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3章
68 議会①
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「……ごめん、アリシア」
アリシアを抱き締めたままレイヴンがそう言った。
それだけでアリシアはわかってしまった。ジェーンは議会で傷痕を見せたのだ。
「…そうですか」
アリシアは大きく息を吐いた。
ショックではあるものの、覚悟をしていたことだ。
それに傷痕を見せる判断をしたのはジェーンなのだから、レイヴンが謝ることはない。
ただ国王は、ジェーンが議会で話をすると決まった直後にその旨を通達していた。
その噂はあっという間に広がり、傍聴券が飛ぶように売れたと聞いている。
議場には傍聴券さえ買えば貴族でなくても入ることが出来る為、女性の継承権に反対する貴族から王太子の情婦を一目見てやろうという裕福層の平民までが詰めかけていたはずだ。
国王が早期に議会へ通達したのは、そうして人を集める為である。
悪い噂をしずめて事態の収拾を図る為に、ジェーンが話す内容を1人でも多くの人に直接聞いてもらいたい。そんな思惑があったのだ。
ただそれはジェーンが傷を晒した時に、目にする者を意図的に増やしたということでもある。
レイヴンが気に病んでいるのはそのことだろう。
だけどそれも含めてジェーンが納得して決めたことだ。
「それで、ジェーン嬢はどうしたの?」
「母上!ノティス?!なぜ2人がここに…?」
マルグリットに問い掛けられて、レイヴンはハッと顔を上げた。
ようやく2人の存在に気がついたようだ。レイヴンが驚いて声を上げる。
だけど両手はアリシアの背中にまわされたままだ。
「お2人は私が心細いだろうと、訪ねて来てくださったのですわ」
「それは…。アリシアを気遣ってくださり、ありがとうございます」
レイヴンの表情が緩む。
レイヴンが正殿へ行った日から、それまで交流のなかったノティスやカナリーが急にアリシアを訪ねて来るようになった。
レイヴンはジェーンとの噂をこの時に聞いたと言っていたけれど、交わされた会話はそれだけではないはずだ。
今日マルグリットがノティスと共に訪ねて来てくれたことも、それと関係があるのだろう。
レイヴンはアリシアの腰に腕をまわしたままソファへと座った。レイヴンが戻った時にマルグリットはノティスの隣へと移動している。
「ジェーン嬢ですが、レオナルドと一緒にルトビア公爵邸へ帰らせました。今日は親しい人が傍にいた方が良いと思いましたので。疲れているはずですから研修は明日まで休むように伝えています」
「そうね、ジェーン嬢も今は気が張っているでしょうけれど、気が緩んだ時に疲れが出るものですからね。ゆっくり休んでもらうといいわ」
アリシアもホッとする。今はジェーンを1人にしたくない。
公爵邸にはオレリアもいるので、ジェーンをよく気遣ってくれるだろう。
「それで…。議会でのことを教えていただけますか?」
どんなことであっても聞いておきたい。
そんなアリシアの気持ちがわかるのだろう。
レイヴンは頷くとアリシアの手をそっと握って話し出した。
アリシアを抱き締めたままレイヴンがそう言った。
それだけでアリシアはわかってしまった。ジェーンは議会で傷痕を見せたのだ。
「…そうですか」
アリシアは大きく息を吐いた。
ショックではあるものの、覚悟をしていたことだ。
それに傷痕を見せる判断をしたのはジェーンなのだから、レイヴンが謝ることはない。
ただ国王は、ジェーンが議会で話をすると決まった直後にその旨を通達していた。
その噂はあっという間に広がり、傍聴券が飛ぶように売れたと聞いている。
議場には傍聴券さえ買えば貴族でなくても入ることが出来る為、女性の継承権に反対する貴族から王太子の情婦を一目見てやろうという裕福層の平民までが詰めかけていたはずだ。
国王が早期に議会へ通達したのは、そうして人を集める為である。
悪い噂をしずめて事態の収拾を図る為に、ジェーンが話す内容を1人でも多くの人に直接聞いてもらいたい。そんな思惑があったのだ。
ただそれはジェーンが傷を晒した時に、目にする者を意図的に増やしたということでもある。
レイヴンが気に病んでいるのはそのことだろう。
だけどそれも含めてジェーンが納得して決めたことだ。
「それで、ジェーン嬢はどうしたの?」
「母上!ノティス?!なぜ2人がここに…?」
マルグリットに問い掛けられて、レイヴンはハッと顔を上げた。
ようやく2人の存在に気がついたようだ。レイヴンが驚いて声を上げる。
だけど両手はアリシアの背中にまわされたままだ。
「お2人は私が心細いだろうと、訪ねて来てくださったのですわ」
「それは…。アリシアを気遣ってくださり、ありがとうございます」
レイヴンの表情が緩む。
レイヴンが正殿へ行った日から、それまで交流のなかったノティスやカナリーが急にアリシアを訪ねて来るようになった。
レイヴンはジェーンとの噂をこの時に聞いたと言っていたけれど、交わされた会話はそれだけではないはずだ。
今日マルグリットがノティスと共に訪ねて来てくれたことも、それと関係があるのだろう。
レイヴンはアリシアの腰に腕をまわしたままソファへと座った。レイヴンが戻った時にマルグリットはノティスの隣へと移動している。
「ジェーン嬢ですが、レオナルドと一緒にルトビア公爵邸へ帰らせました。今日は親しい人が傍にいた方が良いと思いましたので。疲れているはずですから研修は明日まで休むように伝えています」
「そうね、ジェーン嬢も今は気が張っているでしょうけれど、気が緩んだ時に疲れが出るものですからね。ゆっくり休んでもらうといいわ」
アリシアもホッとする。今はジェーンを1人にしたくない。
公爵邸にはオレリアもいるので、ジェーンをよく気遣ってくれるだろう。
「それで…。議会でのことを教えていただけますか?」
どんなことであっても聞いておきたい。
そんなアリシアの気持ちがわかるのだろう。
レイヴンは頷くとアリシアの手をそっと握って話し出した。
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