【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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3章

61 国王の決定②

 夕方、なんとか予定されていた執務を終えることが出来たアリシアは、大きく息をついた。
 国王のところから戻ったレイヴンの話を思い出すと気持ちが暗くなるが、それは仕方がない。
 ジェーンが議会で話をすることになったのだ。

 国王も事の深刻さに気付いていて、事態を早急に収めるべきだと考えていたらしい。
 事件の当事者であるジェーンが議会で話をするというのは、国王にとって願ってもないことである。
 傷を見せるか見せないかの判断は、ジェーンに任せられることになった。

 アリシアはどちらに決まったとしても受け入れると決めていた。
 それなのに気分が沈んでいく。
 そんなアリシアのところへ侍従がレイヴンからの贈り物を届けに来た。

「本日の夕食時に着て欲しいそうです」

「え?でも、これは…」

 届けられたのは薄いピンクのワンピースだ。
 ワンピースはコルセットをつけないで着る軽装である。
 特別な理由がない限りワンピースで食堂へ行くことはできない。

「今日もこちらの部屋で夕食を摂りたいと仰っていましたよ」

 戸惑うアリシアに侍従はにっこり笑ってそう言うと、一礼して部屋を出ていった。

 昨日のレイヴンの言葉が頭に浮かぶ。
 レイヴンはコルセットをつけない楽な服を着ても良いと言っていた。
 だけどアリシアがそれを選ぶのは抵抗があると知っているから、レイヴンからの「お願い」として贈ってきたのだろう。

 届けられたワンピースは、レースや飾りも少なく一見簡素に見える。だけどスカートの裾や襟元、袖口に若草色や黄色で細かい刺繍がしてあり、手の込んだ良い品だと察せられた。
 そしてあまりアリシアが選ぶことのない可愛らしいイメージのものだ。

「このブローチをつけてもらえるかしら」

 着付けてもらった後、アリシアは自ら取り出したブローチをエレノアへ手渡した。
 花束を模した立体的なブローチで、ピンクや黄色、青色の花が束ねられている。
 
「まあ、可愛らしいブローチですね」

 アリシアの装飾品を管理しているエレノアは、見覚えのないブローチに驚いている。
 アリシアの持ち物にしては幼いと思っているのかもしれない。
 それでも言われた通りにアリシアの胸元へつけると、感嘆の声を上げた。

「とてもよくお似合いですわ。妃殿下はこういった可愛らしいものもお似合いになりますのね」

「本当ね。初めて使うのだけど、私のことをよくわかってらっしゃるのだわ」

「まあ、そちらも殿下からの贈り物なのですか?」

 目を丸くするエレノアに、アリシアは言葉ではなく微笑みで答えた。

 しばらくすると扉を叩く音がして、レイヴンの訪れが告げられる。
 部屋へ入ってきたレイヴンは、ワンピース姿のアリシアを見て相好を崩した。

「とても可愛いよ、アリシア。ワンピースがよく似合ってる」

 そう言いながら近づいてきたレイヴンは、胸元のブローチに気がついて動きを止めた。

「そのブローチは…」

 レイヴンはそのブローチに見覚えがあった。
 アリシアを想って用意したのに贈れなかった誕生日の贈り物である。
 捨てることも出来ずに保管していたそれらのものを、アリシアが欲しいと言ってくれたので最近やっと贈ることができたのだ。
 このブローチはアリシアが12歳の時に選んだものである。
 どう考えても幼すぎるデザインのそれは、とても使いどころがないと思っていたのだ。

「このワンピースになら合うと思ったのですが…いかがでしょうか」

 アリシアがレイヴンを窺うようにしてはにかんでいる。
 恥じらうようなその笑顔に、レイヴンは気がついたらアリシアを思い切り抱き締めていた。




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