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3章
63 待ち時間①
レイヴンを見送った後、アリシアは自室のソファに座り込んでいた。
やるべき執務はあるが、とても手につきそうにない。
エレノアが入れてくれた紅茶を何度も口に運んでは溜息を吐いていた。
そんな時、マルグリットとノティスが訪ねて来たのでアリシアは驚いた。
これまでマルグリットが王太子宮に来たことはほとんどない。用事がある時はアリシアが呼び出される立場だ。
「こんな時に急に訪ねて来てごめんなさいね。驚いたでしょう」
「いいえ、とんでもございません」
本当は驚いているし、今はマルグリットやノティスへ気を遣う余裕もない。
だけどそんなことを口にすることはできない。
アリシアは恭しく頭を下げて2人を迎え入れた。
「先日はカナリーとノティスが失礼をしたそうで、そのお詫びをしなければと思っていたのよ」
ソファに落ち着いたマルグリットがそう言うと、その隣でノティスが頭を下げる。
「それには及びませんわ。お2人には既に謝罪をいただいております」
アリシアが席を外していた間にレイヴンから咎められたらしく、あの後ノティスからも謝罪を受けている。
レイヴンが駆けつけて来た時、アリシアへ危害を加えられることを警戒していたレイヴンに、ノティスは予めレイヴンの許可を取るべきだったと言っていた。だけどそもそもがそういう問題ではなく、アリシアへ先触れを出すべきだったのだ。
そうすればその時点でレイヴンへ知らせが行き、訪問を断ることも、初めからレイヴンが同席することもできた。
アリシアへの来客がレイヴンへ知らせられるシステムもどうかと思うが、この場合はそれで問題を生まずに済んだのだ。
ただノティスはこれまで誰かを訪ねたことがなく、訪問時の礼儀を失念してしまったのだということで、レイヴンも強くは咎めなかったはずだ。
ノティスはまだ対人関係に関してリハビリ中である。
これが元でノティスが誰かを訪ねることに恐怖心を持ってはいけないと、レイヴンも考えている。
「そう言ってもらえると嬉しいわ。2人には私からきちんと注意をしたから、今後は二度とそんな無礼はしないでしょう」
マルグリットも既に終わった話だということはわかっていた。
ただ2人の保護者としてひとこと謝罪をすることと、そしてその姿をノティスに見せることが重要だと捉えている。
「このケーキが今、王都で流行っているそうよ」
「チョコレートケーキですか」
3人の前には紅茶とチョコレートが並べられている。
このケーキはマルグリットがお詫びの品として用意したものだ。
「とても美味しいですわ」
綺麗な所作でアリシアがケーキを口に運んでいる。
マルグリットは微笑みを浮かべながらその様子を見つめていた。
マルグリットはカナリーと2人きりの時にあの日の出来事を聞いていた。
突然現れたカナリーに、アリシアが恐慌状態に陥ったことも知っているのだ。
マルグリットも王家へ嫁いできた身である。
公と私の使い分けに苦労したこともあった。
だけどアリシアは王宮での生活はすべて公と捉えているのだ。
その原因がレイヴンだと知っているマルグリットは、一時も気を抜けない生活を送るアリシアに、申し訳なさと憐みを感じていた。
今も本当はジェーンのことが気掛かりで他のことに気持ちを向ける余裕などないだろう。
それなのにそんなことは感じさせないようにシャンとしている。
その姿勢を保つためにどれほどの精神力が必要なのかわかるだけに心が痛んだ。
マルグリットは立ち上がるとアリシアの隣へ移る。
驚いてマルグリットを見上げたアリシアの手を取り、両手で包み込んだ。
「ジェーン嬢が心配なのでしょう?あなたほどではないとしても、ジェーン嬢を案じているのは私たちも同じなの。一緒におしゃべりしていれば、少しは気持ちが紛れるのではないかしら」
「――ありがとうございます」
マルグリットの優しい眼差しと手を包みこむ温もりにアリシアの気持ちが緩む。
それを感じ取ったマルグリットは優しく微笑んだ。
やるべき執務はあるが、とても手につきそうにない。
エレノアが入れてくれた紅茶を何度も口に運んでは溜息を吐いていた。
そんな時、マルグリットとノティスが訪ねて来たのでアリシアは驚いた。
これまでマルグリットが王太子宮に来たことはほとんどない。用事がある時はアリシアが呼び出される立場だ。
「こんな時に急に訪ねて来てごめんなさいね。驚いたでしょう」
「いいえ、とんでもございません」
本当は驚いているし、今はマルグリットやノティスへ気を遣う余裕もない。
だけどそんなことを口にすることはできない。
アリシアは恭しく頭を下げて2人を迎え入れた。
「先日はカナリーとノティスが失礼をしたそうで、そのお詫びをしなければと思っていたのよ」
ソファに落ち着いたマルグリットがそう言うと、その隣でノティスが頭を下げる。
「それには及びませんわ。お2人には既に謝罪をいただいております」
アリシアが席を外していた間にレイヴンから咎められたらしく、あの後ノティスからも謝罪を受けている。
レイヴンが駆けつけて来た時、アリシアへ危害を加えられることを警戒していたレイヴンに、ノティスは予めレイヴンの許可を取るべきだったと言っていた。だけどそもそもがそういう問題ではなく、アリシアへ先触れを出すべきだったのだ。
そうすればその時点でレイヴンへ知らせが行き、訪問を断ることも、初めからレイヴンが同席することもできた。
アリシアへの来客がレイヴンへ知らせられるシステムもどうかと思うが、この場合はそれで問題を生まずに済んだのだ。
ただノティスはこれまで誰かを訪ねたことがなく、訪問時の礼儀を失念してしまったのだということで、レイヴンも強くは咎めなかったはずだ。
ノティスはまだ対人関係に関してリハビリ中である。
これが元でノティスが誰かを訪ねることに恐怖心を持ってはいけないと、レイヴンも考えている。
「そう言ってもらえると嬉しいわ。2人には私からきちんと注意をしたから、今後は二度とそんな無礼はしないでしょう」
マルグリットも既に終わった話だということはわかっていた。
ただ2人の保護者としてひとこと謝罪をすることと、そしてその姿をノティスに見せることが重要だと捉えている。
「このケーキが今、王都で流行っているそうよ」
「チョコレートケーキですか」
3人の前には紅茶とチョコレートが並べられている。
このケーキはマルグリットがお詫びの品として用意したものだ。
「とても美味しいですわ」
綺麗な所作でアリシアがケーキを口に運んでいる。
マルグリットは微笑みを浮かべながらその様子を見つめていた。
マルグリットはカナリーと2人きりの時にあの日の出来事を聞いていた。
突然現れたカナリーに、アリシアが恐慌状態に陥ったことも知っているのだ。
マルグリットも王家へ嫁いできた身である。
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だけどアリシアは王宮での生活はすべて公と捉えているのだ。
その原因がレイヴンだと知っているマルグリットは、一時も気を抜けない生活を送るアリシアに、申し訳なさと憐みを感じていた。
今も本当はジェーンのことが気掛かりで他のことに気持ちを向ける余裕などないだろう。
それなのにそんなことは感じさせないようにシャンとしている。
その姿勢を保つためにどれほどの精神力が必要なのかわかるだけに心が痛んだ。
マルグリットは立ち上がるとアリシアの隣へ移る。
驚いてマルグリットを見上げたアリシアの手を取り、両手で包み込んだ。
「ジェーン嬢が心配なのでしょう?あなたほどではないとしても、ジェーン嬢を案じているのは私たちも同じなの。一緒におしゃべりしていれば、少しは気持ちが紛れるのではないかしら」
「――ありがとうございます」
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それを感じ取ったマルグリットは優しく微笑んだ。
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