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十二話 病める時も健やかなる時も
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上位貴族が通っており、伯爵家である僕は遠くから見ることしか出来なかった、王都一の大教会。
その身廊に、僕は立っている。
その隣にはクレイ。
真夏の雲のような眩いばかりの白い軍服に、色とりどりの勲章を着けた彼はまるで絵に描いたような美貌をしていた。
コツ、コツ。
荘厳な教会に靴音を響かせて、歩幅を合わせ、僕らは歩む。
すっかり体調を回復した父が、涙を流している。母も同様だ。
クレイの家族もにっこりと笑いながら、息子とその伴侶である僕の晴れ姿を見守っていてくれている。
神父の前に立ち、僕たちは誓いの言葉を述べる。
「私、クレイ・アレクシアンはオリバー・スミスを生涯の伴侶とし、病める時も健やかなる時も支え合い、寄り添うことをここに誓います」
「……私、オリバー・スミスも誓います。伴侶たるクレイ・アレクシアンとは魂で繋がり、死でさえも別たれることはないと」
僕らがそう誓い合うと、神父は満足そうに笑ってクッションの乗った指輪を渡した。
サイズの違う、金色の輪。
僕は大きい方の指輪を取り、クレイの左手の薬指に嵌める。
その次に、クレイが僕の手の同じ場所に指輪を嵌める。
ステンドグラスから漏れる光を浴びて、キラキラと輝いている。
「では、誓いのキスを」
神父の声で、僕らは向かい合う。
クレイの逞しい手が、僕の両肩に置かれる。
心の底から微笑む彼の顔が目の前にある。
僕は全てをクレイに委ね瞼を閉じた。
唇が重なった瞬間、会場から拍手が溢れた。
ふわりと、クレイの香りがする。
きっと彼にも僕の匂いが伝わっているんだろう。
未だ続く拍手の方を向く。
僕らの大事な人たちが祝福してくれる。
「幸せだ」
僕は思わず呟いた。
そんな僕の肩を、クレイは抱きしめる。
自分も同じだ、というように。
踵を返して身廊を歩いて、教会を出る。
ガタン、と重い音がしてドアが開く。
ゴーン、ゴーン。
教会の鐘の音と共に歓声の嵐が僕らを包んだ。
結婚式を聞きつけた民衆がそこにいた。
「お幸せに!」
異口同音に彼らも僕らを祝福してくれていた。
階段には両脇に、軍服を纏った若者が向かい合っていた。
彼らは一分の狂いもない完璧な動きで鞘から剣を取り出すと、それを天に掲げた。
それらは僕らの頭上で剣のアーチとなり、日の光を浴びて光を帯びていた。
「さあ、オリバー様」
「うん」
僕らは一歩、一歩、噛み締めるように階段を下る。
民衆は教会の人間に与えられた花びらや色付けられたライスの粒を飛ばし、絶えず「おめでとう」と言ったり、拍手を贈る。
さんざん悩んで決めた白亜の馬車。
その座席には、領地から贈られてきたコスモスの花が飾られていた。
皆の、僕らの幸せを願う気持ちが伝わってくる。
それが嬉しくて仕方ない。
御者が馬車のドアを開ける。
僕はクレイの手を取って、それに乗ろうとした。
「オリバアアアアァ!!!」
突然の金切り声に、辺りは沈黙に包まれる。
咄嗟に声のした方を見る。
薄茶色の擦れたワンピースに、汚れの付いた白いスカーフを頭に被った女性が、大股でこっちに走って来た。
一瞬誰か分からなかった。
……その薔薇色の目を見るまでは。
「アンジェラ……?」
かつての婚約者がこっちに近づいている事に気づいて、その名を呟く。
彼女の手に、ナイフが握られているのに気づいたのは、そのすぐ後だった。
その身廊に、僕は立っている。
その隣にはクレイ。
真夏の雲のような眩いばかりの白い軍服に、色とりどりの勲章を着けた彼はまるで絵に描いたような美貌をしていた。
コツ、コツ。
荘厳な教会に靴音を響かせて、歩幅を合わせ、僕らは歩む。
すっかり体調を回復した父が、涙を流している。母も同様だ。
クレイの家族もにっこりと笑いながら、息子とその伴侶である僕の晴れ姿を見守っていてくれている。
神父の前に立ち、僕たちは誓いの言葉を述べる。
「私、クレイ・アレクシアンはオリバー・スミスを生涯の伴侶とし、病める時も健やかなる時も支え合い、寄り添うことをここに誓います」
「……私、オリバー・スミスも誓います。伴侶たるクレイ・アレクシアンとは魂で繋がり、死でさえも別たれることはないと」
僕らがそう誓い合うと、神父は満足そうに笑ってクッションの乗った指輪を渡した。
サイズの違う、金色の輪。
僕は大きい方の指輪を取り、クレイの左手の薬指に嵌める。
その次に、クレイが僕の手の同じ場所に指輪を嵌める。
ステンドグラスから漏れる光を浴びて、キラキラと輝いている。
「では、誓いのキスを」
神父の声で、僕らは向かい合う。
クレイの逞しい手が、僕の両肩に置かれる。
心の底から微笑む彼の顔が目の前にある。
僕は全てをクレイに委ね瞼を閉じた。
唇が重なった瞬間、会場から拍手が溢れた。
ふわりと、クレイの香りがする。
きっと彼にも僕の匂いが伝わっているんだろう。
未だ続く拍手の方を向く。
僕らの大事な人たちが祝福してくれる。
「幸せだ」
僕は思わず呟いた。
そんな僕の肩を、クレイは抱きしめる。
自分も同じだ、というように。
踵を返して身廊を歩いて、教会を出る。
ガタン、と重い音がしてドアが開く。
ゴーン、ゴーン。
教会の鐘の音と共に歓声の嵐が僕らを包んだ。
結婚式を聞きつけた民衆がそこにいた。
「お幸せに!」
異口同音に彼らも僕らを祝福してくれていた。
階段には両脇に、軍服を纏った若者が向かい合っていた。
彼らは一分の狂いもない完璧な動きで鞘から剣を取り出すと、それを天に掲げた。
それらは僕らの頭上で剣のアーチとなり、日の光を浴びて光を帯びていた。
「さあ、オリバー様」
「うん」
僕らは一歩、一歩、噛み締めるように階段を下る。
民衆は教会の人間に与えられた花びらや色付けられたライスの粒を飛ばし、絶えず「おめでとう」と言ったり、拍手を贈る。
さんざん悩んで決めた白亜の馬車。
その座席には、領地から贈られてきたコスモスの花が飾られていた。
皆の、僕らの幸せを願う気持ちが伝わってくる。
それが嬉しくて仕方ない。
御者が馬車のドアを開ける。
僕はクレイの手を取って、それに乗ろうとした。
「オリバアアアアァ!!!」
突然の金切り声に、辺りは沈黙に包まれる。
咄嗟に声のした方を見る。
薄茶色の擦れたワンピースに、汚れの付いた白いスカーフを頭に被った女性が、大股でこっちに走って来た。
一瞬誰か分からなかった。
……その薔薇色の目を見るまでは。
「アンジェラ……?」
かつての婚約者がこっちに近づいている事に気づいて、その名を呟く。
彼女の手に、ナイフが握られているのに気づいたのは、そのすぐ後だった。
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