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3章
81 消える噂と新たな噂①
「お兄様とお義姉様が中央庭園で過ごされる仲睦まじい様子が噂になっていますわ。お兄様も中々やりますわね」
レイヴンと中央庭園へ行った日から数日後のお茶会で、楽しそうなカナリーにそう言われたアリシアは苦笑するしかない。
あの東屋が庭園中から見えていることは、よく考えればわかることだった。
それなのにアリシアは沢山の人々に見られていることなど少しも気づかず、レイヴンからの口づけを受け入れてしまっていた。おかげで今、社交界ではその時の噂話が席巻している。
レイヴンはわかってやっていたに違いない。
「私との噂はほとんど消えたみたいでホッと致しました」
そう言って微笑むのはジェーンである。
実のところレイヴンとジェーンの噂はあの議会の日から急速に萎んでいた。
ジェーンの体にある痣や傷痕を見た貴族たちが、「あんな傷物の令嬢を王太子殿下が相手にするとは思えない」と言い出したからだ。
腹立たしいことではあるがこの貴族社会では正しい反応であり、ジェーンが狙っていた効果でもあった。
ジェーンはレイヴンとの噂について一言も口にしていない。
だけどジェーンは初めから、議会を傍聴している者たちが噂は間違いではないかと考えるように誘導していた。
その初手がカテーシーである。
ジェーンは議会で話を始める前と終わった後にカテーシーをした。
だけど本来あそこでカテーシーをする必要はない。
議会では平民が呼ばれて話をすることもある。
女性が呼ばれることはあまりないが全くないというわけでもなく、平民の女性はカテーシーの仕方など習っていない。議会で話をする時の礼は、身分に係わらず男女共に胸に手を当てて頭を下げるものが一般的とされている。
カテーシーをしても悪いことはないのだが、する必要のないところで形の悪い不格好なカテーシーを敢てしたのは何故なのか。
それはジェーンがこれまで侯爵家で不当な扱いを受けており、礼儀作法も碌に教えられずにいた事実を視覚で認めさせる為である。
議会でジェーンの姿を見ていた貴婦人たちは、かつてルトビア前公爵夫人やオレリアが、「継母がジェーンを不当に扱い社交の邪魔をする」と言っていたことを思い出したはずだ。
そして学園を卒業した後の2人にほとんど接点がないことに気がつく。
ジェーンがレイヴンと顔を合わせるとすれば舞踏会やお茶会などの社交の場だが、ドレスや装飾品を用意することができないジェーンは、人脈作りに欠かせない王宮での舞踏会やお茶会にもほとんど出席していない。
僅かに出席している、王都にいる貴族すべてに出席義務がある大規模なパーティーでは人目が多すぎて王太子と密会するには不適切だ。
それではレイヴンとジェーンはいつ、どこで会っていたのか?
現実的に考えれば、どこにいても注目されるレイヴンが誰にも知られず密会できる場所などどこにもなく、2人の密会現場を見たことがある者は存在しない。
これだけ噂になっているのに目撃者がいないことの不自然さに気づいた者はその時点で噂の信憑性に疑問を抱く。
その後ジェーンが話したことで噂の一部が否定されることになる。
そして最後にあの傷痕である。
あの場所に立ち会った者たちは、噂は間違いなのだと自分で考え、結論を出していた。
「こんなに思い通りになって良いのかしら」と笑うジェーンは、間違いなくルトビア公爵家の血筋である。
ジェーンは自ら傷を晒すことでレイヴンのお手つきであるという噂を払拭し、貞節に関する名誉を回復した。
それに加えて今回の中央庭園でのことである。
レイヴンがアリシアへ向ける寵愛を見せつけたことで、僅かに燻っていた2人の噂を完全に消し去ることになった。
レイヴンと中央庭園へ行った日から数日後のお茶会で、楽しそうなカナリーにそう言われたアリシアは苦笑するしかない。
あの東屋が庭園中から見えていることは、よく考えればわかることだった。
それなのにアリシアは沢山の人々に見られていることなど少しも気づかず、レイヴンからの口づけを受け入れてしまっていた。おかげで今、社交界ではその時の噂話が席巻している。
レイヴンはわかってやっていたに違いない。
「私との噂はほとんど消えたみたいでホッと致しました」
そう言って微笑むのはジェーンである。
実のところレイヴンとジェーンの噂はあの議会の日から急速に萎んでいた。
ジェーンの体にある痣や傷痕を見た貴族たちが、「あんな傷物の令嬢を王太子殿下が相手にするとは思えない」と言い出したからだ。
腹立たしいことではあるがこの貴族社会では正しい反応であり、ジェーンが狙っていた効果でもあった。
ジェーンはレイヴンとの噂について一言も口にしていない。
だけどジェーンは初めから、議会を傍聴している者たちが噂は間違いではないかと考えるように誘導していた。
その初手がカテーシーである。
ジェーンは議会で話を始める前と終わった後にカテーシーをした。
だけど本来あそこでカテーシーをする必要はない。
議会では平民が呼ばれて話をすることもある。
女性が呼ばれることはあまりないが全くないというわけでもなく、平民の女性はカテーシーの仕方など習っていない。議会で話をする時の礼は、身分に係わらず男女共に胸に手を当てて頭を下げるものが一般的とされている。
カテーシーをしても悪いことはないのだが、する必要のないところで形の悪い不格好なカテーシーを敢てしたのは何故なのか。
それはジェーンがこれまで侯爵家で不当な扱いを受けており、礼儀作法も碌に教えられずにいた事実を視覚で認めさせる為である。
議会でジェーンの姿を見ていた貴婦人たちは、かつてルトビア前公爵夫人やオレリアが、「継母がジェーンを不当に扱い社交の邪魔をする」と言っていたことを思い出したはずだ。
そして学園を卒業した後の2人にほとんど接点がないことに気がつく。
ジェーンがレイヴンと顔を合わせるとすれば舞踏会やお茶会などの社交の場だが、ドレスや装飾品を用意することができないジェーンは、人脈作りに欠かせない王宮での舞踏会やお茶会にもほとんど出席していない。
僅かに出席している、王都にいる貴族すべてに出席義務がある大規模なパーティーでは人目が多すぎて王太子と密会するには不適切だ。
それではレイヴンとジェーンはいつ、どこで会っていたのか?
現実的に考えれば、どこにいても注目されるレイヴンが誰にも知られず密会できる場所などどこにもなく、2人の密会現場を見たことがある者は存在しない。
これだけ噂になっているのに目撃者がいないことの不自然さに気づいた者はその時点で噂の信憑性に疑問を抱く。
その後ジェーンが話したことで噂の一部が否定されることになる。
そして最後にあの傷痕である。
あの場所に立ち会った者たちは、噂は間違いなのだと自分で考え、結論を出していた。
「こんなに思い通りになって良いのかしら」と笑うジェーンは、間違いなくルトビア公爵家の血筋である。
ジェーンは自ら傷を晒すことでレイヴンのお手つきであるという噂を払拭し、貞節に関する名誉を回復した。
それに加えて今回の中央庭園でのことである。
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