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十六話 幸せな未来を
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朝日が頬に触れ、僕は目を開けた。
僕はクレイの腕の中にいた。
心地よい疲労感のある体を起こそうとすると、それに気づいたようでクレイも目を開ける。
緩く巻いた金髪が、それと同じ色の豊かな睫毛が、朝日を浴びてキラキラと輝いている。
「おはようございます、オリバー様」
「うん……おはよう」
それから僕らはどちらともなくキスをした。
朝食は少ししか食べられなかった。
きっと、昨晩に下から押し上げられたから、胃が縮んでいるんだろうな。
頬を赤らめてしまった僕を、クレイは優しく見つめている。
「食休みをしたら湖の方に行きませんか?」
「そうだね。行こう」
そして食事を終えて寛いだ後、僕たちはその足で湖に向かった。
山間部は冷えるので、厚手のコートを被った。
「わぁ……」
目の前の光景に僕は声を出した。
澄み切った湖に穏やかな波が輝きながら波打っている。
爽やかな風が吹き、木々が揺れる。
ピチャン。
軽やかな音を鳴らして、魚が跳ねる。
そんなささやかな自然の景色にさえ、感動してしまう。
「なんだか、世界が綺麗に見えるよ」
「そうですね。俺もそう思っていました」
僕を後ろから抱きしめながら、同じ景色を見るクレイが言う。
そうか。
彼と番になったから、世界がこんなにも綺麗に映るんだ。
僕はクレイの腕を撫でながら言う。
「これからもよろしくね。クレイ」
「勿論ですよ。オリバー様」
「様はいいよ。もう夫婦なんだから」
「はは……少しずつ、慣れていきます。オリバー」
そうして僕らは、もう一度唇を重ねた。
※
僕らだけの幸せは一年ほど続いた。
定期的な医師の健診で僕の妊娠がわかったのだ。
その時のクレイの慌てぶりときたら、可哀そうだけど今思い出しても笑ってしまいそうだ。
僅かな段差でさえ許さず、出かけるときは必ず護衛の私兵を二人はつけさせた。二人なのは僕と他の男が二人っきりになるのが嫌だった、だかららしい。
そんなことがあって、安定期にはいった。
それでもまだ僕を心配し、座椅子に座る僕の膝に甘えるクレイの頭を撫でる。
「大丈夫だよ、クレイ」
「ですが……不安なんです。なにか起きないかって……」
「ふふ。心配性なお父様だね」
僕は、お腹の中に宿る命に呟く。
過保護なαに守られ、僕は、いや僕たちはとても幸せ者だな。
この幸せが永遠に続くよう、神に祈った。
僕はクレイの腕の中にいた。
心地よい疲労感のある体を起こそうとすると、それに気づいたようでクレイも目を開ける。
緩く巻いた金髪が、それと同じ色の豊かな睫毛が、朝日を浴びてキラキラと輝いている。
「おはようございます、オリバー様」
「うん……おはよう」
それから僕らはどちらともなくキスをした。
朝食は少ししか食べられなかった。
きっと、昨晩に下から押し上げられたから、胃が縮んでいるんだろうな。
頬を赤らめてしまった僕を、クレイは優しく見つめている。
「食休みをしたら湖の方に行きませんか?」
「そうだね。行こう」
そして食事を終えて寛いだ後、僕たちはその足で湖に向かった。
山間部は冷えるので、厚手のコートを被った。
「わぁ……」
目の前の光景に僕は声を出した。
澄み切った湖に穏やかな波が輝きながら波打っている。
爽やかな風が吹き、木々が揺れる。
ピチャン。
軽やかな音を鳴らして、魚が跳ねる。
そんなささやかな自然の景色にさえ、感動してしまう。
「なんだか、世界が綺麗に見えるよ」
「そうですね。俺もそう思っていました」
僕を後ろから抱きしめながら、同じ景色を見るクレイが言う。
そうか。
彼と番になったから、世界がこんなにも綺麗に映るんだ。
僕はクレイの腕を撫でながら言う。
「これからもよろしくね。クレイ」
「勿論ですよ。オリバー様」
「様はいいよ。もう夫婦なんだから」
「はは……少しずつ、慣れていきます。オリバー」
そうして僕らは、もう一度唇を重ねた。
※
僕らだけの幸せは一年ほど続いた。
定期的な医師の健診で僕の妊娠がわかったのだ。
その時のクレイの慌てぶりときたら、可哀そうだけど今思い出しても笑ってしまいそうだ。
僅かな段差でさえ許さず、出かけるときは必ず護衛の私兵を二人はつけさせた。二人なのは僕と他の男が二人っきりになるのが嫌だった、だかららしい。
そんなことがあって、安定期にはいった。
それでもまだ僕を心配し、座椅子に座る僕の膝に甘えるクレイの頭を撫でる。
「大丈夫だよ、クレイ」
「ですが……不安なんです。なにか起きないかって……」
「ふふ。心配性なお父様だね」
僕は、お腹の中に宿る命に呟く。
過保護なαに守られ、僕は、いや僕たちはとても幸せ者だな。
この幸せが永遠に続くよう、神に祈った。
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