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セフレ関係開始 2※
しおりを挟むあっという間の出来事に驚いて彼を見…ようとすると、輪郭がぼやける程に綺麗な銀色の瞳が目の前にあり、イリエは口付けをされていた。
イリエの人生初めての口付けだ。目の前には閉じられていない銀色。まるでこちらを品定めするかのような優しくない視線だ。
イリエは目を開けたまま固まり、直後身体中が発火したかのように熱くなった。そして先ほどの痺れるようなざわめきが頭の上から足先まで迸るように流れていく。
フェリウスの少し冷たく乾いた唇が動き、イリエの下唇を軽く咥え舌で舐められ、それが繰り返される。肌のざわつきに加え下腹部がきゅっと甘く締め付けられ弛緩したあとに、じわりと足の間が潤う感覚に戸惑う。
その時視界の中に小さな瓶が入り、潤んだ瞳のままイリエは必ず性交する前に行わなければならないことを思い出す。
避妊薬だ。
人族は性交する際に特に気をつけなければならないことはイリエでも知っている。
人族の場合、心を伴わない性交を強要された場合は妊娠する確率は皆無であるが、逆を言うなら心を寄せている相手ならその確率が格段に上がる。
イリエにとっては心から欲するフェリウスと性交すると確率は高くなるのだ。それは彼の迷惑になるし、何より授かる子に申し訳ない。
「ん、薬、を」
「…薬?」
「…避妊薬を」
フェリウスも思い出したのか、唇を離し瓶に視線を向けた。温もりが離れた喪失感にイリエは薄めの唇を目で追ってしまう。
イリエは瓶を取ったフェリウスの手からそれを受け取ろうと手を伸ばすが、彼は器用に片手で瓶を開けて一粒の淡い桃色の錠剤を取り出した。
「口を開けろ」と腰に響く掠れた低音で命令され、イリエはフェリウスが入れやすいように少し大きめに口を開けた。
するとフェリウスがおもむろに錠剤を自分の口に入れ、顔が近づいてイリエの唇を覆った。ぬるっとした感触と共に避妊薬がイリエの口の中に移される。そしてそのままぬるぬると口の奥に押し込めるように動かしていく。
「っん、ん、んぅ…」
突然の口移しに驚きながらも、自分しか知らない内側の粘膜がフェリウスの舌に犯されていることを理解すると、びくりと無意識に体が反応し甘い戦慄きが身体中を駆け巡る。
「ふ、ぅ、…ん、はっ…」
小さなイリエの口を隙間なくフェリウスの口で覆われ舌が口腔内を蹂躙する。息苦しさを感じたイリエは、性交指南書に書いてあった鼻で息をすることを思い出し、初めての深い口付けとその甘さにピクピクと身体を反応させながらも、自分とフェリウスの唾液と共に錠剤をこくりと飲み下した。
それを音で聞いていた筈なのに、フェリウスの舌はそのままイリエの中に居座り縦横無尽に這い回る。イリエは翻弄されながらも、目の前に見える冷たい眼差しに恥ずかしさよりも寂しさが勝り、そっと目を閉じて口付けの感覚に集中した。
(どう思われていたとしても、目を瞑ればそれを見なかったことに…知らない振りができる。どうせならこの時間を大事に刻みたいの)
目を背ける現実は結果的にその通りであり、せめて交わっている時だけでも自分の都合の良い想像をすることは自由なはずだ。それ以外では常に迷惑にならないよう注意しておけばいい。
悲観的な感情など要らないのだ。元から覚悟していたことで、当然のことをいちいち思い出していたら心が保たない。
目を閉じてフェリウスの舌の感覚を追いながら、ひっこめていた自分の舌を動かしてみる。それに併せるようにフェリウスの舌がイリエの舌に絡みついて扱かれ吸われる度にイリエの腰がピクピクと連動した。
背に回っていたフェリウスの手がゆっくりと背中の上から下になぞられ繰り返された。
「っはっ…ん、ふっ…ん、…」
びくりと背中を僅かに反らすとそれを許さないかのようにフェリウスの方に寄せられ、イリエは思わず彼の胸元に手を預けるが、脳内でしなだれかかる仕草は本物の恋人同士ではないのかと考えながらも、それ以上の喜びにせめてと彼の胸に触れていた手の平を動かし支えさせてもらっている風に拳を握った。
蠢く舌と背中や腰を這い回る手によって、握られた拳がぴくりと弛緩されるのを何とか踏ん張りながらも握り続ける。
与えられる快感で無意識に顔を離そうとするイリエの後頭部を掴みながらフェリウスのもう片方の手がタオルを器用に取り去っていった。微かな寒さと体に与えられた熱にどちらかわからない震えが走り、触れる彼の手で熱が蓄積されていく。
その度に下腹に溜まる熱と潤いがじくじくと脚の間から滴るような感覚にイリエが身悶えていると、腰から脇に触れていたフェリウスの手がイリエの小ぶりだが形の良い胸にさらりと触れた瞬間、びりびりとした快感に体が反応する。
「っ…!…ぁ、あ、んっ…」
胸の輪郭を確かめるように蠢く少し硬めの皮膚で覆われたフェリウスの長い指を、イリエは目を閉じた状態で意識を集中させて追っていく。胸のどこを触られていても過敏に反応する自分の体は何なのだろうと思っていると、彼の指がイリエの淡い桃色の突起に触れた瞬間、思わず我慢していた声が漏れ出てしまい、フェリウスの唇から離してしまった。
「んぅ!ぁ、ぁぁ…っは、はっ…」
剥き出しの快楽の突起に直接触れられ摘まれた感覚に体が勝手に反応して、熱く浅い息を吐きながら、下を向き目を開けると、そこには節くれだった長い指が巧みに胸の先端を這い回るのを目の当たりにしてしまい、イリエは余計に息を乱した。
ぶわりと下腹の熱さが籠もり、浅い息継ぎが治まらない。
「貞操観念低いな」
落ちてきた言葉にヒヤリと頭が一瞬冴えるが、与えられ続ける胸の快感に即座に意識が戻される。
「簡単に股開きそう」
心をぐりっと抉られる言葉にそんなことはないと直ぐに言い返したいが、ふともしかしたらその通りなのかもしれないとイリエは思い直す。
イリエにとってフェリウスが初めての性交の相手にはなるが、今後いつか訪れるかもしれない他の相手にも同じなのかどうかは現時点ではわかるわけがないからだ。
フェリウスだからこうなっているとイリエは思いたいが、実際にはイリエが単なる淫乱なのかも知れないのだ。
「…っふ…。い、今、…っぁ…関係が、終わるまで、は…一人、だけ……」
そこでイリエはフェリウスを今後どう呼べば良いのか今更に気づく。熱い息をつきながらフェリウスに伺いを立てた。
「なんて、…っ…んっ…、よ、呼んだら良いですか?」
「別に何でも」
心底どうでも良さそうな返しに、イリエは微かに熱が冷めるのを感じながら、息を整えて火照る頭で考える。その合間にもフェリウスの手はイリエの胸に快感を植え付けてくる。
ファーストネームは、無い。
これはきっと大切な人や親しい人からの呼び名であってフェリウスも呼ばれたくはないだろう。
奥底から溢れ出る妬む己の卑しい感情を無理矢理押し潰し、弁えろとイリエは自分に言い聞かせる。
「……っ…ふ、ぁ…れ、お…レオダッド様、で」
「様付けは好まない」
「…レオダッド、さん…」
呼びたい名は一つしかないが、イリエの身勝手な意地と線引きで絶対に呼ばないと決めている。それがイリエなりの心が伴わない相手とのせめてもの距離の取り方なのだ。
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