悪役令嬢の婚約者~巻き添えくらったΩの僕を救ってくれたのは幼馴染のβでした~

毒島醜女

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十三話 アンタも不幸であるべきなのよ sideアンジェラ

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欲しいものはなんだって手に入った。
お母様に似ている私を、お父様は溺愛していた。
……あのしみったれたエマとか言うお姉様よりも。
50年ぶりのΩを私の婿として連れて来たのは不満だったけれどね。
でもアイツ、面倒な仕事はしてくれるし、駒としては優秀だったわ。
お父様もそれが狙いだったみたい。

「アレは飾りだ。久方ぶりに産まれたΩで、よく働くただの駒。子供はアンジェラの好きな相手と作ればいい」

さっすがお父様だわ!
そして王都を歩んでいたとき出会ってしまった。
運命の人に!
そう、まるで物語の運命の番のようにね。
私はΩじゃないけど、きっとそんなことは関係ないわ。
でも驚いた。
まさかその運命の人が、あのお姉様を売り飛ばした、呪われた第二王子のアルヴァス様だったなんて。
お姉様とアルヴァス様は結婚したけど、そんなの関係ないわよね?
だってお姉様は私の為に働く召使なんですもの。
そう、あのお飾りのΩと一緒でね。
アルヴァス様が素直に認めてくれないから、私は”お友達”に頼んでお姉様を攫って貰ったわ。
怪我させるでもいい。犯すでもいい。
傷物にしてしまえば、アルヴァス様だってそんなお姉様を捨てて私を選ぶはずよ。
呪いは解けたんだもの。表立ってアルヴァス様と結婚できるわよね?
傷物になったお姉様は出来損ないのΩに押し付けて、二人にはこれからもサーレィ家の為に働いてもらいましょう。
……そう思っていたのに!
あのΩに婚約破棄を突きつけるはずだった夜会に、アルヴァス様がお姉様を伴ってやって来た!
まさかすぐにアルヴァス様の部隊が奪還に来るだなんて。
しかも家でお姉様にしていた仕打ちや、私が今までしていた悪事を公共の面前でバラされた……
私はお父様、お母様と共に捕らえられた。
それぞれ別の監獄に入れられ、私は南の檻という場所にいた。
砂漠にあるそこは昼は暑く、夜は寒く、絶えず乾いた風が私を打ちつけた。
私の自慢だった金色の絹のような髪は、たった一日でパサパサに乾いて枝毛まみれになってしまった。

「いや……私の、髪ぃ……いや、こんなのっ、いやぁあああ」

叫んでも涙が出ない。
それでも毎日の勤めはやらなければならない。
砂漠を緑化するといって、さまざまな所から運ばれた凄まじい臭いの肥料を運ばされる。
薄い布を巻いていても、その悪臭は鼻に届く。
私たちに与えられる水と食料は生きるのに必要な分だけ。
ここの看守は生かさず殺さずに、罪人たちを虐げているのだ。
なんて酷い人たちなの!
ただ利用するべき人間を利用しただけなのに!
公爵家としては当たり前のことでしょう!? それのなにがいけないっていうのよ!
……私は大人しく看守に従った。
諦めたわけじゃない。
ほんのわずかでも、脱獄の機会を見逃さないためだ。
そして見つけた。
王都と南の檻を定期的に渡る、肥やしを乗せた馬車。
嫌悪はあったが私はその荷台に乗り込み、空き箱の中に身を隠した。
凄まじい臭いに囲まれ、乱暴な運転に揺られ、何度も吐いた。
それでも私は耐えた。

(王都に戻れば、仲間がいるはずよ。いなくても、見つけるわ。アルヴァス様の復帰を快く思わない人間がいれば、それを利用しましょう)

そう意を決し、私を乗せた馬車は王都に着いた。
誰もいないのを確認し、箱を出る。
そこは本来なら私が視界に入れることもなかった人間が集まる貧民街であった。

(襲われないように、顔を隠さないとね)

私はスカーフを深く被り、貧民街を進む。
貧民街でもお城が見えるから、それを目当てに歩いた。
丸まる一日歩き続けてようやく上位貴族のいる地域までたどり着いた。
兵士に見つからぬよう、裏通りを慎重に進んだ。

「ん? ……なによ」

大きな鐘の音と共に、閑静な上流階級地区に相応しくない民衆の歓声が聞こえる。
こっそり角から顔を覗かせると、大教会で結婚式を行っているようだった。
大教会は著名な貴族、王族が式によく使う場所で、私も式を挙げるならここだと思っていた。

(鬱陶しいわね……あぁ……本当だったら今頃、私とアルヴァス様が式を挙げるはずだったのに)

そう思ったところで、教会のドアが開いた。

「……は?」

思わず、声が漏れた。
そこから出てきたのはオリバーだった。
50年ぶりに生まれたΩのくせに、地味で不細工な、私の婚約者という名の駒だったあのオリバー・スミスだ。
彼は私でも身に纏ったことがないような格式高い衣装を身に纏い、心の底から幸せそうに微笑んでいた。
そして、彼の隣にいる男。
Ω男性と結婚しているということは彼はきっとαなのだろう。
α然として凛として雄らしい美貌を持っている、立派な体躯の殿方だった。

(誰なの、あの人は……顔だけだったら、アルヴァス様にも並ぶ美しさだわ)

そんな彼から愛おしい目で見つめられ、寄り添っているオリバー。
彼らの睦まじさが嫌でも伝わってくる。
どれほど想い合い、幸せなのか、ということも。

「……どうしてよ」

てっきりアイツも破滅して、どこかで惨めに暮らしていると思ったのに。
なのに、私の駒だったアイツは今、幸せの絶頂にいる。

「……せ、ない……許せない……!」

私は何かあった時の為にと、護身用に持って来た作業用のナイフを握る。
なんで私がこんなに不幸なのに、アイツが何の恥もなく日の光を浴びて笑っているのよ!
不平等よ!
アイツも、オリバーだって不幸であるべきなのよ!

「オリバアアアアァ!!!」

気付けばアイツの名を叫び、私は走っていた。

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