転生したらハムハムすることに夢中です。

さこ助

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彼との出会い、痴女への一歩

人は見た目では判断してはいけません。

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「え!?ラニエルって、っあ、ラニエル様って7歳だったのですか!!」

「ふふっラティファナ嬢、様はつけなくても構いませんよ」



(全く見えない!)



 呼び名に"様"と付けたのは、今し方実は年上だったと知ったからです。
 そしてジファーソンという姓は、ナント!侯爵様のお家の家名ときたもんだ!
 そりゃー呼び捨てになんてできるわけもない。



(7歳というなら、こんなに小さくても小さな紳士になっている事も頷けるわ)



「ラティファナ嬢。今少し僕に対して失礼な事を思いませんでした?」

「いえ、歳の割に小さいって思っただけですわ」

「それを失礼と呼ぶのですよ」

「でもとても可愛らしくて、ラニエル様にはお似合いかと思うのですが」

「僕は至って平均的な身長なんですよ?」



 サラサラと会話をしてるように聞こえますが、実は口に出してしまった「歳の割に小さい」発言は、出した瞬間にやっちまったーー!と心の中で叫び続け、この回避をどうするか考えてる最中なのです。
 実際は墓穴を掘り、さらに失礼発言を重ねるという残念な結果になっております。



(うぅ帰りたい…)



「こちらも失礼を承知で口にするのですが、実際はラティファナ嬢が歳の割に身長が高いのですよ」

「え?(まじか)」

「同年代のご令嬢とはあまり交流がないのですか?」

「お恥ずかしながら…」



 実際にラティファナの記憶では仲良くしていた令嬢の影はない。
 5歳の誕生日の時に軽くガーデンパーティーをしようとしたのだけれど。わたしのマナーの端々に不安を覚えた両親が、お披露目を先延ばしにしたのだ。



(そっかぁわたしの身長って高かったんだー知らなかった)



 でも、心当たりがないわけでもない。
 3ヶ月に一回はドレスや普段着なども新調しているし、靴だって半年に一回となかなかの頻度で変えていた。
 伯爵とは言えそんなに贅沢に生活できているわけではないので、少しばかり申し訳なさを覚えていたものだ。

 お茶会デビューも果たしていないのに、ドレスを毎回新調する意味は今でもわからないけれども。


「そういえば今日はおまじないを、という事でしたが。なんだかラニエル様は落ち込んでるご様子が無いようにお見受けしますが」

「ふふっそうですね。この間の落ち込みようから見たら、今の僕は元気に見えてしまうかもしれませんね」



(この間はどのくらいだったのーー!)



 覚えていないわたしとしては、彼の変化を掴んだわけではなくて。ただ単にわからないだけなのです。
  すみません。そんな気持ちが一番感情として優ったのか、わたしは静かにうなだれてしまった。


「ラニエル様にもきっと色々あるのですね」

「そうですね、小さな僕でも色んなことがあるんですよ」

「まぁ、意地悪ですわね」

「あはははっ。そうだね、少し意地悪だったかな」


 本当に落ち込んでいるのかな。単純なわたしにはやっぱり、彼が何かに気圧されてる様には見えない。
 侯爵様のご嫡男様と言えば、きっとわたしごときにはわからない悩みもあるんだろうな。



ーーふっ


「きゃっ!」



(耳に!耳に息吹き込まれた!)



 突然の羞恥に一気に赤面するのがわかる。
 小さな紳士は今日はなんだか悪戯を好む様だ。


「ラティファナ嬢とこうして話しているだけで、なんだか元気をもらえますよ。貴女のくるくると変わる可愛らしいお顔も見られますしね」

「ーーーーっ」



(小さな紳士がなんだかキザだー!)



「2歳の差とはすごく大きいのですね」

「どうしてですか?」

「だってわたしはラニエル様のお言葉に、敵う言葉が見つかりませんもの」


 せっかく精神年齢的には大人ーーもとい、おばちゃんなのに。口では7歳に負けてしまうとわ。貴族社会の社交術、おそるべし。


「でも僕はそんなラティファナ嬢がとても好ましく見えます」

「…え?それはどういう…」

「今日もこのあいだの様に"おまじない"をお願いしてもよろしいですか?」

「…はい」


 彼からのわたしの疑問詞の答えは無かった。うまく乗せられただけなのか、または5歳児(アラフォー)をたぶらかしにきているのか。彼の瞳からは読み取ることができない。
 あえて読み取ることができたものがあるとするならば、それはーー

 この間からわたしを悩ませている「煩悩」わたしにすがる様な眼差しで、わたしと同じあの瞳をしていると思う。

 ここは先日と同じ綺麗な光の中。一本一本が光を調節するのにちょうど良い位置にある木の下。木漏れ日も、麗らかな風も、どれも心地よくて。

 彼の瞳は吸い込む様に、わたしの視線を掴んではなさない。
 お互いが小さく息を吸い、そして吐く。鳥のさえずりが木々の隙間を縫っていくだけの、小さな静寂。


「ラティファナ嬢、どうか僕のことをエルと呼んで」


 少し潤む様な瞳はなにかを訴える様に、縋る様に、ただわたしの瞳を真っ直ぐに見つめていた。


「はい、エル。ではわたしのことはラティとお呼びください」

「ラティ…。貴女をこの呼び名で呼ぶことの栄誉を与えていただき感謝いたします」

「そんな…」

「ラティ、目を閉じてーー」



(なに?目を?このタイミングで、閉じてもいいの?)



 アラフォーとしては過去にいくつか経験した事のある甘いひと時。そんな雰囲気の中にやる事と言ったら、一つだと思う。



(キス、されるの?)



 体の中心はドキドキと早鐘を打ち、体全体の血がぐるぐる回っているのがわかる。高揚した気分とは逆に、身体は従順に彼の言葉を体現した。

 そして彼はそっとわたしの肩に手を置いて、静かに、ゆっくりとわたしに近づいてきた。





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