31 / 46
31
「アルフォンス様だ……」
「見て、王立第二騎士団の団長よ!」
「なんてお美しい……」
「……副団長もいる!」
などなどと。
老若男女を問わず、彼の姿を認めた人々が釘付けになり、次々とその名を囁き始める。
その波は急速に広がり、気づけば私たちの周りには黒山の人だかりができつつあった。
流石のエドガー卿と口論していたアルフォンス様も、この異様な熱気に気づかざるを得なくなる。
「……え、なに、これ……」
露骨に困惑し、不機嫌そうな顔を隠そうともしないアルフォンス様に、エドガー卿が「この人は本当に……」と言わんばかりの呆れ顔で応じる。
「何って、団長のせいですよ」
「え? なぜだ。私が―ストーキング以外に―何か不審なことでもしたか?」
「わざとなのですか、閣下……」
エドガー卿は天を仰ぎ、諭すように言った。
「貴方は有名人なのです。街中で堂々と歩けば、スターを見つけた大衆が押し寄せてくるのは自明の理でしょう」
「え? ……ええ? なぜだ?」
アルフォンス様はエドガー卿だけでなく、私やクロエにまで助けを求めるような視線を送った。
冗談ではなく、彼は本当に、この状況が理解できないといった様子だった。
まさかとは思ったが、私は恐る恐る尋ねてみる。
「アルフォンス様、もしかして……。ご自身がこれほどまでに有名だという自覚が、なかったのですか?」
「知らないよ、そんなの!」
本気で驚愕している彼の姿に、エドガー卿は三度目の溜息を吐く。
「これだからワーカホリックは……」
彼は独り言のように毒づきながら、分析するように言葉を添えた。
「まあ、結果的に巡察をして正解でしたね。閣下が世間からどのような目で見られているのか、身を以て知る良い機会になったのですから」
つまり、彼はあまりにも仕事に没頭しすぎたのだ。
近年の国境付近での局地戦や多忙な公務にかまけ、民間での自分の評判や認知度に対し、致命的なまでに無頓着になっていたらしい。
「副官として反省します……」と呟くエドガー卿の言葉が、妙に哀れな気がしてならない。
「え、でも私、別に『私がベルンハルトです』なんて名乗って歩いてないよ? 皆さん、どうして私の顔を知っているんだい?」
本気で首を傾げる主人に、エドガー卿の鋭い突っ込みが飛ぶ。
「何度も凱旋パレードをしたでしょうが! 閣下はずっとオープン馬車の上で、民衆の歓声も聞かずにうとうとしていたから気づかなかったのかもしれませんがね。おまけに、巷の絵描きたちがこぞって貴方の似顔絵を売り捌いているんですよ。今やこの国で貴方の顔を知らないのは、生まれたての赤ん坊か、貴方本人くらいなものです」
「へえ……」
自分を取り囲む群衆を、まるで珍しい生き物でも見るかのように不思議そうに眺めるアルフォンス様。
「俺、そんなに有名だったのか……」
彼はしばらく驚いていたようだったが、すぐにいつもの穏やかな表情に戻ると、隣にいる私をちらりと盗み見た。
「なんだか……少し、恥ずかしいね」
そう言って、彼はいたずらっぽく、どこかあどけない少年のような笑顔を私に向けた。
その瞬間、周囲で見守っていた群衆――特に女性陣の視線の温度が、一気に、そして劇的に変化したのがわかった。
(……やばい)
注がれる視線はもはや羨望ではなく、突き刺すような「詮索」と「嫉妬」に変わっている。
このままでは、アルフォンス様が去った後に私が生きたまま皮を剥がされるのではないかという、漠然とした、けれど確信に近い恐怖が背筋を走る。
私の表情が急激に強張ったのを察したのか、アルフォンス様は少し申し訳なさそうに周囲を見渡して言った。
「このままだと、君たちがゆっくり買い物もできないね。一度、僕たちはここを離れることにしよう」
ちょうど、建前上は「巡察」の最中だ。
エドガー卿の説明によれば、都の各所に設けられた警備詰所を回り、点検のチェックリストに記入するようなルーティン作業があるらしい。
「じゃあ、いったんここで別れることにしようか。僕たちも仕事を片付けてくるよ」
「……あ、あの、後で合流するおつもりですか?」
私が尋ねると、アルフォンス様は当然のように答えた。
「ああ。一時間後、中央広場の大きな噴水の前で待ち合わせよう。いいかい?」
「はい、承知いたしました。……でも、わざわざ合流しなくても、私たちは買い物を終えたら自分たちで屋敷に戻れますが……」
すると、アルフォンス様は少しだけ真剣な目をして私を見つめた。
「さっきのようなことがあったばかりだ。君たちが大量の荷物を抱えて歩くのは危ないし、何より運び屋を雇うにしても、怪しい連中に目をつけられないよう確認しておきたい」
「……分かりました。ありがとうございます。では、一時間後に」
こうして私たちは、熱狂的な群衆を連れて去っていくアルフォンス様とエドガー卿を見送り、ようやく「本来の目的」であるショッピングを再開することになった。
「見て、王立第二騎士団の団長よ!」
「なんてお美しい……」
「……副団長もいる!」
などなどと。
老若男女を問わず、彼の姿を認めた人々が釘付けになり、次々とその名を囁き始める。
その波は急速に広がり、気づけば私たちの周りには黒山の人だかりができつつあった。
流石のエドガー卿と口論していたアルフォンス様も、この異様な熱気に気づかざるを得なくなる。
「……え、なに、これ……」
露骨に困惑し、不機嫌そうな顔を隠そうともしないアルフォンス様に、エドガー卿が「この人は本当に……」と言わんばかりの呆れ顔で応じる。
「何って、団長のせいですよ」
「え? なぜだ。私が―ストーキング以外に―何か不審なことでもしたか?」
「わざとなのですか、閣下……」
エドガー卿は天を仰ぎ、諭すように言った。
「貴方は有名人なのです。街中で堂々と歩けば、スターを見つけた大衆が押し寄せてくるのは自明の理でしょう」
「え? ……ええ? なぜだ?」
アルフォンス様はエドガー卿だけでなく、私やクロエにまで助けを求めるような視線を送った。
冗談ではなく、彼は本当に、この状況が理解できないといった様子だった。
まさかとは思ったが、私は恐る恐る尋ねてみる。
「アルフォンス様、もしかして……。ご自身がこれほどまでに有名だという自覚が、なかったのですか?」
「知らないよ、そんなの!」
本気で驚愕している彼の姿に、エドガー卿は三度目の溜息を吐く。
「これだからワーカホリックは……」
彼は独り言のように毒づきながら、分析するように言葉を添えた。
「まあ、結果的に巡察をして正解でしたね。閣下が世間からどのような目で見られているのか、身を以て知る良い機会になったのですから」
つまり、彼はあまりにも仕事に没頭しすぎたのだ。
近年の国境付近での局地戦や多忙な公務にかまけ、民間での自分の評判や認知度に対し、致命的なまでに無頓着になっていたらしい。
「副官として反省します……」と呟くエドガー卿の言葉が、妙に哀れな気がしてならない。
「え、でも私、別に『私がベルンハルトです』なんて名乗って歩いてないよ? 皆さん、どうして私の顔を知っているんだい?」
本気で首を傾げる主人に、エドガー卿の鋭い突っ込みが飛ぶ。
「何度も凱旋パレードをしたでしょうが! 閣下はずっとオープン馬車の上で、民衆の歓声も聞かずにうとうとしていたから気づかなかったのかもしれませんがね。おまけに、巷の絵描きたちがこぞって貴方の似顔絵を売り捌いているんですよ。今やこの国で貴方の顔を知らないのは、生まれたての赤ん坊か、貴方本人くらいなものです」
「へえ……」
自分を取り囲む群衆を、まるで珍しい生き物でも見るかのように不思議そうに眺めるアルフォンス様。
「俺、そんなに有名だったのか……」
彼はしばらく驚いていたようだったが、すぐにいつもの穏やかな表情に戻ると、隣にいる私をちらりと盗み見た。
「なんだか……少し、恥ずかしいね」
そう言って、彼はいたずらっぽく、どこかあどけない少年のような笑顔を私に向けた。
その瞬間、周囲で見守っていた群衆――特に女性陣の視線の温度が、一気に、そして劇的に変化したのがわかった。
(……やばい)
注がれる視線はもはや羨望ではなく、突き刺すような「詮索」と「嫉妬」に変わっている。
このままでは、アルフォンス様が去った後に私が生きたまま皮を剥がされるのではないかという、漠然とした、けれど確信に近い恐怖が背筋を走る。
私の表情が急激に強張ったのを察したのか、アルフォンス様は少し申し訳なさそうに周囲を見渡して言った。
「このままだと、君たちがゆっくり買い物もできないね。一度、僕たちはここを離れることにしよう」
ちょうど、建前上は「巡察」の最中だ。
エドガー卿の説明によれば、都の各所に設けられた警備詰所を回り、点検のチェックリストに記入するようなルーティン作業があるらしい。
「じゃあ、いったんここで別れることにしようか。僕たちも仕事を片付けてくるよ」
「……あ、あの、後で合流するおつもりですか?」
私が尋ねると、アルフォンス様は当然のように答えた。
「ああ。一時間後、中央広場の大きな噴水の前で待ち合わせよう。いいかい?」
「はい、承知いたしました。……でも、わざわざ合流しなくても、私たちは買い物を終えたら自分たちで屋敷に戻れますが……」
すると、アルフォンス様は少しだけ真剣な目をして私を見つめた。
「さっきのようなことがあったばかりだ。君たちが大量の荷物を抱えて歩くのは危ないし、何より運び屋を雇うにしても、怪しい連中に目をつけられないよう確認しておきたい」
「……分かりました。ありがとうございます。では、一時間後に」
こうして私たちは、熱狂的な群衆を連れて去っていくアルフォンス様とエドガー卿を見送り、ようやく「本来の目的」であるショッピングを再開することになった。
あなたにおすすめの小説
冷酷公爵と呼ばれる彼は、幼なじみの前でだけ笑う
由香
恋愛
“冷酷”“無慈悲”“氷の貴公子”――そう恐れられる公爵アレクシスには、誰も知らない秘密がある。
それは、幼なじみのリリアーナの前でだけ、優しく笑うこと。
貴族社会の頂点に立つ彼と、身分の低い彼女。
決して交わらないはずの二人なのに、彼は彼女を守り、触れ、独占しようとする。
「俺が笑うのは、お前の前だけだ」
無自覚な彼女と、執着を隠しきれない彼。
やがてその歪な関係は周囲を巻き込み、彼の“冷酷”と呼ばれる理由、そして彼女への想いの深さが暴かれていく――
これは、氷のような男が、たった一人にだけ溺れる物語。
地味に見せてる眼鏡魔道具令嬢は王子の溺愛に気付かない
asamurasaki
恋愛
一応長編、今や番外編の方が長くなりました作品『愛のない政略結婚のはずがいつからか旦那様がグイグイきてどうしていいのかわからないのですが』から派生した、ジークシルード王国の第二王子、セントバーナルと子爵令嬢、エンヴェリカ・クエスベルトの恋物語です。
スピンオフ的な作品ですが、『愛のない〜』
の本編ではヒーローがチラッと名前が出てくる程度でヒロインはまったく出てきません。
『愛のない〜』を読まなくてもこちらの作品だけでもわかる内容となっておりますが、番外編の『ジョルジュミーナの結婚』ではヒーローとヒロインがちょこっと出てきます。
そして同じく番外編の『セントバーナルの憂鬱』ではこの作品のヒーローが主役のお話です。
『愛のない〜』を読んでいらっしゃらない方はこちらをお読み頂いた後に『ジョルジュとミーナの結婚』『セントバーナルの憂鬱』を読んで頂ければ嬉しいです。
もちろん同時でも大丈夫ですが、最初こちらの短編を書く予定がありませんでしたので、ちょいネタバレ的になってますので、ネタバレは嫌だ!という方はご注意下さませ。
このお話は主にヒロインエンヴェリカ視点で進みますが、ヒーローのセントバーナル視点など他のキャラ視点も入る予定です。
表記のないものはすべてエンヴェリカ視点となります。
こちらの作品ジャンルとしては異世界恋愛となってますが、『愛の〜』ではヒロインヴァネッサや王太子妃ナターシャ、元となった乙女ゲームのヒロインメリッサは転生者でしたが、この物語のメインキャラは転生者は登場しない予定です。
この物語は魔法のある世界ですが、魔法、魔術と記載を分けておりますが、本来の意味と違い私の独自の設定とさせて頂いております。
ご了承下さいますようお願いします。
尚、只今感想欄を閉じております。
今後開けるかもしれませんが。
ですので、誤字や脱字などないよう何度も確認をしておりますが、それでも見つけてしまわれましたら申し訳ありません。
その他、ユルユルで設定ございます。
そのあたりをご理解して読んで頂けましたら大変有り難く思います。
よろしくお願い致します!
いきなり結婚しろと言われても、相手は7才の王子だなんて冗談はよしてください
シンさん
恋愛
金貸しから追われる、靴職人のドロシー。
ある日突然、7才のアイザック王子にプロポーズされたんだけど、本当は20才の王太子様…。
こんな事になったのは、王家に伝わる魔術の7つ道具の1つ『子供に戻る靴』を履いてしまったから。
…何でそんな靴を履いたのか、本人でさえわからない。けど王太子が靴を履いた事には理由があった。
子供になってしまった20才の王太子と、靴職人ドロシーの恋愛ストーリー
ストーリーは完結していますので、毎日更新です。
表紙はぷりりん様に描いていただきました(゜▽゜*)
役立たずと捨てられた万能建築士、隣国で「聖域」を造って無双する。今さら復興のために戻れ? ご自分たちで瓦礫でも積んでいればよろしいのでは?
しょくぱん
恋愛
「お前の魔法は石を積むだけの土木作業だ」と婚約破棄されたので、城を支えていた『構造維持結界』をすべて解除して出て行きますね。今さら「城が崩れる!」と泣きつかれても、私は隣国で氷結の皇帝陛下と「世界最高の聖域」を造っていますので、一切知りません。
王国唯一の建築魔導師アニエスは、その地味な見た目と能力を理由に、王太子シグムンドから婚約破棄と国外追放を言い渡される。 彼の隣には、派手な光魔法を使う自称聖女の姿があった。
「お前の代わりなどいくらでもいる。さっさと出て行け!」 「……分かりました。では、城にかけていた『自動修復』『耐震』『空調』の全術式を解約しますね」
アニエスが去った直後、王城は音を立てて傾き、噴水は泥水に変わり、王都のインフラは崩壊した。 一方、アニエスは隣国の荒野で、呪われた皇帝レオンハルトと出会う。彼女が何気なく造った一夜の宿は、呪いを浄化するほどの「聖域」だった。
「君は女神か? どうか私の国を救ってほしい」 「喜んで。ついでに世界一快適な住居も造っていいですか?」
隣国がアニエスの力で黄金の国へと発展する一方、瓦礫の山となった母国からは「戻ってきてくれ」と悲痛な手紙が届く。 だが、アニエスは冷ややかに言い放つ。 「お断りします。契約外ですので、ご自分で支えていればよろしいのでは?」
これは、捨てられた万能建築士が隣国で溺愛され、幸せを掴む物語。 そして、彼女を捨てた者たちが、物理的にも社会的にも「崩壊」し、最後には彼女が架ける橋の『礎石』として永遠に踏まれ続けるまでの、壮絶な因果応報の記録。
婚約破棄された堅物令嬢ですが、鬼の騎士団長の娘として宮廷の陰謀を暴くのに忙しいので、美貌のカストラート(実は王子)に溺愛される暇はありません
綾森れん
恋愛
「お前のような真面目くさった女はいらない。婚約は破棄させてもらう!」
婚約者だった公爵令息に冷酷に言い放たれたリラ・プリマヴェーラ。
だが、彼女の心にあったのは悲しみではなく―― 十年前の王族暗殺事件を調査したいという情熱だった。
伯爵令嬢であるリラは、鉄の掟を守る『鬼の騎士団長』の娘。
彼女には恋よりも何よりも優先すべき使命があった。それは、十年前に幼い王子が暗殺された事件の真相を暴き、父を、そして王国を陰謀から救うこと。
婚約破棄直後、彼女の前に現れたのは、天使の歌声を持つ美貌のカストラート(去勢歌手)、アルカンジェロだった。
彼が十年前の事件について密かに調べていることを、リラは知ってしまう。
真相を探るため、リラは彼を自分の音楽教師として迎え入れ、距離を縮めていく。
事件解決の協力者として彼と接するうち、リラは謎めいたアルカンジェロに危機を救われることになる。
しかし、リラは知らない。
アルカンジェロの正体が、十年前に暗殺されたはずの第三王子であることを。
そして彼にとってリラこそが、初恋の女性であることを。
彼は十年間、密かにリラを想い続けていたのだ。
王位を狙う者たちから身を隠すため、声楽の技術を駆使して、教会歌手として大聖堂で生き延びてきたアルカンジェロだったが、王家を巡る不穏な陰謀が静かに動き始めていた。
捜査に猪突猛進な堅物令嬢と、彼女を影から支え執着を見せる、カストラート歌手のふりをした王子。
宮廷の闇を切り裂く二人の恋と事件の行方は――?
※本作は、過去に投稿していた『真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています』の設定・キャラクター・構成を大幅に改稿し、新作として再構成したものです。
物語の結末やキャラクターの掘り下げを強化しておりますので、初めての方も、以前お読みいただいた方もお楽しみいただけます。
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
人質王女の婚約者生活(仮)〜「君を愛することはない」と言われたのでひとときの自由を満喫していたら、皇太子殿下との秘密ができました〜
清川和泉
恋愛
幼い頃に半ば騙し討ちの形で人質としてブラウ帝国に連れて来られた、隣国ユーリ王国の王女クレア。
クレアは皇女宮で毎日皇女らに下女として過ごすように強要されていたが、ある日属国で暮らしていた皇太子であるアーサーから「彼から愛されないこと」を条件に婚約を申し込まれる。
(過去に、婚約するはずの女性がいたと聞いたことはあるけれど…)
そう考えたクレアは、彼らの仲が公になるまでの繋ぎの婚約者を演じることにした。
移住先では夢のような好待遇、自由な時間をもつことができ、仮初めの婚約者生活を満喫する。
また、ある出来事がきっかけでクレア自身に秘められた力が解放され、それはアーサーとクレアの二人だけの秘密に。行動を共にすることも増え徐々にアーサーとの距離も縮まっていく。
「俺は君を愛する資格を得たい」
(皇太子殿下には想い人がいたのでは。もしかして、私を愛せないのは別のことが理由だった…?)
これは、不遇な人質王女のクレアが不思議な力で周囲の人々を幸せにし、クレア自身も幸せになっていく物語。
月蝕の令嬢 〜妹の偽りの光を暴き、夜の王に溺愛される〜 嘘つきの妹に成敗を、ざまあ
しょくぱん
恋愛
「汚らわしいその腕で、僕のセリナに触れるな!」
公爵令嬢エレナは、生まれつき「不浄の影」を持つとして家族から虐げられてきた。 実態は、妹セリナが放つ「光の魔法」が生む猛毒を、エレナが身代わりとなって吸い取っていただけ。 しかし、妹の暴走事故を自らの腕を焼いて防いだ日、エレナは「聖女である妹を呪った」と冤罪をかけられる。
婚約者である第一王子に婚約破棄され、実家を追放され、魔物が巣食う「奈落」へと突き落とされたエレナ。 死を覚悟した彼女を拾ったのは、夜の国を統べる伝説の龍神・ゼノスだった。
「これを不浄と言うのか? 私には、世界で最も美しい星の楔に見えるが」
彼に口づけで癒やされたエレナの腕からは炭化が剥がれ落ち、美しい「星の紋章」が輝きだす。 実はエレナの力こそが、世界を再生させる唯一の「浄化」だったのだ。
龍神の番(つがい)として溺愛され、美しく覚醒していくエレナ。 一方、彼女を捨てた母国では、毒の吸い取り役がいなくなったことで妹の「光」が暴走。 大地は腐り、人々は倒れ、国は滅亡の危機に瀕していく。
「今さら『戻ってきて毒を吸ってくれ』ですって? お断りです。私は夫様と幸せになりますので」
これは、虐げられた影の令嬢が真の愛を知り、偽りの光に溺れた妹と国が自滅していくのを高みの見物で眺める、大逆転の物語。