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番外編:無の猛者に首ったけ 2
しおりを挟む「それ目的じゃないけど、香水臭い雌が寄ってはくるよねぇ。見もしないけど」
「眼帯していくのですか?」
普段ぼさぼさの髪で前髪も鬱陶しい感じにしてるが、本来のリューイの姿は髪も整えさえすれば端正で整った容姿なのだ。
口調でそれも台無しにはなっているが。
「まーるい黒色の眼鏡だけ。あいつが眼帯してて俺もお揃いにしてたら、そっち系?って疑われたら最悪」
カラカラと笑うリューイは椅子に足を立て酒を飲み干した。
「確かに眼帯自体あまり見ないしね。最近良く行くのね」
「うん。前よりはね。嬢ちゃんが関わってきたことで俺が変わったところもあるし、向こうも同じ」
「向こう?」
「ああ、主の御学友の相次ぐ婚姻ですか」
「そ。あっちの頭領とイアンは仲良いからね。フェリウスと共に特殊部隊筆頭だから前はちょこちょこ二人とは関わりあったし」
「ちょっと想像つかなかったわね。異名を持つ二人。特にピーフォック家の方はかなり驚いた」
リグリアーノと同い年で学園自体ともに学んだ、黒豹族のレオダッド侯爵家嫡男のフェリウスと孔雀族のピーフォック伯爵家次男のイアンが次々に婚姻したことは巷ではかなり話題に上がっていた。
「正統派クズと冷酷クズ。高位貴族なのに裏ではまあ言われていましたね」
「あはは。諦められない雌の嫌がらせとモテナイ雄のやっかみもあるだろうさ。そこまで言われていた二人が唯一を見つけたんだから衝撃だろうねぇ。フェリウスもだけど、俺としてはあのイアンを仕留めたのがある意味凄えなってさ」
「伴侶とは番絆だったと聞いてますが」
「うん。でも相手は人族でずっと番避けの薬を飲んでいて後々になってわかったくらいだから。素の状態でイアンを捕まえたって相当な猛者だよね。そして俺の同胞を兄にしちゃうんだから。元雇い主ですら兄にしちゃった」
「兄?元雇い主って…あの方も?」
「そ。何してるかとか素性がとか諸々どうでも良くて奴らの本質を見抜いた強者」
「なるほど。だからこそイアン様を射止めたという…」
「しかもスーランの古い友人だっていうんだから納得」
「「ああ…」」
兄妹二人がそりゃ納得と言う風に同時に呟いた。
スーランはバロアス王国魔術隊の女性治療魔術師だ。
当時王太子だったガブリアルノ自ら孤児苑から彼女を引き抜いて特例で魔術隊の寮に入れたという逸話は有名だ。
いつも眠そうな目をして怠惰一筋な変わり者の魔術師。そして魔術隊統括総帥の鷹族の三大公爵家当主バウデン・ホークルの伴侶である。
今やバロアス国の交渉材料の一つとなっている番避けの薬や番消しの薬、そして女性に優しい避妊薬など数々の薬を開発した先駆者なのに、権力や人にも物にもとんと興味が無い。
基本気怠げにぼーっとしているが、薬の精製や魔術を施す時は人が変わったようになり、会議等では気になる事案に対しては滑舌良く弁が立ち、相手をほぼ全勝で言い負かしているのだとか。
そんなスーランが友人と豪語する相手なのだから自ずと強者だということになる。
「そう言えば主が番絆の申請に来たイアン様と伴侶様に会ったと言っていましたね。スーラン様の友人に相応しいと楽しそうに仰っていましたし」
「昔っからリグリアーノ様を王子って呼び続ける豪傑よね。王子と呼ぶのに王子扱い一切せずに一個人として接する貴重な相手だし」
「その女傑みてぇな二人に嬢ちゃん投入してみたいな」
「「え」」
兄妹二人が固まる。
「スーラン様レベルの猛者二人にウルスナ様を…」
「何と言うか…呑まれてしまわないかと」
「くく…色々染まっちゃうって?」
「染まると言うか…私個人の意見ですがウルスナ様はあのままで居ていただきたい気持ちはありますね」
「私も。ある意味かなりピュアなままで居ていただきたいと思ってしまうかも」
「なるほどなぁ。俺は逆に嬢ちゃんが呑み込む側だと思ってるけどな」
リューイが葡萄酒を注ぎながら楽しそうに話す。
「呑み込む側になるのですか?」
「うん。確かに多少イケナイお話とかで影響されることはあっても、嬢ちゃんの本質は真っ直ぐで強固だ。ピュアってやつが爆発して逆にあの二人の猛者を取り込みそうな気がするんだよなぁ。んで無駄に下手なこと言えなくなりそうな感じ」
「言われてみればそうかも」
「うちの主の凝り固まった思考を根底から覆しましたしね」
「そ。特殊部隊二人や冷静沈着な統括総帥の攻略も見事だけどさ。腹黒で口の悪い捻くれ者をあそこまで変えさせた嬢ちゃんってある意味最強だって思うんだよ」
「ウルスナ様ワールドにようこそってやつね」
「ふふ。確かにウルスナ様だからこそ、主がここまで変わられた」
三人は頷き合う。
「ただリグリアーノ様がそれを許さないような気もしますけどね」
「でもウルスナ様が会ってみたいと言えば許しちゃいそう」
「あー前に経過観察でスーランには会ったって言ってたぞ」
「おや、既にですか」
「真っ直ぐ伝えて続けろって言われたって聞いたー」
「どうしても気怠げでやる気のない様子しか思い浮かばないわね」
そんな会話をしながらその後も二人の主の話題をつまみに話に花が咲き夜も更けていった。
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