に観察すると、何処と無く崩れていた。こういう場数を幾度も踏んで来ている強かさがあった。
「どうなさるお心算?」
今度は住人の方が藤木を見据えて言った。
「こうなったからには、奥様と離婚なさるのが当然じゃありません?」
「否、それは出来ません」
藤木が即座に答えた。
「何故ですか?あなたは独身の彼女を弄んだんですよ」
住人の方が挑むような眼差しで言った。
「弄んだかどうかは僕と彼女の問題でしょう」
「わたし達、彼女から相談を受けたからこそ、こうしてお話ししているんです」
住人が食い下がった。
「彼女は何も知らないお嬢さんなんですよ」
何が、何処が、お嬢さんなんだ!・・・
藤木はかっとしたが、口には出さなかった。
「彼女は心からあなたを愛しているんです、結婚したいと・・・」
藤木はきっぱりと言った。
「僕の家内は心臓が悪いんです、それに娘も未だ幼いですから、離婚なんて出来ません」
住人が瑠璃に言った。
「これじゃ埒が明かないわ。あなた奥様と直接話したら?」
藤木が反撃に出た。
「どうぞ、ゆっくり話し合って下さい。その代わり、僕は彼女の叔父さんに逢います。確か、商社の社長さんでしたよね?」
瑠璃がハッと顔を上げた。表情が蒼ざめていた。
住人が訊いた。
「彼女の叔父様なんて関係ないじゃありませんか?」
「これは僕と彼女が二人で話し合うべき問題でしょう。それなのに、あなた達は何の関係も無い僕の妻まで巻き込もうとしている。だから僕も彼女の叔父さんに逢ってお詫びすると同時に、相談に乗って貰いますよ」
女たちはチラッと視線を交わした。
瑠璃は誇り高い女だった。
彼が実際に叔父に逢って実情を打ち明ければ、両親が呼ばれて叱責され、大恥をかくだろう、それは耐え難い屈辱だわ・・・それに、彼はスキャンダルが広がったところでどうと言うことは無いだろう、暫くはバッシングされるかも知れないが、本は却って売れるかも知れないわ・・・
藤木が立ち上って言った。
「責任の半分は僕にも在ります。この人と別れる時には、それ相応のことはします。またお電話下さい」
表へ出た藤木の腋の下に汗が滲み出ていた。彼がそれまで瑠璃に抱いていた幻影が一挙に崩れ落ちていた。彼女が何処にでも居る普通の女に見えて来た。
ああ、彼女ともこれで終わりだな!・・・
せり上がって来る悔恨を藤木は噛み締めた。
突然、ブレーキが軋み、傍にビートルが急停車した。藤木は運転している瑠璃を一瞥し、そのまま無視して歩き続けた。
「乗って・・・お願い」
瑠璃が訴えるような眼差しを藤木に向けた。
「ご免さない」
助手席に座った藤木に、瑠璃が眼を伏せながら言った。
「わたし、あの二人にあなたのことを話したの・・・独身かって聞かれたから、つい、そうだって言っちゃったの」
自分の恋人に妻子が居ると告げることは瑠璃の自尊心が許さなかった。
「だって、あの二人、奥さんも子供さんも居る男の恋人なのよ」
「えっ?」
藤木は驚いて瑠璃を見た。
「二人とも、援助交際なの。お妾さんなのよ、二人とも」
「然し・・・」
藤木が言った。
「何の魂胆があったんだ?」
瑠璃が伏し目がちに答えた。
「あなたが独身かどうか確かめて・・・もし、妻子が居たら、私の生活費を取ってあげるって・・・」
「そうか・・・多分そんなことだろうと思ったよ」
「これ、返すわ」
瑠璃は藤木の戸籍謄本を彼に手渡した。
「勝手にこんなことをして、ご免なさい」
瑠璃は一途な表情を藤木に向けた。
「お願い、怒らないで・・・私、あなたを愛しているの。奥さんや子供さんが居ても構わない。時々、あなたの傍に居られるだけで良いの」
藤木は瑠璃の告白を素直に信じた。
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