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否定されない心地良さ 2
しおりを挟む「ねえ、君」
「っはい」
急に呼ばれウルスナはひくつく頬を押さえながらダニーを見ると、彼も自分の頬を擦りながら聞いてきた。
「頬がピクピクするのは何で?」
以前ヘレンにも言われ不快にさせたしジッロも目を丸くしていた。勘違いさせないようにウルスナは口を開く。
「ありがとうって…感謝の言葉を言った時や、嬉しいなと思った時に勝手に動くんです。頬が上手く…多分笑おうとして笑えてない…というか、いつかちゃんと微笑むことが出来れば良いなと思います」
その言葉にダニーが呆けるように目を丸くした。
ウルスナなりに相手に勘違いして欲しくなかったので説明したつもりだが、伝わらなかったかと自分の語彙力に肩を落としたくなる。
「ねえ、私を見て」
ダニーの言葉にウルスナが視線を向けると、彼がにこりと微笑む。
頬の左右の動きも目元が柔らかくなるのも完璧な笑顔だ。
「真似してご覧」
「真似…」
ウルスナはぽかんとしながらも、ダニーの言う通りに真似をしてみる。
(左右対称に頬を上げて、目元を緩める…)
頬がひくつきながらも左右同じに上げるようにして目元を緩めるが上手くいかずにほぼ瞑ってしまった。
「ふはっ。ほらほら、目が閉じてしまっているよ」
噴き出したダニーの顔はウルスナの顔を見て思わずといった風に笑っていた。その顔は先ほどの微笑みよりも自然で素敵だとウルスナは思った。
しかもダニーのその笑顔は貶したり見下すような下卑たものではなく、ちょっと歪で面白いものを見てつい笑ってしまったという印象に感じた。
「…悲しい気持ちになりませんでした」
「ん?どういうこと?」
ダニーが首を傾げながら尋ねてくる。
「ダニーさんが、笑ったのは私が上手く笑えていない顔を見て、ですか?」
「うん。ふふ、頑張ってるけど頬が上に上がるよりも真横に引っ張られている感じかな」
その言葉にウルスナ自身を嘲笑っているのではないと確信する。
「それを聞いてやっぱり悲しくはなりません。馬鹿にして笑われたりしてないので」
そう言うと、ダニーの表情がすっと真面目になった。
「君を見てそんな嗤い方する人がいるの?」
「しない人はいませんでした」
ウルスナの返した言葉にダニーはぽかんと口を開ける。
「帰るぞ」
後ろから少し不機嫌そうなリノが話しかけてきたので、ウルスナは「今のところ記録に問題はありませんか?」と聞くと、リノは僅かに頷いたのでホッとする。
「あれ、目元ちゃんと緩められるじゃない」
ダニーの言葉にウルスナは目元に触れるが良く分からない。
「行くぞ」
「私はもう少し居るよ。この子と話したい」
ダニーが言うとリノは眉を顰めながら「好きにしろ」と言って扉を開けたまま出て行った。
「…また怒らせてしまいました」
「ん?あいつはいつもあんな感じ。逆に嘘臭い微笑みの方が私としては気色悪いかな」
ウルスナはその言葉を聞いて瞬く。
「嘘臭い微笑み…?」
「ふふ、うん。実際微塵も心から笑ってなんかないよねって微笑み」
それを聞き、まともに笑えないウルスナは羨ましいと思ってしまう。
「それでも羨ましいです。私ちゃんと笑えないので」
「君は昔からずっと笑えないの?」
ウルスナは首を傾げながら答える。
「…多分、母が亡くなるまでは笑えてたと思います」
「…母君は亡くなられたの?」
「はい。私が殺しました」
ダニーが瞠目する。
「君が?」
「はい。小さい頃に私を庇って母は馬車に轢かれました」
「…君を守ったのではなくて?」
「そうだと思いますが、前後の記憶があまり覚えてなくて。でも私を守って死んでしまったのは確かなので、私は母殺しです」
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