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肌ぴちぴち 1
「――――ラン様―――い。―――――スーラン様、そろそろ起きてください。湯を浴びる時間が無くなりますよ」
深い意識の中から少し浮き上がったスーランは、現状を把握するべく唸りながらごろりと寝返りをうつ。
「スーラン様」
「…う、ん。……えー…っと、…ど、ドリス、…しゃま?」
「ふふ。様付けされたら奥様と返さねばなりません」
「それは…勘弁してー…」
「さあ、そろそろ起きないと本当に湯に入れなくなりますよ」
ようやく意識が浮上したスーランは目を擦りごろごろと寝返りを打ちながらゆっくりと身体を起こした。
「おはようございます。これはもう半刻ほど早く起こさねばと学びました」
「…うん。相当寝起きが、よろしくないみたいで…―――ぐぅ」
「スーラン様、温かいタオルをどうぞ」
またもや夢の中に戻りそうになっていたスーランにドリスがほかほかのタオルを手の上に乗せてくれた。それを緩慢な動きで顔に当て「あ゛ー…」と女性らしさ皆無の声を絞り出す。
「ふふ。さあ、お湯が冷めてしまいますので、浴室に参りましょう。時間もぎりぎりですよ」
スーランは左右に揺れながら歩き「下着まだ湿ってるぅ…」とぼやきながらのそのそと浴室に向かった。
湯に入ってさっぱりしたスーランではあるが、湯上がりの程よい疲労がまたもや眠気を誘う。食堂で食べる時間は既になく、フリアが朝食を運んできてくれた。
「スーラン様、スープだけでも…本当に眠ることが好きなのですねぇ」
「うん。頭使っても使わなくても眠いし性交してもしなくても眠い。どっちにしろ眠い」
フリアがぽかんとしながら頬を染めているが、ドリスは準備の動きを止めることはない。たった一日でスーラン発言に慣れたドリスは相当優秀である。
どちらにしろ変えるつもりもないスーランは慣れてくれと思いながら背中を丸めスープだけをいただき「美味っ」と声を上げる様子に、ドリスは微笑みながらも首を傾げた。
「スーラン様は姿勢はともかくカトラリーや所作はとても洗練されておりますね」
「そうなのかなー度々国王陛下に呼び出されて食事会と称して付き合わされたから見様見真似で覚えたのかもしれない」
カトラリーやスープを啜る音を一切立てないのは見事だが、まるで老婆のように背中を丸めて食事をするスーランにドリスはなるほどと思いながら時間短縮の為に髪を纏め始めた。
「時短最強。何でも好きにしてー」
「ふふ。次回からもう少し早く起こさせていただきます」
「好きにしてー」
仕事の邪魔にはならない髪型を頼んでいたスーランの長い髪はサイドを編み込み、後ろで一つに結んだ三つ編みに繋げてくるくると纏め、ピンで留めてくれた。
「綺麗。こんな風に纏まるんだね、ありがとドリス。フリアも食事運んでくれてありがと。長過ぎる髪はそのうちで良いからこれバッサリ切りたいな」
「それは旦那様の許しを得てから仰ってくださいな」
「バウデンさんの許可が必要なんだ」
「そうですね、一応お聞きした方がよろしいかと」
「わかった」
限定とはいえバウデンの伴侶としての期間は必要なのかと思い頷いた。その後化粧をするしないで一悶着あり、最低限の化粧を施すことになった。寝起きのスーランとは言え中々にドリスも舌が回るようだ。
準備が出来た頃、扉がノックされキリウが入ってきた。
「スーランさん、おはようございます。そろそろ出ないと間に合わな―――へえ」
キリウがスーランの顔を見て目を丸くした。
「化粧は少しだけ、かな?それでも元の素材が良いからここまで変わるものなんですね」
「キリウ様その通りなんです。勿体ないですよね」
「本当に!垂れ目の半分ほどの目がお化粧によって、より可愛らしさを増した感が!」
どうやらスーランの顔はちょっと弄るとそこそこまともになるらしいが興味の無いスーランは大きな口で欠伸をする。
「あ。いつものスーランさんだ」
「一緒一緒」
「スーラン様専属のメイクメイドになりたいくらいです!」
「んーケバくないならドリスとフリア好きにして。こんな顔で良ければくれてやる」
「出た。スーランさんのくれてやる発言」
キリウがくすくす笑いながら行きましょうと手で促した。キリウと共に公爵家の馬車に乗り施設に向かう。
「スーランさん、昨夜は恙無く?」
「ん?うん。ごちそうになりました」
「ぷっ」
スーランの赤裸々発言は朝一でも健在である。
「それは何よりです。息子として心配してました。媚薬の効果は問題なく効きました?」
「うん。無くても余裕だった。でも焦ったり抵抗しようとするバウ…総帥が見れてお得な感じ」
「ぶはっ」
キリウが再度噴き出した。
「…ふふっ想像つきませんね。謁見室でもあんなに動揺する父上を見ることが初めてでしたから」
「そうなんだ。私も初めてだったけど、あれ楽しいね」
「スーランさんだからこそ引き出せたような気はします」
「そうなのかなーでもあれは諸々宝の持ち腐れ過ぎる。良かった発掘できて」
「あはは!」
その後も馬車の中でキリウからあれこれ聞かれたが、曲がりなりにもキリウの父親でありスーランも流石に内容も内容なので濁しながら答えられるものだけ答えた。それでもキリウは腹を抱えていたので、何がツボに入ったのかはわからない。恐らく息子だからこそ心配…していたのかもしれない。ひたすら笑っていたけど。
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