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1章
5 兄との会話①
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次の日、アリシアの休憩時間を狙ってレイヴンはアリシアに会いに行った。
お妃教育が始まった当初から、母には休憩時間にアリシアを訪ねて親交を深めるよう言われていたけれど、昨日まではその必要性を感じていなかったレイヴンは、これまでアリシアの部屋を訪れたことがない。
アリシアの部屋までもう少しというところで、その部屋に入っていく人物が見えた。
アリシアの兄のレオナルドである。
3つ年上のレオナルドはレイヴンから見ても優秀で、最近はルトビア公爵の後継者となるべく仕事を手伝っている。
本人は、「雑用係のようなものですよ」などと言っているが、レオナルドはまだ11歳なのだ。雑用が出来れば十分である。
また、年が近く優秀な者が傍にいた方がレイヴンも勉強に身が入るだろうと、語学や歴史等の座学は一緒に受けている。
レイヴンの学友のようなもので、休憩時間に習ったばかりの外国語で雑談をしたりしていたので身に付けるのにとても役立った。
レオナルドも妹の休憩時間に様子を見に来たのか。
今まで自分が取っていた態度を知られるのは気まずいが、レオナルドがいた方が会話がし易いだろうと思うと少し気持ちが軽くなった。
「お兄様!」
レオナルドが入室すると室内から明るい声が聞こえた。
アリシアの声だ。
アリシアのあんな明るい声を聞いたのは初めてだった。
いや、初めてではない。
アリシアが婚約者に決まったと告げたあの日。レイヴンが冷たい声で辛辣な言葉を投げつけるまでは、明るい声で色々と話し掛けてくれていた。
だけどその後、母に呼ばれて参加するようになったお茶会では、いつも沈んだ顔をしていてアリシアから話し掛けられることはなかった。
アリシアは未だ慣れない王宮で、兄に会えたことが嬉しかった。
駆け寄って抱き着きたかったのに、これまで3時間以上のダンスレッスンで足が痛んでおかしな歩き方になってしまった。
アリシアを抱きとめたレオナルドは当然気がつく。
ひょいと抱き上げると、元の椅子へアリシアを座らせた。
「どうしたの?」
同じ目の高さになるように膝をついて問いかける。
アリシアは俯いて泣きそうな顔になった。
「ダンスのレッスンで足が痛いの」
「そうなのか」
妃教育を受けるようになってアリシアの所作は格段に美しくなった。歩き方も洗礼されて、少しくらい足が辛くてもわからないように隠せてしまう。
そのアリシアが明らかにおかしな動きをした。余程痛むのだろう。
最もアリシアがどんなに上手く隠したとしても、レオナルドには見抜く自信があるのだが。
「今日この後は何をするの?」
「アルスタ語と歴史のお勉強よ」
アルスタとは交流の深い隣国だ。
レオナルドもレイヴンと共に同じような講義を受けていたので、どんな内容なのか大体想像がつく。
時間から考えると今日はそれで終わりだろう。
「王妃様のお茶会はあるの?」
アリシアは小さく頭を振った。
「それじゃあ今日は一緒に帰ろう。馬車で待ってるからそこまでは頑張ろう。屋敷についたら僕が抱っこしてアリシアの部屋まで運んでいくよ。お医者様を呼んでおくから診てもらおうね。その後もずっと僕が運んであげるから、帰ったらもう歩かなくていいよ。ダンスレッスンは明日もあるんだろう?」
レオナルドがそういうと、アリシアはびっくりした顔でレオナルドを見た。
「本当に?帰ったら歩かなくていいの?」
レオナルドは安心させるようにアリシアの頭を撫でてにっこりと笑った。
「だけど私、赤ちゃんじゃないわ。はしたないって怒られちゃう」
レオナルドはアリシアを抱き締めた。
「アリシアはいつも頑張ってるだろう?今日も頑張って足を痛めてしまったんだ。そんなアリシアにはしたないなんて誰が言うの?そんな人うちの屋敷にはいないよ」
だけど王宮は違う。ここではアリシアを抱き上げて歩くわけにはいかない。だから馬車まではどんなに辛くても自分で歩かなければならない。
「馬車まではもうちょっと頑張ってね」
アリシアはコクンと頷いた。
泣きそうなのを必死で堪えている。
泣いてしまったらすぐに気づかれて怒られるのだ。
レオナルドは妹が可哀想でならなかった。
お妃教育が始まった当初から、母には休憩時間にアリシアを訪ねて親交を深めるよう言われていたけれど、昨日まではその必要性を感じていなかったレイヴンは、これまでアリシアの部屋を訪れたことがない。
アリシアの部屋までもう少しというところで、その部屋に入っていく人物が見えた。
アリシアの兄のレオナルドである。
3つ年上のレオナルドはレイヴンから見ても優秀で、最近はルトビア公爵の後継者となるべく仕事を手伝っている。
本人は、「雑用係のようなものですよ」などと言っているが、レオナルドはまだ11歳なのだ。雑用が出来れば十分である。
また、年が近く優秀な者が傍にいた方がレイヴンも勉強に身が入るだろうと、語学や歴史等の座学は一緒に受けている。
レイヴンの学友のようなもので、休憩時間に習ったばかりの外国語で雑談をしたりしていたので身に付けるのにとても役立った。
レオナルドも妹の休憩時間に様子を見に来たのか。
今まで自分が取っていた態度を知られるのは気まずいが、レオナルドがいた方が会話がし易いだろうと思うと少し気持ちが軽くなった。
「お兄様!」
レオナルドが入室すると室内から明るい声が聞こえた。
アリシアの声だ。
アリシアのあんな明るい声を聞いたのは初めてだった。
いや、初めてではない。
アリシアが婚約者に決まったと告げたあの日。レイヴンが冷たい声で辛辣な言葉を投げつけるまでは、明るい声で色々と話し掛けてくれていた。
だけどその後、母に呼ばれて参加するようになったお茶会では、いつも沈んだ顔をしていてアリシアから話し掛けられることはなかった。
アリシアは未だ慣れない王宮で、兄に会えたことが嬉しかった。
駆け寄って抱き着きたかったのに、これまで3時間以上のダンスレッスンで足が痛んでおかしな歩き方になってしまった。
アリシアを抱きとめたレオナルドは当然気がつく。
ひょいと抱き上げると、元の椅子へアリシアを座らせた。
「どうしたの?」
同じ目の高さになるように膝をついて問いかける。
アリシアは俯いて泣きそうな顔になった。
「ダンスのレッスンで足が痛いの」
「そうなのか」
妃教育を受けるようになってアリシアの所作は格段に美しくなった。歩き方も洗礼されて、少しくらい足が辛くてもわからないように隠せてしまう。
そのアリシアが明らかにおかしな動きをした。余程痛むのだろう。
最もアリシアがどんなに上手く隠したとしても、レオナルドには見抜く自信があるのだが。
「今日この後は何をするの?」
「アルスタ語と歴史のお勉強よ」
アルスタとは交流の深い隣国だ。
レオナルドもレイヴンと共に同じような講義を受けていたので、どんな内容なのか大体想像がつく。
時間から考えると今日はそれで終わりだろう。
「王妃様のお茶会はあるの?」
アリシアは小さく頭を振った。
「それじゃあ今日は一緒に帰ろう。馬車で待ってるからそこまでは頑張ろう。屋敷についたら僕が抱っこしてアリシアの部屋まで運んでいくよ。お医者様を呼んでおくから診てもらおうね。その後もずっと僕が運んであげるから、帰ったらもう歩かなくていいよ。ダンスレッスンは明日もあるんだろう?」
レオナルドがそういうと、アリシアはびっくりした顔でレオナルドを見た。
「本当に?帰ったら歩かなくていいの?」
レオナルドは安心させるようにアリシアの頭を撫でてにっこりと笑った。
「だけど私、赤ちゃんじゃないわ。はしたないって怒られちゃう」
レオナルドはアリシアを抱き締めた。
「アリシアはいつも頑張ってるだろう?今日も頑張って足を痛めてしまったんだ。そんなアリシアにはしたないなんて誰が言うの?そんな人うちの屋敷にはいないよ」
だけど王宮は違う。ここではアリシアを抱き上げて歩くわけにはいかない。だから馬車まではどんなに辛くても自分で歩かなければならない。
「馬車まではもうちょっと頑張ってね」
アリシアはコクンと頷いた。
泣きそうなのを必死で堪えている。
泣いてしまったらすぐに気づかれて怒られるのだ。
レオナルドは妹が可哀想でならなかった。
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