クズ男は転生花嫁 戻るなんて許さないし絶対離さない

毒島醜女

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え、花嫁?

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今日から俺が暮らすアパートに荷物を置いて、夕方、俺は手土産を持って村長の家に向かった。
そこで俺の歓迎会をしてくれるらしい。

律儀だな、と思いつつ向かうと俺は驚いた。
村長、つまり要さんの家はとんでもない豪邸だった。
時代劇に出てくるお代官様の家みたいな大きさの平屋の日本家屋が、白い壁にぐるーっと囲われていた。
玄関なんて前世の俺の1LDKよりもデカい。

「さっきぶりですね、亜蘭さん。さあ、どうぞこちらへ」

俺が来るのを待っていたかのように、廊下から要さんが現れた。
目を細めてにっこりと笑う姿は、アイドルっていうか、まるで人気俳優のような、格式高い美を感じさせた。
そんな彼に導かれ俺はその背を追う。

案内されたのは、都会だったら一軒家入るんじゃないかってくらい大きさの大広間。
艶やかに磨かれた机が並んでおり、要さんは自分の隣、つまり上座に俺を案内した。

「今日はあなたが来てくれた記念すべき日ですから。心行くまで楽しんでください」
「はい。よろしくお願いします」

こんな豪邸でうやうやしく持て成しを受けるとなると、俺は緊張していく。
そこで俺はお土産を持ってきたことを思い出し、要さんに手渡した。

「あの、要さん。これどうぞ。これからお世話になるので」
「ああ。ありがとうございます」

手渡した菓子折りを両手で彼は受け取ってくれた。

ほどなくして、村の人たちがやってきた。彼らは俺と、その隣にいる要さんに頭を下げて各々自分の席に座った。
そして料理が運ばれてきた。地元のものを使った色とりどりのもので、見た目通りどれも美味しかった。
そうしてどんどん時間が経っていった。外はもう真っ暗だ。
いつしか地酒という白く濁ったものを勧められるがままに飲まされ、その飲みやすい美味さについついグラスを傾けてしまう。

「美味しいでしょ? 今日の為に用意していたんですよ」
「そうなんれすか……はい、ちょてもおいひい、れす」

気付けば舌が回らなかった。
こいつ、遊んでばっかなのにこんなに酒弱いの?
そんな俺を村人たちはニコニコと見つめてくれる。ここでやらかさないようにしないとな。
だがそんな俺の思いとは裏腹に、俺の意識は闇に沈んでいった。



 ※



目を開くと、赤茶色の天井が視界に入る。
スルスルと触り心地のいい布団にくるまれ、俺は痛む頭を抱えて起き上がった。

「ぇ? 嘘」

気が付けば、俺の服が違っているという違和感に気づいた。
さっきまではカジュアルで動きやすい洋服だったのに、今は薄い浴衣のようなものを着せられていた。
そこで俺は最悪の事態を考える。
もしかして気を失ってゲロ吐いて服汚した? それでみんなで着替えさせて寝かせたとか?
そんな時に、要さんの声がした。

「起きたんですね」
「要さん! ご、ごめんなさ――」

彼の方に振り返った瞬間。
俺は更に違和感を感じる。
目の前に、格子があった。
そう、ちょうど時代劇に出る牢屋みたいな、木で出来たものが。それが俺の目の前にある。まるで俺が囚人かのように。
本能のまま、手を伸ばして触れてみる。
木材の感触が手から伝わる。
これは夢じゃない。

「ああ。一人にしてごめんなさい。今行きますから」

まるで最初からこの座敷牢が俺の居場所かのように、優しい言い聞かせながら、要さんは鍵を開けて牢の中に入ってきた。そして入るとすぐに格子の隙間から鍵を閉め、その鍵を自分の懐に仕舞った。
あれだけいい男だと思っていた彼が今は怖くて仕方ない。

「あの、俺、酔ってなにかしました? だからこんなこと……」
「いいえ。あなたはここに相応しい人間だからこそお招きしたのですよ」

意味がわからない。
つか牢が相応しいとか……歓迎しますとかいったくせに、よそ者嫌いすぎだろ。
そう思っていると、彼はあるポスターを見せた。
それは俺が都会で見た、あの勧誘ポスターだった。

「これね、特別な人間しか見えないんですよ」
「は……?」
「あなたのような『外』から来たお方にしか認識出来ぬように呪(まじな)いを掛けているんです。そしてこの村に来ていただけるようにしているのですよ。我々はそのような方たちを天女と呼び、お招きし、番って来ました」
「つがう……?」
「天女の持つ能力。それによりこの村は発展してきました。天女たちには運にも恵まれ、その恩寵を自分達の産んだ子供にも授けています。そうして我が家は繁栄してきたのです」

あまりに内容に大量のクエスチョンマークが頭に浮かんでくる。
ただ『外』と言うのが俺本体が元にいた場所ということだけがわかる。
つまり彼の言う天女というのは読者である人間の事だろう。
彼の言う能力っていうのも、その読者の知識による物語の展開を読める力、つまりは予知能力のことなんだろう。

だけど今俺が転生してる亜蘭はただの小悪党だ。
つか物語の展開も良く知らないし、第一関係ない田舎町に来ちゃったんだから出来る事なんて何もないに決まってる!

俺はそのことを素直に要さんに伝えようとした。

「要さん! お、俺、確かにこの世界の人間じゃないよ? 題名は忘れたけど、都会で女の子をひどく振って、最後は浮気相手に殺される、そんなどうしようもない小悪党なんです! だから物語の展開とか全然知らないし、村に来てもなんにも出来ませんよ? 第一に、俺男だし、天女なんかになれません! きょ、今日の事は黙っておくから、お願いします。家に帰して下さい!」
「それは問題ありません。天女は女性だけではありませんでしたから」
「へ?」
「問題なく孕ませられますのでご心配なく、天女様」

そして彼は両手を肩に置いて、俺を布団の上に押し倒した。

「私の花嫁になりに来てくださり、ありがとうございます。優しくしますね、亜蘭さん」

ニコリとぞっとするような妖艶な笑みをうかべ、そこから俺の浴衣の襟に手を入れた。
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