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3章
54 方針の決定③
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「ちょっとお待ちくださいませ。お兄様とジェーン様の噂は、お兄様とお義姉様を仲違いさせる為に流されたということですの?」
アリシアはカナリーへ目を向けた。
レオナルドはレイヴンとこの話をしたと言っていた。アリシアはジェーンやノティスと同じ話をしていた。
どちらにも入っていないカナリーは、1人だけ話について来れていないのだ。
アリシアはカナリーへ、昼間と同じ話を繰り返して聞かせた。
「…そういうことなのですね」
話を聞き終えたカナリーは厳しい顔をしていた。
カナリーもレイヴンの側妃の座を狙う者の存在は知っている。
その者たちは、ただ側妃になることを望んでいるわけではない。レイヴンの子どもを生み、世継ぎにすることを望んでいるのだ。
「わかりました。私は全力でお義姉様の味方を致しますわ」
力強く言われた言葉に、アリシアとレオナルドは顔を見合わせる。
「カナリー殿下?何もしなくてもよろしいのですよ?」
「お兄様とお義姉様はレオナルド殿が言われた様に、仲睦まじくされていればよろしいですわ。そして私とも仲良くして下さいませ。第一王女と仲が良いというのは、それだけでお義姉様の立場を強くしますのよ?」
口には出さないが、カナリーが考えているのはレイヴンが側妃を迎えた時のことだ。
カナリーの父親には5人の側妃がいる。
カナリーは、父の心が側妃へ移った時の母の苦悩を知っていた。レイヴンの王太子位さえ危ぶまれたことがあるのだ。
側妃が権力を持つ一番の要因はレイヴンの寵愛を受けることだが、後ろ盾となる者の後押しも重要となる。
もしレイヴンが他に側妃を迎えたとしても、後ろ盾が強力であれば圧力をかけてレイヴンを殿舎へ呼ぶこともできるのだ。
「僕は側妃を娶ったりしない」
カナリーの心を読んだようにレイヴンがそう言った。
兄妹として同じ両親を見てきているから、わかるのかもしれない。
「アリシアを愛している。側妃を迎えるつもりはない」
「――それがよろしいわ。それでもお義姉様の後ろ盾を強化するのは、悪いことではないわ」
それについてはレイヴンにも異論はなかった。むしろアリシアの立場を強くするのは、レイヴンが願っていることだ。
それでなくてもアリシアには家族に馴染んで欲しいと思っている。
「それと…申し訳ありませんが、ジェーン様にはお兄様と距離を取っていただけたらと思います。お義姉様と仲がよろしいのは良いのですが、お兄様のお傍におられると噂がおさまらないのではないでしょうか」
「カナリー殿下が仰ることはわかるのですが、ジェーンが身を引いたと思われるのは困るのです」
答えたのはアリシアだった。
「カナリー殿下が仰る通り、ジェーンがレイヴン様と距離を取れば、これ以上噂になることはないでしょう。ですが人は、『ジェーンがレイヴン様と別れた』、『私を慮って身を引いた』、と受け取ります。2人の間には何も無いにも関わらず、ジェーンはレイヴン様のお手付きだと見られることになるのです。これから先、ジェーンが新しい婚約者を探して結婚し、次期侯爵もしくは侯爵夫人として社交界へ出る時に、ジェーンが何と言われるか…。お分かりになりますわね?」
そう言われたカナリーは、俯いて答えることができなかった。
レイヴンとジェーンの噂を消すことが重要だと考えていたカナリーは、ジェーンの将来を考えていなかった。
王太子と噂を立てられた未婚の女性が社交界で何と言われるかは想像できる。
事実ではないのに、ジェーンの体面を酷く傷つけることになるのだ。
アリシアはカナリーへ目を向けた。
レオナルドはレイヴンとこの話をしたと言っていた。アリシアはジェーンやノティスと同じ話をしていた。
どちらにも入っていないカナリーは、1人だけ話について来れていないのだ。
アリシアはカナリーへ、昼間と同じ話を繰り返して聞かせた。
「…そういうことなのですね」
話を聞き終えたカナリーは厳しい顔をしていた。
カナリーもレイヴンの側妃の座を狙う者の存在は知っている。
その者たちは、ただ側妃になることを望んでいるわけではない。レイヴンの子どもを生み、世継ぎにすることを望んでいるのだ。
「わかりました。私は全力でお義姉様の味方を致しますわ」
力強く言われた言葉に、アリシアとレオナルドは顔を見合わせる。
「カナリー殿下?何もしなくてもよろしいのですよ?」
「お兄様とお義姉様はレオナルド殿が言われた様に、仲睦まじくされていればよろしいですわ。そして私とも仲良くして下さいませ。第一王女と仲が良いというのは、それだけでお義姉様の立場を強くしますのよ?」
口には出さないが、カナリーが考えているのはレイヴンが側妃を迎えた時のことだ。
カナリーの父親には5人の側妃がいる。
カナリーは、父の心が側妃へ移った時の母の苦悩を知っていた。レイヴンの王太子位さえ危ぶまれたことがあるのだ。
側妃が権力を持つ一番の要因はレイヴンの寵愛を受けることだが、後ろ盾となる者の後押しも重要となる。
もしレイヴンが他に側妃を迎えたとしても、後ろ盾が強力であれば圧力をかけてレイヴンを殿舎へ呼ぶこともできるのだ。
「僕は側妃を娶ったりしない」
カナリーの心を読んだようにレイヴンがそう言った。
兄妹として同じ両親を見てきているから、わかるのかもしれない。
「アリシアを愛している。側妃を迎えるつもりはない」
「――それがよろしいわ。それでもお義姉様の後ろ盾を強化するのは、悪いことではないわ」
それについてはレイヴンにも異論はなかった。むしろアリシアの立場を強くするのは、レイヴンが願っていることだ。
それでなくてもアリシアには家族に馴染んで欲しいと思っている。
「それと…申し訳ありませんが、ジェーン様にはお兄様と距離を取っていただけたらと思います。お義姉様と仲がよろしいのは良いのですが、お兄様のお傍におられると噂がおさまらないのではないでしょうか」
「カナリー殿下が仰ることはわかるのですが、ジェーンが身を引いたと思われるのは困るのです」
答えたのはアリシアだった。
「カナリー殿下が仰る通り、ジェーンがレイヴン様と距離を取れば、これ以上噂になることはないでしょう。ですが人は、『ジェーンがレイヴン様と別れた』、『私を慮って身を引いた』、と受け取ります。2人の間には何も無いにも関わらず、ジェーンはレイヴン様のお手付きだと見られることになるのです。これから先、ジェーンが新しい婚約者を探して結婚し、次期侯爵もしくは侯爵夫人として社交界へ出る時に、ジェーンが何と言われるか…。お分かりになりますわね?」
そう言われたカナリーは、俯いて答えることができなかった。
レイヴンとジェーンの噂を消すことが重要だと考えていたカナリーは、ジェーンの将来を考えていなかった。
王太子と噂を立てられた未婚の女性が社交界で何と言われるかは想像できる。
事実ではないのに、ジェーンの体面を酷く傷つけることになるのだ。
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