兄にいらないと言われたので勝手に幸せになります

毒島醜女

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一方、王都は ベミリオン領民side

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……農民の婦人たちの場合

「最近面白いものが市場に流れてくるわね」
「帝国との貿易が盛んになったからね。関税がかかることなく安価で質のいいものが様々に流れてくるから生活が豊かになるわぁ」
「あ、それって色んなお貴族様は面白くないんじゃない? 自分の扱ってるものの上位互換が流れてきたら商売あがったりでしょ? もしここより出来の良い野菜が流れてきたら……」
「それは大丈夫よ。あっちから流れてくるのは織物とか、魔術具とか、この土地じゃ出来ないような環境でしか生産できない植物とかだもの。ベミリオン領は無事よ」
「そうなの? よかったわぁ」
「まあ困っているのは特に王都で暮らしてるお貴族様よね。あっちの方は悲惨よ。その中でも王太子殿下側の方達ね……社交界で寄付して貰って取り組んでいた魔獣対策事業、あったでしょ?」
「あーあの大がかりなやつね。聖女様と一緒にやるって言ってたわよね」
「あれよりも大規模かつコスパよく出来る要塞の製作を帝国がしたんですって。そんなもんだからもう王太子は針の筵状態なんですって~」
「あー! 聞いた聞いた! なんでも『移動魔法を使って魔獣災害が起きた際にすぐに駆け付けられる聖殿』を計画してたけど、実際は騎士たちと聖女様が懇ろになるための連れ込み宿みたいになってたんでしょ? そりゃあカンパしてた人はキレるわぁ~」
「あんたってホントそういうえっぐいゴシップ好きねえ。でも大体そんな感じよ」
「それなら針の筵ってか自業自得じゃない。女囲うだけのために金ブンどったんだもの」
「それだけじゃ飽き足らず、負債を返すために増税しようとしてるんですって。王都にいる人だけだけれど」
「はぁ!? 自分の失敗を他人の金で取り返そうっての!? そんな人が王太子だなんて……」
「勿論反発してね、王都は大変らしいわよ。まさに紛争状態」
「はあ……田舎暮らしは何かと不便だけど、そう考えるとベミリオン領で生きれてよかったわ。いくら都会だからって、そんなバカな色ボケボンボンに振り回されるとかゴメンだもの」
「ホントよ! それに比べてうちのお坊ちゃまの品行方正なこと! 見てごらんなさいよライラ様と一緒にいる姿! 見てるこっちがキュンキュンしてしまうわ……」
「最近になってようやく手を繋げるようになったものね。はぁ~、もう! じれったいわ! 早くお二人のお子様が見たい!」
「焦らせちゃ駄目よ! それで息子にも嫌われたじゃないのアンタ!」
「なぁによう! アンタだって――」



 *



……使用人たちの場合

「見回りご苦労様。差し入れよ」
「ああ、ありがとう。にしても良かったな」
「ヒューゴお坊ちゃまの事ね。もどかしく思ってたけど、最近急に距離が縮んだわよね」
「ライラ様も心置きなくここで過ごせるようになったようで安心したな」
「……”あの人”から受けた傷も、癒えたようね」
「デイヴィッド殿か……ウチの警備隊ではその名を口にするのも嫌がっているよ」
「メイドたちだってそうよ! 『特大級の虫』って呼んでたもの。こそこそバックヤードに入ってはグチグチやかましく文句いっちゃあ仕事を邪魔してくるし……」
「『田舎者の暴れ猿』と言った時は、気が荒い者たちを抑えるのに苦労したっけ。『あんな無礼者が我らのクロエ様の伴侶になるなんて!』って言って」
「無理ないわよ。アイツの食い物飲み物に毒仕込もうとした子が何人いたことか……」
「それも無理ないさ。そんな『虫』とずっと同じ家にいて虐げられて来たとは……ライラ様はさぞご苦労されたのだろうな」
「体には暴力を振るわなかったけど、精神的に虐めていたんですって……なんて男なのかしら」
「更には学園や家からも追い出すなど……本当に悪魔としか言えん……」
「でもよかったわよ。そんな家から解放されて、クロエ様に守られながらお坊ちゃまと一緒にいれるんだもの」
「不幸中の幸い、という奴だな……う゛おおおおおお! 坊ちゃまああああ! 絶対にライラ様をお゛、幸せにし゛てくださああああい!」
「あ~もう泣くな! 暑苦しい! そんな風にうちらがいわなくたってきっとうまくやれるよ、あのお二人は」
「ずびっ……そうだな……そうなるようお守りしなければ……」
「そうそう。さ! 明るい話しましょ! 帝国で有名なテイラーがね、ライラ様のドレスを仕立てたいって言って来たんですって。なんでも高貴なお方から勧めを受けたって言って」
「おお、素敵な話だなぁ。男所帯でも、帝国のブランドは有名だから、きっと素晴らしいドレスになるだろう」
「ホントね。てか、王都は今てんてこまいだもの。仕事を任せるなら安定してる帝国に限るわよね」
「増税に反対して労働者がストライキしてるんだって? 大変だな……」
「国費使って聖女様を囲う為のもの作ってた上で借金返済のために増税だもの。そうなったって仕方ないわ。聖女様、可哀そうな過去があるそうだけど、いくらなんでも庇いきれないわね」
「今朝の新聞で見たが、王太子殿下も近々廃嫡になるのか。やっぱり仕方ないな」
「聖女様も様子がおかしいらしいわね。なんでも、悪魔憑きの可能性があるそうよ」
「悪魔憑き? 聖女様にか?」
「強力な悪魔なんでしょう。ただでさえ幼いころから心身ともに虐待を受け続けた人だもの。聖女とは言えそこをつけ込まれたのかもね」
「哀れなものだな……もしあそこに書かれているのが本当であったら、全員修道院行きか?」
「でしょうね。幸い死人は出てないから、極刑にはならないでしょ。殺したいくらい憎まれてはいるでしょうけど」
「違いないな。国王陛下もそういう事にしたいだろう。いくら溺愛してる長男とは言え、ここまで大問題になったらな」
「今度帝国の皇太子が出席されるパーティーまでには答えも決まってるでしょ。聖女様や、王太子と一緒に彼女を庇っていた騎士団も一緒にね」
「『アレ』がいた、な」
「そうね。もうすぐ美味しいお酒が飲めそうだわ」

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