大好きな人に番が現れたので潔くセフレ離れします

きるる

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番外編:お酒と獣化は程々に 7

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身体全体が重怠い。
しかもこれは性交後の幸せな感覚ではなく、寒気があるという嫌なものだ。


「―――リエ、熱がある。イリエ?」


フェリウスの心配そうな声が耳に届き、けほけほっと咳き込みながらイリエは目が覚めた。


あれから二度フェリウスとの性交の後、イリエは全く動けずにフェリウスに運ばれて湯に入った。

もう夜も更けていたのでフェリウスの部屋のシーツは変えられず、湯から出た後はイリエの部屋に移り共に寝ていたのだが、大好きな人に包まれながらも段々と喉が痛み出したまま、イリエは眠さに勝てずにそのまま寝落ちした。

翌朝フェリウスに声をかけられて起きると、明らかに熱によって視界がぼやけていた。


「…ごめん。俺が調子乗ったから」


両眉を下げたフェリウスが申し訳なさそうに謝ってくるが、イリエは関節痛に悩まされながらも首を振った。


「違うんです、…けほっ。昨日、実は朝からちょっと喉の調子が思わしくなくて。…でも久しぶりの飲み会と、二人が来てくれたことに、けほけほ…はしゃぎ過ぎてしまいました。フェス…ごめんなさい」
「っ…」


フェリウスの瞠目する表情にイリエは首を傾げるが、彼は「何でもないよ」と優しく微笑む。

今日はフェリウスがたまたま休みだったので、「冷やすものと水分…あと消化の良いもの作ってもらう」と言って部屋から出て行った。

逆に気を遣わせてしまいイリエは申し訳なく、反省するしかない。

その後飛んできたレリエルに自分が悪かったのだと説明すると、「珍しくフェリウスがすぐ気づいてあげられなかったと落ち込んでいたからな。それ以上は言わん」とわかっているとでもいう風にさらさらと頭を撫でてくれたのでイリエは安心する。

だが去り際に「フェスか…良いな。いざという時にそれを使って誂わせてもらうか」という小さな呟きにはイリエは気づかなかった。


「今思えば、季節の変わり目でした…」


寝台のヘッドボードに腰掛けたフェリウスに寄りかからせてもらいながら、イリエは甲斐甲斐しく桃のゼリーを食べさせてくるフェリウスに呟いた。


「イリエはその時期に風邪引きやすいって言っていたな」
「はい。幸せですっかり忘れていました…」


そこで給餌がぴたりと止まり、頭にフェリウスの口が落ちてくる。


「…あの。フェスは、…明日お仕事なのに風邪移ったら――」
「イリエの風邪は移らないし俺は滅多に引かない。俺が世話しなくて誰がするの。というか誰にもさせないし」


間髪入れずに言ってきたフェリウスからまた桃のゼリーがちゅるんと入ってくる。


「でも、夜中に咳き込んだらフェスの睡眠が…」
「イリエが傍に居ない方が眠れない。無理」


最後の一口がちゅるんと入り冷たい喉越しにイリエはほっと溜息を吐く。


「イリエが弱っている時も、そうでない時も俺がずっと傍にいるの」


そう言いながらフェリウスが大切で堪らない感じに頭に頬を寄せてきたので、イリエは風邪が移らないなら好きにしてもらおうと、彼の胸に背中を預ける。

その後何と医術の心得もあるというジュダが訪れ、「予想通りに季節の変わり目の風邪ですね。温かくして坊ちゃまに面倒見させれば明日には熱は下がるでしょう」と薬を渡された。

ジュダは本当に万能なのだとイリエは驚き、フェリウスも「癖の強すぎる奴だけど有能だからな」と言いながら、薬を飲み終えたイリエにはちみつレモン水を飲ませてくれた。


前に風邪を引いた時のように、どうやってやり過ごそうなんて悩みなんて微塵もなく、カルロからは大ぶりな美味しそうな桃を買ってきてくれ、更にはあの菓子店のガレットまで買ってきてくれた。「これは快復したら食べなさい」と優しい笑みで頭を撫でてくれた。すぐにフェリウスに手を払われていたが。

レリエルからは「復活したら褒美をやる」と言われ何だろうと思いながらも、不敵な笑みをフェリウスに向けていたので、「あれは絶対碌なことじゃない」と彼はぼやいていた。


そして屋敷の使用人達からもあれこれ差し入れをもらい、料理長からは冷たいりんごのシャーベットまで作ってもらった。そしてイリエが恐縮しないように「元気になったら皆にあの美味いサンドイッチをまた作ってくださいよ」と言われたので、ぶんぶんと頷き頭がぐわんと揺れフェリウスに窘められた。

更にはフェリウスがぼそりと「俺が仕事以外の時だ」と言われたので、勿論そうするつもりだ。


朝から晩までフェリウスはずっと傍に居れくれた。
はふはふ熱が上がり、節々が痛むとずっと傍で背中や腕を擦ってくれる。
寒気が訪れると一緒に寝台に横たわり優しく抱き締めてくれる。
イリエが気にしてしまうので唇ではなく、額や頬、頭に事あるごとに沢山口づけをくれた。


(なんて幸せなんだろう)


その度にイリエの脳内にはこの言葉が浮かび、熱も相まって涙腺が潤んでしまうのを、フェリウスは「ずっと傍にいるからね。俺の可愛い奥さん」とあやしてくれるから余計に涙ぐんでしまう。

イリエの大好きな甘く掠れた低音で沢山囁いてくれる。
そして大好きな旦那様の安らかな寝息がイリエの眠気を誘ってくれる。

イリエはフェリウス始め皆に甘やかされて満たされて風邪で苦しくも幸せな一日を過ごした。





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