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「……手を、放してください」
私は、彼の顔を振り向く勇気さえ持てないまま、背後へ向けて絞り出すように言った。
掴まれた手首を振りほどこうと力を込めてみる。
けれど、彼は微動だにしなかった。
決して痛烈な力で締め上げているわけではない。だが、その掌には、まるで壁に打ち付けられた鎖のような、あるいは深海に深く下ろされた錨のような、抗いがたい強情さが宿っていた。
「今放してしまったら、君はそのまま弾け飛んでいってしまうだろう?」
図星だった。
私の体は、彼の手から逃れたい一心で、綱引きの最中のようにピンと張り詰めていた。もし今、彼が不意に指を離せば、私はその勢いのまま暗い厨房へと転がり込んでしまうに違いない。
沈黙し、なす術もなく立ち尽くす私に、彼はさらに追い打ちをかける。
「私と踊りたくないのかい?」
「……」
あまりにも残酷な問いに、喉の奥が詰まる。
己の感情を、冷徹に覗き込んでみる。
……踊りたくないと言ったら、嘘になる。
令嬢であった頃、私は遠くから彼を眺め、一度でいいからその手を取ってみたいと、幾晩も淡い夢を見た。
けれど、こんな形であってはならないのだ。
薄汚れたメイド服を纏い、嘲笑の的となっている今の私にとって、彼と踊ることは至福などではない。むしろ、視線を合わせることさえ耐えがたい絶望でしかなかった。
「……平民が貴族と踊ることを許す法など、この国にはございません」
私は極めて事務的な、下働きの口調で撥ねつけた。
「ほう。そんな奇妙な法は、一度も耳にしたことがないが」
彼はそう言い捨てると、頑固に動こうとしない私の前に、流れるような動作で回り込んできた。
手首を掴んだまま、彼は再び私の正面を塞ぐ。
周囲のざわめきは、もはや音楽を飲み込み、遠くから押し寄せる津波の前兆のように、静かに、けれど確実にその殺意を孕んだ音量を増していく。
万策尽きた私は、抗っていた手の力を抜いた。
逃げようとしても、この男はどこまでも追いかけてくる。その予感は確信に近いものだった。
ならば、せめてはっきりと拒絶しなければならない。
この状況は決して私が望んだことではない、すべてはこの侯爵の横暴なのだと、周囲に示すためにも。
「やめてください。迷惑です。私は仕事に戻らなければならないのです」
「だが、まだ返事を聞いていない」
「何の話……ですか」
「私と、踊りたくないのかと聞いたんだ」
どこまでも真剣な眼差しだった。
これが退屈しのぎの悪戯であれば、どれほど救われただろう。でも、もしこれが彼と友人たちによる茶番なのだとしたら、彼は歴史に名を残す名優に違いない。
彼の瞳には一片の偽りもなかった。
私は唇を噛む。
「踊りたくなど、ありません」
「嘘だね」
即座に断じられ、私はたまらず視線を逸らした。
見透かされている。
いや、私は見透かしてほしかったのか。
嘘を見抜かれ、強引に連れ去ってほしいと願う――そんな浅ましい意中まで暴かれたような気がして、不安に近い悦びが、静電気のような火花を散らして消えた。
だが、その微かな火種を、彼の握力が再び燃え上がらせる。
彼が私の手を強く引き寄せた。
抵抗する力さえ奪われ、私は吸い寄せられるように彼の間近へと引き寄せられる。
至近距離。
彼の整った顔が、私の耳元にまで迫った。
「元令嬢なら、踊り方は覚えているだろう?」
危うく「はい」と頷きそうになるのを、辛うじて飲み込む。
私は消え入りそうな声で、最後の手札を切った。
「……侯爵閣下と踊ったりすれば、私はもう、この街で生きてはいけなくなります」
すると、彼はふっと、短く喉を鳴らして笑った。
耳元をくすぐる温かな吐息が、甘美な麻酔剤のように私の理性を溶かしていく。
「私の誘いを、一度断った罰だよ」
そうか。これは「罰」なのか。
ならば、仕方ない。
私は覚悟を決める。彼と踊るために、さらに険しき茨の道へ足を踏み入れることを。
すると、悪意に満ちた視線が針のように敷き詰められたダンスホールという名の戦場を、素足で歩まされるような気分になる。
絶望が深すぎると、人はかえって冷静になれるらしい。
もはや自嘲的な微笑さえ浮かべられるほど、心の一部は完全に麻痺していた。私は、淑女として教育された頃の記憶を呼び覚まし、ダンスの構えをとる。
私は左手を、今この国で最も注目を集める侯爵の胸元にそっと添えた。アルフォンス様の力強い右手が私の腰を抱き寄せ、もう片方の手は、私の右手を優しく包み込む。
エスコートが始まる。
彼の歩調に合わせ、まるで禁断の領域へと忍び込むかのように、ホールの中心――最も光り輝くパルケ(寄木細工)の床へと進んでいく。
アルフォンス侯爵が進む先では、人々がモーゼの十戒のように左右に分かれ、静まり返った。彼の行為は、この舞踏会、ひいてはこの街の秩序をも乱しかねないものだったが、誰一人として、この「若き英雄」の行く手を阻む勇気など持ち合わせていない。
私たちがダンスホールの中心に到達したその瞬間、楽団の演奏がぴたりと止まった。
まるで、主役の登場を待ちわびていたかのように。
指揮者は私たちの動きを追い、静かな期待のようなものに満ちた眼差しで、侯爵の合図を待っている。
アルフォンス様がわずかに顎を引いて頷くと、指揮者がオーケストラへと向き直り、タクトを振り上げた。
刹那、華やかな三拍子の旋律が、広間の空気を震わせ始めた。
私は、彼の顔を振り向く勇気さえ持てないまま、背後へ向けて絞り出すように言った。
掴まれた手首を振りほどこうと力を込めてみる。
けれど、彼は微動だにしなかった。
決して痛烈な力で締め上げているわけではない。だが、その掌には、まるで壁に打ち付けられた鎖のような、あるいは深海に深く下ろされた錨のような、抗いがたい強情さが宿っていた。
「今放してしまったら、君はそのまま弾け飛んでいってしまうだろう?」
図星だった。
私の体は、彼の手から逃れたい一心で、綱引きの最中のようにピンと張り詰めていた。もし今、彼が不意に指を離せば、私はその勢いのまま暗い厨房へと転がり込んでしまうに違いない。
沈黙し、なす術もなく立ち尽くす私に、彼はさらに追い打ちをかける。
「私と踊りたくないのかい?」
「……」
あまりにも残酷な問いに、喉の奥が詰まる。
己の感情を、冷徹に覗き込んでみる。
……踊りたくないと言ったら、嘘になる。
令嬢であった頃、私は遠くから彼を眺め、一度でいいからその手を取ってみたいと、幾晩も淡い夢を見た。
けれど、こんな形であってはならないのだ。
薄汚れたメイド服を纏い、嘲笑の的となっている今の私にとって、彼と踊ることは至福などではない。むしろ、視線を合わせることさえ耐えがたい絶望でしかなかった。
「……平民が貴族と踊ることを許す法など、この国にはございません」
私は極めて事務的な、下働きの口調で撥ねつけた。
「ほう。そんな奇妙な法は、一度も耳にしたことがないが」
彼はそう言い捨てると、頑固に動こうとしない私の前に、流れるような動作で回り込んできた。
手首を掴んだまま、彼は再び私の正面を塞ぐ。
周囲のざわめきは、もはや音楽を飲み込み、遠くから押し寄せる津波の前兆のように、静かに、けれど確実にその殺意を孕んだ音量を増していく。
万策尽きた私は、抗っていた手の力を抜いた。
逃げようとしても、この男はどこまでも追いかけてくる。その予感は確信に近いものだった。
ならば、せめてはっきりと拒絶しなければならない。
この状況は決して私が望んだことではない、すべてはこの侯爵の横暴なのだと、周囲に示すためにも。
「やめてください。迷惑です。私は仕事に戻らなければならないのです」
「だが、まだ返事を聞いていない」
「何の話……ですか」
「私と、踊りたくないのかと聞いたんだ」
どこまでも真剣な眼差しだった。
これが退屈しのぎの悪戯であれば、どれほど救われただろう。でも、もしこれが彼と友人たちによる茶番なのだとしたら、彼は歴史に名を残す名優に違いない。
彼の瞳には一片の偽りもなかった。
私は唇を噛む。
「踊りたくなど、ありません」
「嘘だね」
即座に断じられ、私はたまらず視線を逸らした。
見透かされている。
いや、私は見透かしてほしかったのか。
嘘を見抜かれ、強引に連れ去ってほしいと願う――そんな浅ましい意中まで暴かれたような気がして、不安に近い悦びが、静電気のような火花を散らして消えた。
だが、その微かな火種を、彼の握力が再び燃え上がらせる。
彼が私の手を強く引き寄せた。
抵抗する力さえ奪われ、私は吸い寄せられるように彼の間近へと引き寄せられる。
至近距離。
彼の整った顔が、私の耳元にまで迫った。
「元令嬢なら、踊り方は覚えているだろう?」
危うく「はい」と頷きそうになるのを、辛うじて飲み込む。
私は消え入りそうな声で、最後の手札を切った。
「……侯爵閣下と踊ったりすれば、私はもう、この街で生きてはいけなくなります」
すると、彼はふっと、短く喉を鳴らして笑った。
耳元をくすぐる温かな吐息が、甘美な麻酔剤のように私の理性を溶かしていく。
「私の誘いを、一度断った罰だよ」
そうか。これは「罰」なのか。
ならば、仕方ない。
私は覚悟を決める。彼と踊るために、さらに険しき茨の道へ足を踏み入れることを。
すると、悪意に満ちた視線が針のように敷き詰められたダンスホールという名の戦場を、素足で歩まされるような気分になる。
絶望が深すぎると、人はかえって冷静になれるらしい。
もはや自嘲的な微笑さえ浮かべられるほど、心の一部は完全に麻痺していた。私は、淑女として教育された頃の記憶を呼び覚まし、ダンスの構えをとる。
私は左手を、今この国で最も注目を集める侯爵の胸元にそっと添えた。アルフォンス様の力強い右手が私の腰を抱き寄せ、もう片方の手は、私の右手を優しく包み込む。
エスコートが始まる。
彼の歩調に合わせ、まるで禁断の領域へと忍び込むかのように、ホールの中心――最も光り輝くパルケ(寄木細工)の床へと進んでいく。
アルフォンス侯爵が進む先では、人々がモーゼの十戒のように左右に分かれ、静まり返った。彼の行為は、この舞踏会、ひいてはこの街の秩序をも乱しかねないものだったが、誰一人として、この「若き英雄」の行く手を阻む勇気など持ち合わせていない。
私たちがダンスホールの中心に到達したその瞬間、楽団の演奏がぴたりと止まった。
まるで、主役の登場を待ちわびていたかのように。
指揮者は私たちの動きを追い、静かな期待のようなものに満ちた眼差しで、侯爵の合図を待っている。
アルフォンス様がわずかに顎を引いて頷くと、指揮者がオーケストラへと向き直り、タクトを振り上げた。
刹那、華やかな三拍子の旋律が、広間の空気を震わせ始めた。
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