大好きな人に番が現れたので潔くセフレ離れします

きるる

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フェリウス 10

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翌日の正午ちょうどに番相手のメリンダが老執事と共に訪れた。

両親には帰宅後すぐに話をし、もう番消しの薬を飲んでいること、番本人には全て話し謝罪する趣旨を伝える。二人共頷き、その席に参加することはしなかった。


フェリウスは昨日よりも落ち着いた様子のメリンダに、誰よりも大切にしたい人がいることを伝え、一昨日ケジメとして番消しの薬を飲んだこと、そしてメリンダへの本能から欲する感覚が全くないことを伝えた。

メリンダはフェリウスの説明に序盤は驚愕し、途中から涙を流し震えていたが、話を遮ったり暴れたり狂乱する様子はなく、最後まで何も言わずに聞いていた。


「俺は貴方の番にはなれない。申し訳ない」


フェリウスは深く頭を下げた。
暫しの沈黙と小さな嗚咽。


「っ…っ、レオダッ、ド、様。お顔を上げてください」


涙声のメリンダにゆっくりと顔を上げたフェリウスは瞠目した。

何とメリンダは泣きながら微笑んでいたからだ。

その表情の理由が分からないフェリウスだったが、嗚咽を抑えながら深呼吸をしていたメリンダは、侯爵家の執事に「お水を、一杯いただ、けるかしら」と伝え「シダー、あれを、今すぐ出して…ちょうだい」と命令する。その間も彼女の震えは止まらない。

目の前に紅茶があるのに何故水なのかと疑問に思ったが、シダーの「よろしいのですね」と尋ねる言葉に「まずは飲んでから、ちゃんと、お話しないと。出して」と何かを取り出すように再度命令した。

頷いたシダーが懐から取り出した小さな包み。
包みを開くと、そこには半透明の中が七色の薬。


「っ、それは…」
「まずはこれを、飲ませてください。まだ感情が貴方、に向いている部分が、あるのです。震えて、まともにお話も、できないので」


それは先日フェリウスが飲んだ薬と同じもの。
番消しの薬だった。

執事が持ってきた水の入ったグラスを受け取ったメリンダは、シダーから受け取った薬をすぐに口に入れ水で流し込む。

苦悶の表情で震えているメリンダは「……少し、だけ、待ってください、ね」と言い、目を閉じて口元を覆っていた。

そして少し経った頃、僅かに薬の効果が表れてきたのか、呼吸がゆっくりになり、震えも少しずつ治まってきたようだ。更に少し経つと、メリンダはふうと一息吐いてから、顔を上げた。


「レオダッド様。これはきっと運命なのですわ」



突然の運命発言にフェリウスは僅かに首を傾げる。


「…昨日貴国に来た理由は観光だと申し上げましたが、……実は伝を辿って番消しの薬を手に入れる為でした」


爆弾発言にフェリウスは目を見開く。

メリンダの話によると、昔からずっと好きな幼馴染みがいるのだという。しかし彼は人族で執事見習いの男爵家の三男。昔から少なからずメリンダを想ってくれているはずなのに、身分と番の話を出してはメリンダを受け入れてくれないという。

煮え切らない態度の彼に、メリンダは自分の覚悟を伝える為に、バロアス国の伝で紹介でしか手に入れられない番消しの薬を受け取った後、あの喫茶店でフェリウスと出会ってしまったのだ。

メリンダはまだ番消しの薬を飲んでいなかったので、今までの好きな彼への想いも吹き飛び、番に会えたことの歓喜に満ち溢れていた。

が、直後にズキンと無意識に胸を抉るような痛みが迸り胸を押さえたのだと。脳内をちらちらと掠める彼の顔が消えてくれなかったのだとか。


「貴方が番消しを飲んでいたことで繋がりが薄れて、そのおかげで私は…番の本能が彼への想いを超えなかったことに感謝しています」


薬を飲んでいなかったらどうなっていたのだろう未来はフェリウスも心底想像したくもなかった。

それでも番の本能か、メリンダはフェリウスに気持ちが傾き、だが一度離れたことによって、執事のシダーと夜更けまで沢山話をした。番の本能と今まで育んだ彼への想いが交錯して、番の本能だけに埋め尽くされそうになると、彼の顔と想い出が都度蘇ってきたのだそうだ。

その状態で本日フェリウスの元へ訪れ、話を聞いてようやく自分も覚悟を決めたのだという。


だからこそメリンダは運命という言葉を使ったのだろう。「まだ予断を許さない状態なので、苛烈な本能が顔を覗かせる前にお暇したいと思います」と言ったメリンダの表情は微かに穏やかになっていた。

そして国に戻り次第、彼に番消しを飲んだ事実を話して告白してくるという。「貴方の覚悟が成就しますように。私も、もし上手く行ったら手紙を出しても良いかしら?届かなかったら振られたと思って、そのまま私の…ことは、…忘れてくださいね」


まだ薬がそこまで効いていないので、時折切なそうな表情をするが、それでもメリンダは抗っていた。フェリウスは頷き、シダーからは「問題ありません。あいつはお嬢様に首ったけなのです。今度はあいつが覚悟を見せる番ですよ」と言われたメリンダは涙を流しながら微笑んでいた。


心に覚悟を決めた者は本当に強いとフェリウスは感じた。そしてそれは今後の自身もそうでなければならないと改めて誓ったのだった。

本当ならそのままイリエの元へ戻りたかったが、両親に事の流れを伝え、元番のメリンダの心境を考慮して、遠征後すぐにイリエに会いに行こうと決めた。


フェリウスはここでも選択を間違ってしまった。





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