トラウマ克服の為にクズに徹します

きるる

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イアン 20





現地で仲間と情報を共有しながらイアンとフェリウスは、今回先導していた首謀者がアーロ・オスモという商才で男爵を賜った人物だと特定した話を聞く。

アーロは数日前まで静かに身を潜めるような行動をしていたが、先日隙を縫うように雲隠れしたらしい。

他の首謀者の一味はイアン達によって二日も経たずに全員捕らえた。
その一人からアーロが秘密裏にバロアス国に潜入するとの情報を吐かせ、イアン達はその足で戻り追うことにした。


三日目の昼前に戻り、シャワーだけ浴びてから再度動こうと特殊部隊施設に向かう時、スーランとリグリアーノが会いに来て最新の薬が手に入ったという話題で、少し立ち話をしていた時だった。


「おや。戻りが早かったですね」


ちょうどそこを通りかかったのは同じ特殊部隊に所属している獅子族で三大公爵の次男であるバルトガだ。眩いほどの金色の髪にシアン色の鮮やかな瞳の麗しい風貌だが、彼もイアンと同じ類の腹黒い人種だ。


「ただいまーちょっと一人こっちに――――」
「話を遮って申し訳ないですが、イアンに待ち人が」
「ん?僕?」
「朝一に青年が特殊部隊に慌ただしく駆け込んで来たそうで、ずっと受付で待っていますよ」


雌ならばイアンを呼び出すことは出来ない。


「えー誰だろう」
「花屋の者だと言っていましたね」


その言葉にイアンはシュナと行った花屋の店主の孫であるポックを思い浮かべる。そしてその彼が急いでイアンに用事があると来た理由は一つしかないと確信する。

即座にイアンは駆け出し特殊部隊施設に向かった。


「ポック君!」


特殊部隊受付の前で膝を抱えて蹲っていたポックは、ばっと顔を上げぐしゃりと表情を歪ませながら立ち上がり、よろつきながらイアンに駆け寄った。


「っ、い、イアンさん…!」
「どうしたの?シュナに何かあった?」


イアンの声掛けにぼろぼろと泣き出したことが何よりの証明だ。


「ぼ、僕、っ…シュナ、さんに、酷い、ことを――そんなつもりなか――っ、シュナさんが、シュナ、さ、が…!」


まるで少年のように泣きじゃくるポックに、イアンは焦る気持ちを抑えながら敢えて落ち着いた口調で話しかける。


「ポック君。動揺して感情的になるのは分かる。でも少しで良いから落ち着いて話せるかな?」
「っ…っく、は、はい…!」


ポックは嗚咽する喉を押さえながら数回深呼吸して、話し始めた。


「っ…、ごめ、んなさい。取り乱して…す、数日前に店の裏口に、一人の貴族らしい男が来たんです。―――シルクハットを被った人で、シュナさんの…父だと、言ってきました」


その言葉にイアンは全身が粟立つ。


アーロ・オスモ。
シルクハットをいつも粋に被り、そこらの貴族よりも貴族らしい所作で端正な風貌の穏やかな人物。

イアン達が追っている首謀者と同じ風貌。


「ずっと、探していてようや、く、見つけたけど、驚かしてあげたいから、僕に協力してくれないかと、言われました。名前もちゃんと名乗って、シュナさんのお母さんの名前と、シュナさんの本名がシュリアナさん、だと言うこととか、穏やかな口調で、…僕信じちゃって、シュナさんが花屋に顔を出す大体の日程を知っていたので、それを伝えてしまいました…」
「…名前はなんて?」
「…アーロ。アーロ・オスモだと」


イアンの表情がすとんと落ちる。


「昨日の昼頃シュナさんが訪れて、僕はいつも破棄する花が置いてある裏口に、さ、サプライズがあるって。―――でも彼に会ったシュナさんの顔は、とてもではないけど、嬉しそうに全然見えなくて、寧ろ驚きよりも、恐怖っていうか――――」


そこでポックが再度ぐしゃりと涙を流すが、袖でぐっと目元を拭い話し続ける。


「その人は何故が、シュナさんを『リア』って、呼ぶんです。近づいた彼にシュナさんが、咄嗟に逃げようとして、でもがたいの良い連れの一人、が、シュナさんの口元にハンカチ、を。すると、シュナさんが気を失って、その時に彼が『私のものだ』って言って、ま、まるで恋人のようにぎゅっと抱き締めて、み、耳を、舐めて…!」


ポックがまた感情的になり始めるのを、誰よりもそうしたいイアンは死ぬ気で堪えて肩を撫でながら話を促す。その間に何とか頭の中で整理する。





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