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3章
62 散歩
それからジェーンが議会に出る日までの数日はあっという間に過ぎた。
その間ジェーンがアリシアのところへ来ることはなかった。
ジェーンからは、議会の日に研修を休むことになるので休憩時間や夜の時間にその分の講義を受けることになったと知らせが来ている。
それは本当のことなのだろうが、アリシアの葛藤をわかっているジェーンは、顔を合わせればアリシアが更に悩むと知っているので会わない様にしてくれているのだ。
同じくアリシアの葛藤をわかっているレイヴンからは徹底的に甘やかされた。
執務以外の時間は常に一緒にいたし、毎日贈り物が届けられる。
以前の様に商人が来るのではなく、レイヴンが選んだものだ。
「やっぱり自分が選んだものを身につけてくれた方が嬉しいとわかったから」と照れくさそうに笑っていた。
それとは別に毎日新しいワンピースが届けられ、夕食はアリシアの部屋で2人きりで摂る。
2人で散歩をする時は、王太子宮ではなくレイヴンの執務室が近い中庭の方へ行く。
「2人が仲睦まじく過ごす様子をさり気なくアピールした方が良い」というレオナルドの助言に従ってのことだ。
許可された者しか入ることができない王太子宮の庭園とは違って執務棟の辺りは王宮で仕事をしている者や所用で登城している者たちが行き来している。
王太子宮で過ごしていてもそこで働く侍女やメイドを通じて2人の様子は社交界へ伝わっているのだが、やはり2人が仲睦まじい様子を直接見せた方が効果が高いということだ。
王太子宮の庭園を歩く時は、通常のエスコートではなく指を絡めて手を繋いで歩く。
人目につく場所ではそんな手の繋ぎ方をすることができないのでレイヴンは寂しそうにしているが、それでもアリシアへ向けられる視線は甘い。時々立ち止まって抱き寄せられたり、額に口づけられたりもする。
その度にアリシアは小声で抗議をするが、レイヴンは「今は公務の時間じゃないよ」と笑っている。
今のレイヴンは王太子ではなく、アリシアの夫なのだと言いたいらしい。
そんな2人を見かけた貴族たちは目を見開いたり、顔を寄せ合いひそひそ話をしたりしている。
社交界にはアリシアへの寵愛が本物だと信じている者もいれば、レイヴンとジェーンの噂を信じている者もいる。そして、その噂を利用しようとしている者もいる。
すれ違う相手がどちらなのか、2人が気にする必要はない。
レイヴンとアリシアは行き会った貴族たちの挨拶を受けながら親しそうに笑い合っていた。
「………?」
アリシアはいくつもの花壇の向こう、レイヴンの執務室に近い回廊の柱の陰からこちらをじっと見ているキャロル・グーリッド伯爵令嬢の姿が見えた気がした。
だけどただの伯爵令嬢であるキャロルが登城する理由も執務棟にいるような理由もない。
「どうかしたの?」
レイヴンに訊かれたアリシアは、「なんでもありませんわ」と笑って答えた。
キャロルの気持ちを知るアリシアは、なぜかレイヴンにはキャロルの話をしたくないと感じていた。
そうしている内に議会の日になった。
議場は王宮から一刻(約30分)程のところにある。
いつもは見送りに出ることなどないアリシアだが、不安な気持ちのまま馬車止まりまでレイヴンについて来ていた。
レイヴンはそんなアリシアを安心させようと明るく振る舞う。
「ルトビア公爵もいるし、レオナルドもいる。大丈夫だよ」
アリシアをぎゅっと抱き締めると笑顔のまま馬車へ乗り込んだ。
遠ざかる馬車をアリシアは不安な気持ちのまま見送った。
その間ジェーンがアリシアのところへ来ることはなかった。
ジェーンからは、議会の日に研修を休むことになるので休憩時間や夜の時間にその分の講義を受けることになったと知らせが来ている。
それは本当のことなのだろうが、アリシアの葛藤をわかっているジェーンは、顔を合わせればアリシアが更に悩むと知っているので会わない様にしてくれているのだ。
同じくアリシアの葛藤をわかっているレイヴンからは徹底的に甘やかされた。
執務以外の時間は常に一緒にいたし、毎日贈り物が届けられる。
以前の様に商人が来るのではなく、レイヴンが選んだものだ。
「やっぱり自分が選んだものを身につけてくれた方が嬉しいとわかったから」と照れくさそうに笑っていた。
それとは別に毎日新しいワンピースが届けられ、夕食はアリシアの部屋で2人きりで摂る。
2人で散歩をする時は、王太子宮ではなくレイヴンの執務室が近い中庭の方へ行く。
「2人が仲睦まじく過ごす様子をさり気なくアピールした方が良い」というレオナルドの助言に従ってのことだ。
許可された者しか入ることができない王太子宮の庭園とは違って執務棟の辺りは王宮で仕事をしている者や所用で登城している者たちが行き来している。
王太子宮で過ごしていてもそこで働く侍女やメイドを通じて2人の様子は社交界へ伝わっているのだが、やはり2人が仲睦まじい様子を直接見せた方が効果が高いということだ。
王太子宮の庭園を歩く時は、通常のエスコートではなく指を絡めて手を繋いで歩く。
人目につく場所ではそんな手の繋ぎ方をすることができないのでレイヴンは寂しそうにしているが、それでもアリシアへ向けられる視線は甘い。時々立ち止まって抱き寄せられたり、額に口づけられたりもする。
その度にアリシアは小声で抗議をするが、レイヴンは「今は公務の時間じゃないよ」と笑っている。
今のレイヴンは王太子ではなく、アリシアの夫なのだと言いたいらしい。
そんな2人を見かけた貴族たちは目を見開いたり、顔を寄せ合いひそひそ話をしたりしている。
社交界にはアリシアへの寵愛が本物だと信じている者もいれば、レイヴンとジェーンの噂を信じている者もいる。そして、その噂を利用しようとしている者もいる。
すれ違う相手がどちらなのか、2人が気にする必要はない。
レイヴンとアリシアは行き会った貴族たちの挨拶を受けながら親しそうに笑い合っていた。
「………?」
アリシアはいくつもの花壇の向こう、レイヴンの執務室に近い回廊の柱の陰からこちらをじっと見ているキャロル・グーリッド伯爵令嬢の姿が見えた気がした。
だけどただの伯爵令嬢であるキャロルが登城する理由も執務棟にいるような理由もない。
「どうかしたの?」
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キャロルの気持ちを知るアリシアは、なぜかレイヴンにはキャロルの話をしたくないと感じていた。
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レイヴンはそんなアリシアを安心させようと明るく振る舞う。
「ルトビア公爵もいるし、レオナルドもいる。大丈夫だよ」
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遠ざかる馬車をアリシアは不安な気持ちのまま見送った。
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