大好きな人に番が現れたので潔くセフレ離れします

きるる

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フェリウス 9

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その姿が小さくなり、フェリウスはようやくほっと息を吐いた。そして心の底から思った。

番消しの薬を飲んでおいて良かったと。

それでも微かに残っていた残滓が一瞬でもあれだけの感情を動かした。

一日でも薬を飲むのをずらしていたら。
その未来を想像したフェリウスは多大な恐怖を覚えた。


(…イリエを想う心が覆われなくて本当に良かった)


番絆がどれだけ抗いがたい幸せなのかはもうフェリウスが知る由はないが、今のフェリウスにとって番絆以上の強い想いはイリエに全てある。


「お待たせしました」


その時フェリウスが心を寄せる相手の声が耳朶に届く。

咄嗟に息を呑み、少しだけ固まってしまったフェリウスは即座に体を弛緩させる。もしかしたらイリエに見られたかもしれないと懸念したからだ。


「ちょうど混み始めて思ったより時間がかかってしまって」


その言葉を聞いた瞬間にフェリウスは安堵し、ゆっくりと息を吐いた。

もしイリエがこの場面を見ていたら、直ぐ様約束を守り笑顔で去りそうな予感が容易に目が浮かんでしまう。その後も少し動揺しつつも、落ち着けと自身に言い聞かせながら買ってきてくれたコーヒーを飲んだ。

本当は今日イリエに全てを話そうとしていたのに、その前に番とケジメをつけることが先になってしまった。フェリウスは予定が狂わせられたことに臍を噛む。


その後も時折明日会うことをどうしても考えてしまい憂鬱になっていると、イリエが体調不良だと勘違いし帰るかと尋ねてきた。

せっかく初めて昼に会ったのにこんな状況に陥らせた元番に苛立ちが募る一方、イリエだけにはこんなにも心を寄せられると改めて認識し決意できたことに喜びも感じる。

その後はもうメリンダのことは頭の片隅程度に押しやられ、散歩したり公園で食事をしたり楽しんだ。イリエの髪を弄りながらずっと一緒にいたい気持ちが募る。

もう帰るかと言った言葉を今日は終わりで別れると解釈する謙虚過ぎる愛しい彼女を早く安心させてあげたい。



フェリウスは選択肢を間違えた。

ケジメを最優先にしてイリエへの告白を延ばしたことを、後に狂乱するほど後悔することになる。

傲りと、油断と、無知さが。
最悪な結果に舵を切り始めようとしていた。




珍しくイリエが食後に酒を飲んでいる。

強くないとは言っていたが、一杯も飲んでないのに頬が赤くなるのが何とも可愛らしい。
シャワーを浴びたフェリウスのタオル姿を見て真っ赤な顔しながら果実水を渡すイリエは初々しい。
フェリウスの肩の模様に唇で触れるイリエが愛しい。


想いを伝える予定は狂ったが、フェリウスが今日シャワーを浴び、敢えてタオルで出てきたのは肩の模様を見せる為だった。それはフェリウスのイリエを唯一と求める証でもあったから。自分の決意として見せたかった。


酒の影響からか、フェリウスの裸体を見たからか、フェリウスの模様をみたからか。
イリエがフェリウスの雄に触れたいと言う。蕩けた表情で触れる小さな手。ただ触れられているだけなのにとてつもなく気持ちが良い。

指南書を熟読したと言いながら、初めてとは思えないイリエの巧みな奉仕にフェリウスは頭が茹だりそうになる。

フェリウスは一度もイリエの従順で正直な秘所を舌で可愛がったことがない。それは一度やってしまったら我慢出来ずに本能のまま首元を噛み、身体中に跡を付け、全てが欲しくなり抑えられなくなりそうだったからだ。

そんなフェリウスの思いも知らずにイリエはひたすら奉仕を続け、フェリウスのファミリーネームを連呼する。うっとりと屹立に頬ずりする姿が恐ろしく淫靡なのに美しく、イリエに名前を呼んでみるか聞いた時だった。



イリエの切なく儚い微笑み。
この時何を思って呼んでくれなかったのか。
この時の表情は一生忘れることができない。



イリエが突如フェリウスの雄を深く飲み込んだ。

小さな口をめいっぱい開けて小さな手で上下に擦り、頬を窄ませて刺激を与えてくるイリエの淫らな口淫にたちまちフェリウスは屈し悶え狂う快楽に堕ちた。

微笑みの真意を、フェリウスは淫らなイリエに夢中になり見逃した。

達したフェリウスの雄から流れるものを一滴すら取り零さないように咥えて吸い付いて離れないイリエの行為に頭が沸騰しそうになる。

ようやく形勢を翻しフェリウスはイリエを責め、求め、求めさせ、狂ったように何度も名前を呼び、フェリウスをおかしくさせる我慢が出来なくなったイリエの声と、おずおずと頬を包む手、蜜壺に溺れ、何度も埋め込み、何度も抉り、何度も痙攣させ、フェリウス自身の雄もどろどろに溶けてしまいそうだった。

ふと口づけを外したイリエが、何かを祈るように額を合わせてきた。
目の前に見える目を閉じたイリエの何か覚悟を決めたような静謐な表情。


フェリウスは何かとてつもない間違いを犯しているのではないか。


過ったその懸念はイリエの淫らな声と淫靡な身体によって霧散されてしまった。





翌日一緒に朝を迎えたことに、ひっくり返ったような声を出し驚いていたイリエだが、それでも嬉しそうな表情にフェリウスも嬉しくなる。

番消しの効果が完全に効いたらしいフェリウスは、メリンダに対し何を思うこともなく、逆にせっかくのイリエとの休日が潰されることに苛立ちも覚えたが、これを終えないとイリエに向かい合えないからと、仕方なく侯爵家に向かう準備を始めた。

そしてにこにこしながら見送るイリエに背を向けてフェリウスは侯爵家に向かった。


本当に背を向けられたのはフェリウスでなく、イリエだったと知るのは愚かなフェリウスが遠征から戻ったあとだった。





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