大好きな人に番が現れたので潔くセフレ離れします

きるる

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最後に良いよが欲しい 1※

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「珍しいな」
「少量しか無理ですが、たまには飲んでみたいなと思って」


早めに帰宅したあと、イリエは食事の準備をしている間に酒を嗜んでいたフェリウスを見て、ちょっとだけ自分も飲みたくなり杏のお酒を割って飲んでいた。

素面でいて都度心が悲鳴を上げ、万が一態度に現れてしまうくらいなら。お酒の力を少しだけ借りた方がフェリウスに迷惑がかからないかもしれない。そして何より貧弱な自分の精神の為にとイリエはくぴっと杏子酒を飲む。

夕食は下拵えしてあったので、後は仕上げるだけだ。
今夜のメニューはフェリウスの好物のポークピカタと小さく角型に切ったベーコンと野菜のクリームスープ。

フェリウスもいつも通りになっていて、多くはないが会話もあった。イリエは少しほろ酔い状態で後片付けをしてからシャワーを浴びて出ると、何とフェリウスも浴室に向かっていった。初めてのことにイリエは驚き、同時にそれが二度と訪れないことに胸がずきんと痛くなる。

浴室に消えたフェリウスを見送ったイリエは、テーブルの上に準備してあった小さな瓶に目を向けた。


(……飲まなければ、もしかしたら)


イリエの心の中に卑劣な、どす黒い感情が湧き出す。


(彼とさよならしても、もしかしたら彼の――――)


そこでイリエの僅かな欠片の良心が小さく灯った。

イリエはゆっくりと深呼吸して冷蔵庫を開け、途中まで飲んでいた薄めた杏子酒をくいっと飲み、風呂上がりの果実水も飲み干した。

その時にはもう先程の卑しい感情は薄れ平常心を取り戻していた。
もしこれを決行したらイリエは本当に底の底まで堕ちるのだと叱咤して。

カチャリと浴室の扉が開き、フェリウスに用意していた果実水を渡そうと振り向いた時、イリエは目の前の光景に目を奪われた。

そこには下半身を大判のタオルで巻き、そこから覗く脚は靭やかで長く美しい脚。肩にも大判のタオルを掛け、髪を小さなタオルで拭うフェリウスが立っていた。

少し滴る髪を拭う仕草、いつもより水分を含んだ髪から覗く銀色の瞳、綺麗に筋肉がついた肉体美にイリエは鼻血が出そうになり咄嗟に鼻に手を当てる。


「イリエ?」
「っ、お風呂上がりの果実水っ、どうぞ…!」
「ああ」


イリエの騒ぐ胸中など知りもしないフェリウスは、渡したりんご水を一気に飲み干した。ごくりごくりと動く喉仏が壮絶に色っぽくて、凝視していた視線を無理矢理離したイリエは避妊薬を取り「飲みますっ」と宣言し水と共にぐびりと喉に流し込んだ。

ささっと流し台に移動してグラスを洗うイリエの後ろで「――なくても良いのに」と呟くフェリウスの言葉は水の音でかき消された。


「イリエ」


洗い物が済んだイリエは既に寝台に座っていたフェリウスに呼ばれ、頬を染めながらも抗う選択はない。それでも今夜のフェリウスはいつものように服を着ていないことにとてつもない緊張と恥じらい、そして興奮がイリエを襲う。


「顔真っ赤」
「…お酒のせいです」
「今赤くなったんだけど」
「…レオダッドさんの格好のせいです」
「着てないのに?」
「…だからです」


腕を引かれ、いつものように身体中に甘い痺れが迸る。フェリウスの膝に跨った状態で思わず彼に手を伸ばしそうになった。


(…これが最後)


最後のフェリウスとの性交。
次はもう二度と無い。

最後ならいっそのことイリエから触れても良いのではないかと思ったが、やっぱりできない。


「…どこに触れたい?」
「…」
「触れて良いよ」
「っ…良い…?」
「ああ」


そっか。触れて良いんだ。
最後だから触れさせてくれるんだ。

絶望と歓喜の狭間でイリエは震えた手で大好きな人の頬に触れる。温かい。
薄い唇に触れる。すべすべだ。
髪に触れる。少し湿っていて艷やかだ。
首に触れる。とても色っぽい喉仏に興奮が増す。


「くすぐったい」
「っ、ごめ―――」
「良いよ」


時たまくれるその言葉にイリエはどれだけ救われたのだろう。
どれだけ甘やかされたのだろう。

肩に掛かっていた大判のタオルが開け首元が少し顕になる。
フェリウスの肌は健康的な肌色だ。色白でも色黒でもなく程よく日に焼けている。
その肩の後ろに模様のようなものが見えイリエは首を傾げた。


「…?」
「…ああ、黒豹族特有の模様」
「模様…」
「人によって場所は様々だが、俺は肩から肩甲骨」
「模様…」
「…見る?」
「…良いのですか?」
「良いよ」


フェリウスから『良い』をもらったイリエは開けたタオルを寝台の下に落とした。
均整の取れた美しい体型、割れた腹筋に鎖骨と喉仏が醸し出す色気。イリエは酒の影響か彼の肉体美の魅力なのかわからないほど見惚れ、うっとりと溜息を吐いた。

そして肩の後ろにある薄黒い模様。体を少し伸ばして覗くと、肩上から肩甲骨に掛けて黒味が薄れるグラデーションのレオパード柄。イリエはそっと手を伸ばしてその模様に触れた。

思わず勝手に触れてしまったが、フェリウスが何も言わないのを良いことにイリエは続ける。

フェリウスの身体に入れ墨ではなく馴染むように彩られたそれはまるで彫り絵のように美しい。


「…なんて綺麗」


イリエは無意識にそう呟いて肩の一部の模様に口付けた。

微かにピクッと動くフェリウスの身体に、恐れることなくイリエはすりすりと唇で擦る。


(…もう触れられなくなるけど、私の方が先に触れられた)


そんな歪で昏い感情にイリエは酒の効果も足され酔いしれる。いつものイリエにはまずない行動だ。

最後だからという免罪符を掲げ、イリエの行動を大胆にさせる。

肩に手を添え唇で模様部分に触れるイリエの表情は恍惚としていた。

突如身体を引き離されたかと思ったら、後頭部を持たれ目の前には銀色の瞳。そしてその綺麗な瞳の輪郭がぼやけ、イリエは唇を覆われていた。


「っん、んぅ」


深くまで舌を入れられ、口腔内全てを隈無く這い回られ、イリエの舌を存分に吸い上げられる。歯が当たるくらい押し付けられる口付けにイリエは夢中になって貪る。


「は、ぁ、ん、…ふっ…」


フェリウスの後頭部を支えていない手がイリエの上着の下から滑り込み、背中を、脇を、腰を撫でていく。ぴくぴくとそれに反応しながら、イリエは腰が前後に勝手に動き始める。

脇から前にするりと移動した節ばった長い指が胸の輪郭を伝い、真ん中にある突起を不意にぎゅっと摘んでから指の腹でさりさりと撫でる。それは左右順番に与えられた。


「ん!はぅ…っぁ、ん…!」


緩急付けた胸への刺激に腰が跳ね上がり、イリエは跨いでいた足の間で既に濡れそぼっていた秘所を閉じようと無意識に動くが、フェリウスの膝にいる限りは不可能だ。下履きすら間違いなく湿っているのだろう。

口づけと胸の執拗な刺激にイリエは息を乱し始めるが、ふと自分の足の間にある、兆し始めて硬くなったフェリウスの剛直がタオルを押し上げていた。





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