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出会い
しおりを挟む「失礼しまーす……」
高校に入学して、早2ヶ月。
放課後になり、仲良くなったグループの奴らがバイトや部活に行ってしまった後のこと。
どうしても暇を持て余していた俺は、どうせならとまだ入ったことのない場所へ順番に足を運ばせているところだった。
「って、誰もいないのかよ」
カラカラと音を立てて開けたのは、図書室の扉。てっきり図書委員とかそういう人がいるもんだと思っていたが、目の前に広がるのは無人の空間だけ。
つまんねぇなぁと内心で舌打ちしながら中へ進む途中、本棚と本棚の間から白い布がひらりと揺れるのが見えて足を止めた。
恐らくだが、あれはカーテンだろう。もしや他にも誰かいるのかと足音を立てないようにそちらへ近づき、隙間から顔を出す。
「__っ!」
と、その瞬間。
俺の心臓が、どくりと音を立てた。
一人の男子生徒が窓際の本棚に腰を下ろし、両目を閉じている。彼の陽の光に染められたような蜂蜜色の髪は、窓の外から吹いてくる暖かな風に揺られ、少し大きめに着こなされた制服の袖からは、彼の白く細い指が顔を覗かせている。
まるで天使のようだと、そう思った。
「……ん、」
途端、ゆっくりと瞼を上げた姿に俺の意識も現実へと慌てて帰還した。
まずいとは思ったが、時既に遅し。
しっかり絡まった、俺と彼の視線。
「……なんか用?」
「あっ、いやッ、すみません!」
「ふっ。なにそれ」
まさか話しかけられるとは思わなかったので素っ頓狂な声になってしまったが、今はそんなことよりである。
思った通り。
__いや、予想以上に彼の声が甘かった。
柔んだ表情も相まって、彼の儚げな雰囲気とよく合う声だ。今までに感じたことのない痺れのような感覚が全身を走り、俺は無意識にゴクリと喉を鳴らしていた。
「1年でしょ」
「え、なんで」
「ネクタイ。赤色だもん」
「あ、そうっすね。はい」
「ふふっ。さっきから変な子」
「っ、すみません」
「いいじゃん。面白いし」
あー、やばい。もうむりかも。
この声が好き。笑い方が好き。
話し方も、仕草も好き。全部好きだ。
これが俗にいう“一目惚れ”だと言うのなら、俺は彼に__先輩に、恋したんだろう。
同性だとか先輩だとか、後になって悩むかもしれない。それでも今俺は、彼に惹かれた。それだけでいい。それ以外、いらないだろ。
「あの、先輩」
「ん?」
「連絡先、教えてほしいです」
「……ん、いいよ。名前は?」
「佐伯和真です」
「かずまね。俺は、円居翔」
「あの、名前で呼んだりとかって」
「いいけど、随分積極的だね」
「……すみません。キモイですよね」
「ううん。後輩できたことないから、新鮮なだけ。よろしくね、和真」
「よろしくお願いしますッ。翔先輩」
これが俺と先輩の出会いだった。
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