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3章
9 新たな約束③
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「そうだね。僕にはアリシアだけだから、レオナルドが誰を選んでも、それは僕には関係のない令嬢だ」
「え?」
レイヴンの言葉にアリシアは目を瞬かせる。
確かに令嬢がレイヴンを狙っていたとしても、レイヴンが相手にしなければ、それはレイヴンに関係のない令嬢だった。
「まあ、そうですわね」
思わず笑みが零れる。
強く決意したのは無駄だったようだ。
アリシアの笑顔を見たレイヴンも安心したように微笑んだ。
「だけど僕は君に謝らなければならないことがある」
「え?」
突然真剣な顔で見つめられて、アリシアは戸惑った。
「アリシアが慰問に行く時の護衛のことだよ」
アリシアの顔が赤くなる。
「あれは…。私の心得違いだったのですわ」
「うん…そうだね。だけど僕も間違っていた」
レイヴンの手が赤くなったアリシアの頬に触れる。
「アリシアがデミオン殿に、『本当に愛しているなら相手が不快に思うことでも教えるはずだ』と言っただろう?『教えないのは愛していないからだ』って。あれから僕はずっと考えていたんだ」
アリシアを見つめるレイヴンの顔に苦渋が滲んでいる。
「僕はアリシアが嫁いできた時から町に行くのに護衛が少なすぎることも、毒見をしないことも危険だと思っていた。止めさせたかった。だけどそれをアリシアに伝えなかった。あの時僕は、『アリシアが慰問活動を大切にしているから止められなかった』と言ったけれど、本当は違う。アリシアが不快に思うことを言って、嫌われるのが怖かったからだ。危険だと思っていたのに、僕はアリシアの安全より自分の感情を優先した。デミオン殿と同じだ」
「それは…」
アリシアは言葉に詰まる。
確かにアリシアは思い違いをしていたが、レイヴンはそれを知っていた。
知っていたのに教えなかった。
相手のことを思うなら、庭園の花を入れ替えたり苺を取り寄せたりするよりも、もっと重要なことだ。
だけど。
「レイヴン様は私に何かあっても構わないと思っておられたのですか?」
「そんなはずないだろう?!もしアリシアの身に何か起きていたらと思うゾッとしたよ。だからこそわかった。アリシアを愛しているなら、言わなければならなかった。それで嫌われたとしても言うべきだった。僕が自分の感情を優先したことでアリシアが怪我をしていたら、僕は僕を許せない」
繋いだ手が震えている。
アリシアは反対の手でその手を包み込んだ。
「私はそれを信じます。あのことはお互いに考えが足りなかったのですわ。時間は掛かったけれど、あのままでは危険だとレイヴン様は教えてくださいました。私はもう学びました。そしてレイヴン様も学ばれました。お互いに反省をして、それで良いことに致しませんか?私もこれからはもっとレイヴン様に相談を致します。だからレイヴン様は、本当に必要だと思うことはどんなことであっても教えてください」
後悔が顔に滲んでいるけれど、その視線を逸らすことなくレイヴンは頷いた。
頬に触れていた手が背中にまわる。
「愛している、アリシア。君が無事で本当に良かった。僕が間違っていると思う時は教えて欲しい。アリシアが何を言ったとしても、僕がアリシアを嫌いになることは絶対にない」
アリシアはまだレイヴンを愛しているのかわからない。
だけど特別に思う気持ちは芽生えてきている。
レイヴンが危険な目にあうのは防ぎたいし、破滅に向かう道を歩ませたくもない。
だからアリシアは頷いた。
これは相手の我儘を聞くことよりも大切なことである。
「え?」
レイヴンの言葉にアリシアは目を瞬かせる。
確かに令嬢がレイヴンを狙っていたとしても、レイヴンが相手にしなければ、それはレイヴンに関係のない令嬢だった。
「まあ、そうですわね」
思わず笑みが零れる。
強く決意したのは無駄だったようだ。
アリシアの笑顔を見たレイヴンも安心したように微笑んだ。
「だけど僕は君に謝らなければならないことがある」
「え?」
突然真剣な顔で見つめられて、アリシアは戸惑った。
「アリシアが慰問に行く時の護衛のことだよ」
アリシアの顔が赤くなる。
「あれは…。私の心得違いだったのですわ」
「うん…そうだね。だけど僕も間違っていた」
レイヴンの手が赤くなったアリシアの頬に触れる。
「アリシアがデミオン殿に、『本当に愛しているなら相手が不快に思うことでも教えるはずだ』と言っただろう?『教えないのは愛していないからだ』って。あれから僕はずっと考えていたんだ」
アリシアを見つめるレイヴンの顔に苦渋が滲んでいる。
「僕はアリシアが嫁いできた時から町に行くのに護衛が少なすぎることも、毒見をしないことも危険だと思っていた。止めさせたかった。だけどそれをアリシアに伝えなかった。あの時僕は、『アリシアが慰問活動を大切にしているから止められなかった』と言ったけれど、本当は違う。アリシアが不快に思うことを言って、嫌われるのが怖かったからだ。危険だと思っていたのに、僕はアリシアの安全より自分の感情を優先した。デミオン殿と同じだ」
「それは…」
アリシアは言葉に詰まる。
確かにアリシアは思い違いをしていたが、レイヴンはそれを知っていた。
知っていたのに教えなかった。
相手のことを思うなら、庭園の花を入れ替えたり苺を取り寄せたりするよりも、もっと重要なことだ。
だけど。
「レイヴン様は私に何かあっても構わないと思っておられたのですか?」
「そんなはずないだろう?!もしアリシアの身に何か起きていたらと思うゾッとしたよ。だからこそわかった。アリシアを愛しているなら、言わなければならなかった。それで嫌われたとしても言うべきだった。僕が自分の感情を優先したことでアリシアが怪我をしていたら、僕は僕を許せない」
繋いだ手が震えている。
アリシアは反対の手でその手を包み込んだ。
「私はそれを信じます。あのことはお互いに考えが足りなかったのですわ。時間は掛かったけれど、あのままでは危険だとレイヴン様は教えてくださいました。私はもう学びました。そしてレイヴン様も学ばれました。お互いに反省をして、それで良いことに致しませんか?私もこれからはもっとレイヴン様に相談を致します。だからレイヴン様は、本当に必要だと思うことはどんなことであっても教えてください」
後悔が顔に滲んでいるけれど、その視線を逸らすことなくレイヴンは頷いた。
頬に触れていた手が背中にまわる。
「愛している、アリシア。君が無事で本当に良かった。僕が間違っていると思う時は教えて欲しい。アリシアが何を言ったとしても、僕がアリシアを嫌いになることは絶対にない」
アリシアはまだレイヴンを愛しているのかわからない。
だけど特別に思う気持ちは芽生えてきている。
レイヴンが危険な目にあうのは防ぎたいし、破滅に向かう道を歩ませたくもない。
だからアリシアは頷いた。
これは相手の我儘を聞くことよりも大切なことである。
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