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3章
82 消える噂と新たな噂②
「噂といえば、お義姉様はグーリッド伯爵令嬢のことはご存知でしょうか」
「グーリッド伯爵令嬢?」
アリシアの脳裏に執務棟で会ったキャロルの姿が蘇る。
「レイヴン様と中央庭園へ行った日に会いましたけれど、グーリッド伯爵令嬢がどうかしたのですか?」
その答えを聞いたカナリーは、「やっぱりお会いになったのですね」と満足そうに頷いた。
「ちょうどその頃からグーリッド伯爵令嬢の姿を王宮で見かけなくなったのですわ。泣きながら帰っていく姿を見たと言う者もいますし、お2人の仲睦まじい様子を近くで見て、お兄様とお義姉様の間に入ろうとしても無理だということがやっとわかったようですわ」
「それは…どういうことですの?」
キャロルがレイヴンの側妃になることを望んでいたのは知っている。
だけどそれはもう以前のことで、今はレオナルドの婚約者候補になっているはずだ。
だがあの時、アリシアの許可を得て頭を上げたキャロルの目は潤んでいた。
アリシアの胸がドクンと嫌な音を立てる。
「…グーリッド伯爵令嬢はレオナルド殿の婚約者候補になってから、その立場を利用してお兄様の気を引こうとしていたのです。レオナルド殿に会いに来る振りをして、毎日の様にお兄様の執務室の辺りをうろついていましたわ」
本来執務棟にいるはずのない令嬢が頻繁に姿を見せているのだから人目を引かないはずがない。キャロルのことは執務棟で働く者達の間で話題になっていた。
父親のグーリッド伯爵は、婚約者候補となったレオナルドと親交を持たせる為に連れて来ていると公言しているが、それなら直接レオナルドの執務室を訪ねれば良い話である。
それに本人はわかっていないようだが、キャロルの表情は非常にわかりやすい。
レイヴンへ向けられる顔とレオナルドへ向けられる顔はあまりにも違っていた。
「偶々近くを通りかかった者が見てもわかるのですもの。お兄様もレオナルド殿も当然気がついていますわ」
「それで…レイヴン様は?」
つい最近までレイヴンはジェーンとの仲を噂されていた。そんな時に愚かなことをするとは思っていない。
それなのにアリシアの胸にはまた言いようのないもやもやした気持ちが広がっている。
「もちろんお兄様が相手にするはずがありませんわ。グーリッド伯爵令嬢はあくまでレオナルド殿に会いに来ているのですもの。お兄様は常に冷たくあしらっていたようですわ」
キャロルの世間的な立場はレオナルドの婚約者候補である。
それなのにレオナルドを出汁にしてレイヴンへ取り入ろうとするキャロルを、居合わせた者たちは冷ややかに見ていた。
ただ肝心のレイヴンはキャロルへ一片の興味も向けていない。
どれだけ冷たくあしらわれても諦めずに執務室の周りを徘徊するキャロルは嘲笑の的になっていた。
この噂が社交界で広がらずに一部の者だけで留まっていたのは、レイヴンとジェーンの噂が人々の興味をさらっていたからである。
「なんだかジョッシュ殿を思い出すわね」
アリシアが呟くとジェーンが苦笑する。
ジョッシュもジェーンへ会いに来る振りをしてエミリーに会いに来ていた。
胸に広がる不快感はジョッシュを思い出すからだろうとアリシアは思う。
ただジョッシュの時と違って、レイヴンはキャロルを相手にしていない。
アリシアは安堵している自分に気がついていた。
「グーリッド伯爵令嬢?」
アリシアの脳裏に執務棟で会ったキャロルの姿が蘇る。
「レイヴン様と中央庭園へ行った日に会いましたけれど、グーリッド伯爵令嬢がどうかしたのですか?」
その答えを聞いたカナリーは、「やっぱりお会いになったのですね」と満足そうに頷いた。
「ちょうどその頃からグーリッド伯爵令嬢の姿を王宮で見かけなくなったのですわ。泣きながら帰っていく姿を見たと言う者もいますし、お2人の仲睦まじい様子を近くで見て、お兄様とお義姉様の間に入ろうとしても無理だということがやっとわかったようですわ」
「それは…どういうことですの?」
キャロルがレイヴンの側妃になることを望んでいたのは知っている。
だけどそれはもう以前のことで、今はレオナルドの婚約者候補になっているはずだ。
だがあの時、アリシアの許可を得て頭を上げたキャロルの目は潤んでいた。
アリシアの胸がドクンと嫌な音を立てる。
「…グーリッド伯爵令嬢はレオナルド殿の婚約者候補になってから、その立場を利用してお兄様の気を引こうとしていたのです。レオナルド殿に会いに来る振りをして、毎日の様にお兄様の執務室の辺りをうろついていましたわ」
本来執務棟にいるはずのない令嬢が頻繁に姿を見せているのだから人目を引かないはずがない。キャロルのことは執務棟で働く者達の間で話題になっていた。
父親のグーリッド伯爵は、婚約者候補となったレオナルドと親交を持たせる為に連れて来ていると公言しているが、それなら直接レオナルドの執務室を訪ねれば良い話である。
それに本人はわかっていないようだが、キャロルの表情は非常にわかりやすい。
レイヴンへ向けられる顔とレオナルドへ向けられる顔はあまりにも違っていた。
「偶々近くを通りかかった者が見てもわかるのですもの。お兄様もレオナルド殿も当然気がついていますわ」
「それで…レイヴン様は?」
つい最近までレイヴンはジェーンとの仲を噂されていた。そんな時に愚かなことをするとは思っていない。
それなのにアリシアの胸にはまた言いようのないもやもやした気持ちが広がっている。
「もちろんお兄様が相手にするはずがありませんわ。グーリッド伯爵令嬢はあくまでレオナルド殿に会いに来ているのですもの。お兄様は常に冷たくあしらっていたようですわ」
キャロルの世間的な立場はレオナルドの婚約者候補である。
それなのにレオナルドを出汁にしてレイヴンへ取り入ろうとするキャロルを、居合わせた者たちは冷ややかに見ていた。
ただ肝心のレイヴンはキャロルへ一片の興味も向けていない。
どれだけ冷たくあしらわれても諦めずに執務室の周りを徘徊するキャロルは嘲笑の的になっていた。
この噂が社交界で広がらずに一部の者だけで留まっていたのは、レイヴンとジェーンの噂が人々の興味をさらっていたからである。
「なんだかジョッシュ殿を思い出すわね」
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ジョッシュもジェーンへ会いに来る振りをしてエミリーに会いに来ていた。
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アリシアは安堵している自分に気がついていた。
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