絆のトレーニングノート:始まりの春、強さの種

たまに何かを書く人

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第6章 挑戦と誓いの運動会

第三節 誇りを背に、駆ける日

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運動会の前日。
夕暮れのトレーニングルームには、四人の声と熱気が満ちていた。

「仕上げは体幹と脚力メインね!」

「リン、反射とバランスも重点的にやろう。明日は上だから、どんな動きにも耐えられるように」

「了解! 私はしなやかで速い動きを見せるよ!」

「じゃあ――“持ち上げテスト”いくよ!」

さちが足元からどっしりと踏ん張り、左右のハルとユキが腕でリンを支える。三人の連携で、リンの体が空に向かってまっすぐ持ち上がった。

「せーのっ!」

空中でバランスを取りながら、リンは両手を広げた。

「パーフェクト。これは勝てるね!」

練習を重ねるたびに、笑顔と自信が増していった。



そして、運動会当日。

初秋の澄んだ空。爽やかな風が吹き抜け、校庭には紅白の旗がはためく。
騎馬戦を前に、6年2組のメンバーが入場門で待機していると――

「よーし、6年2組! 気合入ってるかー!」

担任の先生がやってきた。

「おっ、あれがウワサの……チーム“マッスル女子”!」

「先生ーっ!!」

思わずハルが叫ぶと、周囲に笑いが起こる。

「ちがいます、“チーム・トレノ”ですから!」

「ハルちゃん、顔まっ赤~!」

ユキが肩をすくめ、さちも笑いながら続けた。

「でも、あながち間違ってないかもね。筋肉、すごいし!」

その言葉に、クラス全体が和やかな雰囲気に包まれる。

「じゃあ、いくよ! 円陣だ!」

「せーのっ!」

「トレノも、2組も、全力で勝つぞーーっ!!」

「おおーーーっ!!」

拳が空に突き上がった。



騎馬戦、開始。

四隅から進む各クラスの騎馬の中で、ひときわ異彩を放つ一騎――
それが、チーム・トレノ。

上に乗るのはリン。
左右から体を支えるのはハルとユキ。
最下段で全体を安定させ、しっかりと地を踏みしめて支えるのがさち。

4人の姿は、まるで一体の“動く要塞”だった。

実況が響く。

「おっと、2組の騎馬が前進! トレノの持ち味は柔軟性と体幹。どう動くか!」

リンが身体を反らせ、攻撃を華麗に回避。
反らせた体勢のまま、下から相手の鉢巻きを奪う。

「一本取ったーっ!!」

会場が沸き上がる。

下で支える三人は、汗をにじませながらも完璧なバランスを崩さない。

「右から来るよ、ユキ!」

「OK! ハル、左斜め前、あたし支えるから踏ん張って!」

「さち、沈むよ、大丈夫?」

「もっといけるよ!」

4人の声が、まるで一つの生き物のように響き合う。

誰よりも低く、速く、安定した騎馬が、次々と敵の鉢巻きを奪っていく。

敵が突進する中――
リンが小さく体をひねり、反対の手で一閃。

「また取った! チーム・トレノ、これで3本目!!」

観客席がどよめく。

「残り30秒! もう一本いけるか!?」

「トレノ! トレノ! トレノー!!」

自然発生したコールがクラス中に広がった。

最後の一騎に向かって突進。
リンが跳ね上がるように腕を伸ばし、鉢巻きをつかむ。

「決まったーーーっ!!」

笛が鳴る。騎馬が止まり、リンが静かに降り立った。

さちの肩に手を置き、4人は呼吸を整えながら顔を見合わせる。

「やったね……!」

「完璧だった……!」

「ほんとに勝てた……!」

「トレノ、最強!」

勝利の喜びと同時に――
彼女たちの胸に広がったのは、「自分たちの力でやりきった」という確かな達成感だった。

4人は、力強く手を取り合った。

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