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フェリウス 1
しおりを挟む親友のイアン曰く、フェリウスは駄目女製造の才能があるそうだ。
「もうお互い全て知ったようなものよね?たった一度だけなんて無理。このまま一緒になりたいわ。番縁の申請に行きましょう」
一度だけ性交しましょうと言われた女からは、始終待ち伏せされるようになり。
「何でそんなに私をおざなりにするの?私を最優先にしてよ!」
初めて付き合った女からは、仕事柄守秘義務が多くそれなりに忙しいのに、ヒステリックに喚きフェリウスの毎日の予定を事細かに知りたがり。
「これから絶対に指名して。…いえ、指名なんていらないからずっと一緒に居たい」
娼館のフリーでついた女からは、仕事としての行為の筈が店まで辞められ迫られたり。
「貴方が私を狂わせたの!私の行動は全部貴方がそうさせているのよ!」
自分はさっぱりした性格で束縛したことなどないと宣って付き合った貴族の女からは、好意が徐々に歪みフェリウスの全てを把握するような行動が常軌を逸した。侯爵家に押し入ったり、職場では出入り禁止になり、他の女から声をかけられたりあまつさえ近づこうとしようものなら持っていた日傘や扇子で攻撃した。
いつも近くで見ているイアンですら「そんな変な態度とってもないしなー……雄は気づかない魔性系?」と言われ、フェリウスも勘違いされるような言動や行動をしているわけでもなく、毎度のようにおかしくなる相手に辟易していた。
そんな負の経験からフェリウスは二十四歳になった今、絶賛女嫌いだ。
身分。
バロアス王国五大侯爵のカルロ・レオダッドは王国特殊部隊の最高権力者でありフェリウスの父親だ。
黒豹族は皆揃ってバランス良い身体能力を持ちフェリウスも特殊部隊に所属しており、国の諜報や裏で暗躍する動きに適していると思っている。
因みに年齢や怪我などで退いた元特殊部隊から、カルロが直々に選別したメンバーが現在侯爵家で働いていたりする。
そして容姿。
すらりとした長身で騎士隊の面々と違って敏捷さを欠くことがないよう、体の必要な部分だけを鍛え体型を維持しているので、一見細身に見えるが脱ぐと均整の取れた肉体だ。
漆黒に煌めく髪は癖のひとつもない。人族の母と同じ銀色の瞳は宝石のように美しく、誘っている目だと難癖をつけられてからは前髪を少し伸ばし目元が隠れるくらいにしている。
顔は造形の整った両親のおかげで端正で整ってはいるが、それは生まれつきであり褒められたところでどうも思わない。
過去の出来事から女への対応の酷さは有名だが、それでも高レベルの身分と容姿、特殊部隊の有望株ということで次から次へと群がってくるので、今では無表情無関心が通常仕様となってもう何年も経つ。
更に侯爵家から職場まで遠くないのだが、家に押しかける姦しい輩から避ける為に女人禁制の寮に移るほどだった。
「僕とフェリウスは系統の違うクズらしいよ」
そう言ってからからと笑いながら言うのは、親友であるイアン・ピーフォックだ。
頭頂部から毛先にかけて朱色から桃色に変わる緩い巻き髪と美麗な顔の造り、それを彩る鮮やかな橙色の瞳。
孔雀族の伯爵家次男で、十年来の親友であり同僚でもあるイアンとは任務でもプライベートでも良く共にいる。
孔雀族は敏捷さと知略、人の懐に入るのが上手く特殊部隊に必要な要素だ。
フェリウスから言わせれば、面倒な相手を選ばず去る者は追わず、世渡り上手を最大限に発揮して女との性交だけを愉しみながら食い散らかしているイアンは正統派クズだと自信を持って言える。
女の敵と言われる彼でもフェリウスにとっては気を遣わず素の状態で居られる数少ない相手だった。
頭の回転が早く任務においても戦略を練るのが得意で、阿吽の呼吸で動いてくれるイアンとは良く一緒にタッグを組んでいた。
特殊部隊といっても職種は様々で、フェリウスとイアンはその中でも特殊な暗部組織の工作員だ。
元来の素質と黒豹族特有の瞬発力、判断力など臨機応変に動け多様な攻撃が可能なフェリウスと、策略系統に長けていて身軽で敏捷な動きのイアン。二人が一緒に動くと成功率が格段に上がるので良く共に任務に赴いていた。
一時期は遠征など多くて面倒ではあったが、所属する隊員達は殆どが同性で楽だったし、多少の欲が溜まれば前髪を隠して遠征に行った先の娼館で発散できた。
そしていつもフェリウスが性交する時に言われた言葉。
何故服を脱がないのか。
どうして肌同士触れ合えないのか。
フェリウスは性交時一度も脱いだことがない。
それはフェリウス始め黒豹族の特性でもある。
黒豹族の雄はそれぞれ体の一部に豹柄の模様があり、それは唯一と定めた相手にしか見せないという習性を持つことを知る者は少ない。
フェリウスは肩から肩甲骨にかけて模様があるので、必然的に上は脱がなくなる。かといって下だけ脱ぐのもまぬけな格好なので、性交する時は使用する雄部分を取り出すだけだった。
*************************
フェリウスとイアンは他国での密偵の任務を終え、四月ぶりに国へ戻った。その日は報告だけ済ませれば終わりだったので、イアンと共に久しぶりのタルカル食堂に向かった。
タルカル食堂は大衆向けの食堂でランチとディナー件酒場として開かれている。
元騎士隊で昔は鬼の騎士隊長と呼ばれていた白熊族のダンジが作る料理と、ダンジの妻である熊族のマリーの朗らかで誰にでも同じ対応と気さくさが楽に感じ、好んで良く来ていた。
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