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第5話 見知らぬ国の冷たい瞳
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エルシャルト公爵邸での暮らしが始まって三日。
リリアナはまだ、その広い屋敷の空気になじめずにいた。
城館は静かで、美しく、整然としている。
しかしその整いすぎた静寂が、時に胸を締めつけた。
窓辺を流れる風は冷たく澄み、まるでこの国そのものを象徴しているようだった。
何かを拒むように厳格で、そしてどこか澄みきっている。
「リリアナ様、朝食の準備が整いました」と執事ロイが告げる。
「ありがとう、すぐに行きます。」
リリアナは鏡の前で軽く髪を整え、深く息を吸った。
統治者の屋敷とは思えぬほど、生活音がほとんどしないこの邸内で、彼女の足音だけが小さく響いていた。
食堂の扉を開けると、広々とした白の空間の奥に、黒衣の人物の背中が見えた。
セドリック・エルシャルト――この地の主であり、先日宿で命を救ってくれた男。
その背に漂う空気が一瞬で周囲を支配している。
誰かが息をする音さえ遠のくような、圧倒的な存在。
「おはようございます、公爵様。」
リリアナが丁寧に挨拶すると、セドリックはわずかに顔を向けた。
「おはよう。眠れたか。」
淡々とした声だったが、その鋭い銀の瞳は彼女の細かな様子を観察している。
微笑を返しながらも、リリアナの心臓はわずかに早鐘を打った。
「はい。こちらの空気には徐々に慣れてきました。」
「そうか。それならいい。」
セドリックは短く応じ、手元の書類を閉じる。
「一応聞いておくが、体に不自由はないな? 王都からの道中で疲れが残っているかと思っていたが。」
「ええ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」
彼は頷くと、視線を食堂の窓の外へ流す。雪の降りしきる中庭。
「この国では、弱さを隠すことを美徳としない。助けが必要なら言え。それを恥じる必要はない。」
その言葉に、リリアナはふっと息をのんだ。
王都の人々のように、体裁を整えるような言い方ではない。
ただ、事実としての真実を告げる言葉だった。
それが何故か、心の奥に温かく残った。
「ありがとうございます。覚えておきますわ。」
リリアナは軽く微笑んだ。
セドリックの瞳が、一瞬わずかに柔らいだ気がした。
しかしその直後、扉が開き、執事ロイが一礼して言った。
「閣下。本日、外から視察の使者が来訪される予定です。」
「もうそんな時期か。……わかった。」
彼がそう言って立ち上がると、空気が再び張りつめる。
「君は昼を過ぎたら館を案内されるといい。ロイに任せる。」
「はい。ありがとうございます。」
リリアナが頭を下げると、セドリックは何も言わず、ただ一瞥だけ残して部屋を出ていった。
その背に漂う冷気が、彼の噂を思い出させる。
――冷徹無慈悲、情を持たぬ公爵。
けれど、宿で彼が助けてくれた夜の光景を考えると、その言葉が本当に正しいのか、リリアナには分からなくなっていた。
***
屋敷の回廊を案内されながら、リリアナは各部屋を見て回った。
図書室、温室、中庭、調理棟。
どこも整然と清潔で、秩序の美がありながらも、一切の遊びがない。
温室で花々が並ぶ光景は美しいのに、不思議と温かみではなく静けさを感じた。
「お嬢様、こちらの花壇は、閣下が直々に配置を指示されたものなのです。」
「公爵様が……花を?」
「はい。無骨そうに見えて、何事にも秩序を求められる方でして。咲く時期や色の配置まで、緻密に計算されておられます。」
思わず微笑がこぼれる。
あの冷たい瞳の奥に、そんな几帳面な一面があるとは思わなかった。
風が吹いて、温室の中の花弁がひらりと舞う。
淡い白薔薇の香りが漂い、リリアナは思わず目を閉じた。
――薔薇。婚約破棄の夜、散った花弁の記憶がよみがえる。
甘くも苦しい、愛の終わりの象徴。
しかし今のこの香りは違った。
刺のない白薔薇。
痛みではなく、静かな祈りを思わせる。
「……この白薔薇は、何という名ですか?」
「“レグナ・セレスティア”。閣下がお好きな花で、“揺るぎなき誓い”という意味を持ちます。」
「誓い……。」
その言葉を胸の奥で繰り返す。
王太子アルベルトの偽りの誓いが頭をよぎり、胸に鈍い痛みが走る。
(もう誓いなんて、信じないと決めたのに……。)
小さく息を吐きながらも、リリアナは掌で花弁をそっと撫でた。
冷たくも滑らかな手触りが、妙に心地よかった。
***
午後、部屋に戻ると机の上に一通の封筒が置かれていた。
執事ロイの筆跡で、「閣下より」とだけ書かれている。
リリアナは少し戸惑いながら封を開けた。
中には短い一文。
『夕刻、執務室まで来られたい。話がある。――S・E』
胸の鼓動が高鳴る。
何の用だろう。滞在の条件に関する話か、それとも……。
様々な思考が交錯する中、リリアナは深呼吸し、立ち上がった。
***
夕暮れ時、執務室の扉の前でノックをすると、奥から「入れ」と低い声が返る。
扉を開けると、セドリックが大きな書棚の前に立ち、腕を組んでいた。
赤褐色に染まる陽光が、彼の頬に影を落とす。
その姿は威圧感よりも、どこか孤独を纏っているように見えた。
「お呼びでしょうか。」
「座れ。時間を取らせてすまない。」
「いえ、構いません。」
リリアナが着席すると、彼は机の引き出しから一枚の紙を取り出した。
「これは、王都からの正式な通達だ。君の名が王国の婚約破棄記録として登録された。以後、公爵家としては君を“保護対象”として扱う。」
「保護対象……?」
「簡単にいえば、滞在中の安全管理をこちらが引き受けるということだ。」
「そんな……そこまでのご厚意をいただくわけには。」
リリアナが慌てて頭を下げると、セドリックはわずかに眉を寄せた。
「厚意ではない。現に、王家内部で異様な噂が流れている。王太子の周囲で何者かが情報を操作しているようだ。」
「操作……?」
「君が“陰で王家を陥れようとした”などという、くだらない話だ。」
リリアナは息を呑んだ。
「……そんなこと、私は一度も。」
「わかっている。だからこそ、ここに匿う。王都の連中が何を信じようと、俺には関係ない。」
言い切るその声は冷たいが、不思議と安心感を与えた。
誰も信じてくれなかった自分の言葉を、彼だけが真正面から否定してくれた。
「……ありがとうございます。」
涙声になりそうな喉を抑え、リリアナは微笑んだ。
セドリックは短く息を吐く。
窓の向こうで雪が強く降り出していた。
「この屋敷では、何を言われようと自由にしていい。ただし――」
彼はゆっくりと彼女を見た。
その銀の瞳が、まるで氷のように澄んでいる。
「嘘をつくな。俺は嘘が何より嫌いだ。」
「……わかりました。」
しばし沈黙。
再び雪の音だけが部屋を包む。
やがて、セドリックが小さく呟くように言った。
「君は、もっと笑った方がいい。」
「えっ……?」
「その顔では、この国の冬が余計に冷える。」
唐突な言葉に、リリアナは驚きつつも思わず笑ってしまった。
小さな笑み。それは彼の言葉どおり雪の冷たさを和らげた。
セドリックは視線をそらし、窓の外を見やる。
その横顔にはほんのかすかな微笑が浮かんでいた。
リリアナの胸に、初めて静かな温もりが宿った。
続く
リリアナはまだ、その広い屋敷の空気になじめずにいた。
城館は静かで、美しく、整然としている。
しかしその整いすぎた静寂が、時に胸を締めつけた。
窓辺を流れる風は冷たく澄み、まるでこの国そのものを象徴しているようだった。
何かを拒むように厳格で、そしてどこか澄みきっている。
「リリアナ様、朝食の準備が整いました」と執事ロイが告げる。
「ありがとう、すぐに行きます。」
リリアナは鏡の前で軽く髪を整え、深く息を吸った。
統治者の屋敷とは思えぬほど、生活音がほとんどしないこの邸内で、彼女の足音だけが小さく響いていた。
食堂の扉を開けると、広々とした白の空間の奥に、黒衣の人物の背中が見えた。
セドリック・エルシャルト――この地の主であり、先日宿で命を救ってくれた男。
その背に漂う空気が一瞬で周囲を支配している。
誰かが息をする音さえ遠のくような、圧倒的な存在。
「おはようございます、公爵様。」
リリアナが丁寧に挨拶すると、セドリックはわずかに顔を向けた。
「おはよう。眠れたか。」
淡々とした声だったが、その鋭い銀の瞳は彼女の細かな様子を観察している。
微笑を返しながらも、リリアナの心臓はわずかに早鐘を打った。
「はい。こちらの空気には徐々に慣れてきました。」
「そうか。それならいい。」
セドリックは短く応じ、手元の書類を閉じる。
「一応聞いておくが、体に不自由はないな? 王都からの道中で疲れが残っているかと思っていたが。」
「ええ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」
彼は頷くと、視線を食堂の窓の外へ流す。雪の降りしきる中庭。
「この国では、弱さを隠すことを美徳としない。助けが必要なら言え。それを恥じる必要はない。」
その言葉に、リリアナはふっと息をのんだ。
王都の人々のように、体裁を整えるような言い方ではない。
ただ、事実としての真実を告げる言葉だった。
それが何故か、心の奥に温かく残った。
「ありがとうございます。覚えておきますわ。」
リリアナは軽く微笑んだ。
セドリックの瞳が、一瞬わずかに柔らいだ気がした。
しかしその直後、扉が開き、執事ロイが一礼して言った。
「閣下。本日、外から視察の使者が来訪される予定です。」
「もうそんな時期か。……わかった。」
彼がそう言って立ち上がると、空気が再び張りつめる。
「君は昼を過ぎたら館を案内されるといい。ロイに任せる。」
「はい。ありがとうございます。」
リリアナが頭を下げると、セドリックは何も言わず、ただ一瞥だけ残して部屋を出ていった。
その背に漂う冷気が、彼の噂を思い出させる。
――冷徹無慈悲、情を持たぬ公爵。
けれど、宿で彼が助けてくれた夜の光景を考えると、その言葉が本当に正しいのか、リリアナには分からなくなっていた。
***
屋敷の回廊を案内されながら、リリアナは各部屋を見て回った。
図書室、温室、中庭、調理棟。
どこも整然と清潔で、秩序の美がありながらも、一切の遊びがない。
温室で花々が並ぶ光景は美しいのに、不思議と温かみではなく静けさを感じた。
「お嬢様、こちらの花壇は、閣下が直々に配置を指示されたものなのです。」
「公爵様が……花を?」
「はい。無骨そうに見えて、何事にも秩序を求められる方でして。咲く時期や色の配置まで、緻密に計算されておられます。」
思わず微笑がこぼれる。
あの冷たい瞳の奥に、そんな几帳面な一面があるとは思わなかった。
風が吹いて、温室の中の花弁がひらりと舞う。
淡い白薔薇の香りが漂い、リリアナは思わず目を閉じた。
――薔薇。婚約破棄の夜、散った花弁の記憶がよみがえる。
甘くも苦しい、愛の終わりの象徴。
しかし今のこの香りは違った。
刺のない白薔薇。
痛みではなく、静かな祈りを思わせる。
「……この白薔薇は、何という名ですか?」
「“レグナ・セレスティア”。閣下がお好きな花で、“揺るぎなき誓い”という意味を持ちます。」
「誓い……。」
その言葉を胸の奥で繰り返す。
王太子アルベルトの偽りの誓いが頭をよぎり、胸に鈍い痛みが走る。
(もう誓いなんて、信じないと決めたのに……。)
小さく息を吐きながらも、リリアナは掌で花弁をそっと撫でた。
冷たくも滑らかな手触りが、妙に心地よかった。
***
午後、部屋に戻ると机の上に一通の封筒が置かれていた。
執事ロイの筆跡で、「閣下より」とだけ書かれている。
リリアナは少し戸惑いながら封を開けた。
中には短い一文。
『夕刻、執務室まで来られたい。話がある。――S・E』
胸の鼓動が高鳴る。
何の用だろう。滞在の条件に関する話か、それとも……。
様々な思考が交錯する中、リリアナは深呼吸し、立ち上がった。
***
夕暮れ時、執務室の扉の前でノックをすると、奥から「入れ」と低い声が返る。
扉を開けると、セドリックが大きな書棚の前に立ち、腕を組んでいた。
赤褐色に染まる陽光が、彼の頬に影を落とす。
その姿は威圧感よりも、どこか孤独を纏っているように見えた。
「お呼びでしょうか。」
「座れ。時間を取らせてすまない。」
「いえ、構いません。」
リリアナが着席すると、彼は机の引き出しから一枚の紙を取り出した。
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「操作……?」
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誰も信じてくれなかった自分の言葉を、彼だけが真正面から否定してくれた。
「……ありがとうございます。」
涙声になりそうな喉を抑え、リリアナは微笑んだ。
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彼はゆっくりと彼女を見た。
その銀の瞳が、まるで氷のように澄んでいる。
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「……わかりました。」
しばし沈黙。
再び雪の音だけが部屋を包む。
やがて、セドリックが小さく呟くように言った。
「君は、もっと笑った方がいい。」
「えっ……?」
「その顔では、この国の冬が余計に冷える。」
唐突な言葉に、リリアナは驚きつつも思わず笑ってしまった。
小さな笑み。それは彼の言葉どおり雪の冷たさを和らげた。
セドリックは視線をそらし、窓の外を見やる。
その横顔にはほんのかすかな微笑が浮かんでいた。
リリアナの胸に、初めて静かな温もりが宿った。
続く
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