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番外編:無の猛者に首ったけ 7
しおりを挟むウルスナ達は正面扉ではなく裏口のような場所から入っていった。
「もう始まってるね。久しぶりに胡散臭いリグが見れるかな」
ダニエアルノが楽しそうに麗しい顔をきらきらさせながらローブのフードを深く被り直し、「ウルスナのこれ可愛い」と言いながら前留めをそのままに更に深くフードを被せた。
裏側の扉から入り、少し薄暗い場所から会議室の奥に出ると既に誰かが話しており、会議が既に始まっているようだ。
広い会議室は円状のように繋がったテーブル前とその後ろに椅子が列で並べられ、百名近くのそれぞれ部隊ごとに異なったローブを羽織った魔術師達が居る光景が圧巻だ。
円状の中央には壇上のようなものがあり、魔術部門それぞれの研究の成果など報告していくらしく、今は紺色のローブの攻撃魔術の者が壇上に立っていた。
ウルスナがリグリアーノを探し少しだけ背中を伸ばしてきょろきょろするのが、まるで小さな動物にしか見えないダニエアルノはつい頭を撫でてしまう。
(リノさんは灰色のローブ――――あ、いた)
灰色ローブ軍団のような場所の真ん中手前にリグリアーノを見つけたウルスナは胸がどきどきと高鳴る。
未だに毎朝、毎日、毎晩ウルスナはリグリアーノを見る度に、話す度にどきどきしているのだ。
白銀色の髪と毛先のエメラルド色が際立ち相変わらず美しい髪と、マゼンタ色の瞳は少し伏せるような感じがとても素敵であるのだが、ウルスナがいつも見ている表情とは少し違う。
「見つけました」
「うん。良い感じに作ってきてるね」
「作ってきてる…ですか」
「そう。リグリアーノの素を知っているのはそれなりにいるけど、それを向けられるのは若干名。逆に言うなら敬語で話しかけられることが普通ではあるからね」
「敬語…」
リグリアーノが敬語で話す所を見たことが一度もないウルスナは何だか楽しみになってくる。
紺色のローブの男性が壇上から降り、円状卓中央に座っていた漆黒のローブを羽織った背の高い男性が立ち上がる。
「ウルスナ、彼がスーランの伴侶だよ。魔術隊統括総帥のバウデン・ホークル」
「バウデン、統括総帥…」
バロアス国の本でしか知らなかった名前だ。
統括総帥のみが着用する漆黒のローブに身を包まれたバウデンは、焦げ茶色とキャメル色二色の癖のある髪を胸元まで伸ばし右側は細かな編み込みが施されている。
立ち上がっただけで周りが静かになるほどの覇気と落ち着きのある男性らしい美丈夫な出で立ちのバウデンが進行を執る。
「では次は防御魔術部門から。コーネイン・ウルフィリア防御魔術長。リグリアーノ・バロアス」
威厳のある低い声でウルスナの伴侶の名が呼ばれウルスナは思わずぴょいんっと背筋を伸ばしてまたダニエアルノにくすくすと笑われてしまう。
立ち上がり優雅に歩くリグリアーノの姿はいつも扉に寄りかかったりソファにだらしなく座る姿とは正反対で、口元に僅かに浮かべる笑みは両方上がっており皮肉感が皆無である。
それだけを見れば本当に王子様のような麗しい姿だ。ウルスナは目を丸くしながらも瞬きを極力減らしつつ、じっと見てしまう。
その時。
リグリアーノが視線を感じたのかふとこちらを向いた瞬間、ダニエアルノがさっと動き死角に隠れた。
「…おっと。スーランの魔術でも本能的な感覚は薄れないってやつかな」
ウルスナは見えなくなってしまったリグリアーノを無意識に追おうと体を伸ばすがダニエアルノに「バレたらもう見られなくなってしまうよ」と窘められ、体を元に戻した。
「では、防御魔術部門より研究の遂行具合と過程、成果を報告致します」
淡々としたリグリアーノではない低い声が聞こえ、報告が始まった。
「リグが追加で話す時まで我慢ね」
ダニエアルノの言葉に頷きながら、ウルスナはなるべく大好きな伴侶が研究している防御魔術に関して少しでも理解してみたいと努めるが、なかなかに専門用語が多くすぐに困難になってくる。
(魔術が分からなくても大まかにでも理解出来るように…リノさんが話す内容をちょっとでもわかるくらいには頑張って学びたいな)
ウルスナの中にまた新しい学びの種が蒔かれる。優先順位はあるが、次々にやりたいことが出来る状況のなんて幸せなことか。
胸に手を当てながら次なる抱負にわくわくしていると、壇上で話していたコーネインが「では今報告した最新の防御魔術について詳しい説明をリグリアーノ・バロアスより致します」と聞こえダニエアルノがゆっくりと先程の位置に戻る。
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