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3章
83 負い目①
「調べ物は終わったのか?」
「ええ。ようやくすべての調査が終わりました。これと同じものを先程宰相へ提出しましたので、あとは宰相が宜しく計らうでしょう」
レオナルドが書類の束をレイヴンへ手渡す。議会でジェーンをレイヴンの情婦だと言い立てた者たちの家を調べたものだ。
議会からひと月ほど経っている。
これまでにも順次報告書は上がっており、既に処罰を受けた家もある。
一度に纏めて処罰をするようなことは出来ない。
相手は娘をレイヴンの側妃にしようとしている者たちだ。
裁くのは宰相であるアダムの為、纏めて処罰をすれば娘を王太子妃にしているアダムの陰謀だという風評を得ることになる。そうなるとルトビア公爵家と敵対する勢力が力を持つことになり、公爵家を潰そうと動き出す。
政局は混乱し、万が一のことがあればアリシアは後ろ盾を失うことになる。
そうならない様に状況を見極め、少しずつ処罰をしていくのだ。
このひと月の間にも少しずつ変化があった。
レイヴンとジェーンの噂はもうほとんど聞こえてこない。反対にアリシアへ向けられるレイヴンの寵愛の深さがそこかしこで囁かれている。
以前話していた通り、2人は特別なことをしていない。
ただ2人で過ごす様子を度々人に見せているだけだ。
ジェーンもマナーの授業を受けるようになった。
研修には期限があるので怪我が治るのを待ちきれなかった部分がある。
コルセットをつけなくてもできるテーブルマナーから始まり、徐々に内容を増やしていく。美しい所作を身につけるには時間が足りないのは間違いないが、それは初めからわかっていたことでもある。
それをなんとか補おうと、お茶会でもアリシアやカナリーからアドバイスを受けながら必死に取り組んでいた。
ダンスの授業が始まるのももうすぐだろう。
レイヴンは目の前に佇むレオナルドへ視線を向ける。
以前レオナルドへ訊いたことがあった。
公爵家嫡男のレオナルドがまだ結婚しておらず、婚約者さえいないのは、レオナルドが婚約者を持つことを拒んでいたからだ。
それはジェーンを想っているからではないのかと、レイヴンは疑っていた。
この国では従兄妹間の婚姻は認められている。
だがレオナルドは公爵家の嫡男でジェーンは侯爵家の惣領姫だ。互いに家を継がなければならない為、結婚することはできない。
それでもジェーンを諦めきれないレオナルドは、ジェーンが結婚するまで婚約者を作らないつもりなのではないだろうか。
もしそうならばノティスとジェーンの婚約を望む王家は、レオナルドにとって酷なこと強いているのかもしれない。
レイヴンが躊躇いながら問い掛けると、レオナルドは目を丸くしていた。
そして苦笑を漏らす。
「ジェーンは妹ですよ。僕にとってジェーンは、アリシアは同じ妹です。ただそうですね……、僕にはジェーンに対する負い目があります。だからジェーンを託せる相手が現れるまで、結婚するつもりも婚約者を持つつもりもありませんでした。それは間違いありません」
「ええ。ようやくすべての調査が終わりました。これと同じものを先程宰相へ提出しましたので、あとは宰相が宜しく計らうでしょう」
レオナルドが書類の束をレイヴンへ手渡す。議会でジェーンをレイヴンの情婦だと言い立てた者たちの家を調べたものだ。
議会からひと月ほど経っている。
これまでにも順次報告書は上がっており、既に処罰を受けた家もある。
一度に纏めて処罰をするようなことは出来ない。
相手は娘をレイヴンの側妃にしようとしている者たちだ。
裁くのは宰相であるアダムの為、纏めて処罰をすれば娘を王太子妃にしているアダムの陰謀だという風評を得ることになる。そうなるとルトビア公爵家と敵対する勢力が力を持つことになり、公爵家を潰そうと動き出す。
政局は混乱し、万が一のことがあればアリシアは後ろ盾を失うことになる。
そうならない様に状況を見極め、少しずつ処罰をしていくのだ。
このひと月の間にも少しずつ変化があった。
レイヴンとジェーンの噂はもうほとんど聞こえてこない。反対にアリシアへ向けられるレイヴンの寵愛の深さがそこかしこで囁かれている。
以前話していた通り、2人は特別なことをしていない。
ただ2人で過ごす様子を度々人に見せているだけだ。
ジェーンもマナーの授業を受けるようになった。
研修には期限があるので怪我が治るのを待ちきれなかった部分がある。
コルセットをつけなくてもできるテーブルマナーから始まり、徐々に内容を増やしていく。美しい所作を身につけるには時間が足りないのは間違いないが、それは初めからわかっていたことでもある。
それをなんとか補おうと、お茶会でもアリシアやカナリーからアドバイスを受けながら必死に取り組んでいた。
ダンスの授業が始まるのももうすぐだろう。
レイヴンは目の前に佇むレオナルドへ視線を向ける。
以前レオナルドへ訊いたことがあった。
公爵家嫡男のレオナルドがまだ結婚しておらず、婚約者さえいないのは、レオナルドが婚約者を持つことを拒んでいたからだ。
それはジェーンを想っているからではないのかと、レイヴンは疑っていた。
この国では従兄妹間の婚姻は認められている。
だがレオナルドは公爵家の嫡男でジェーンは侯爵家の惣領姫だ。互いに家を継がなければならない為、結婚することはできない。
それでもジェーンを諦めきれないレオナルドは、ジェーンが結婚するまで婚約者を作らないつもりなのではないだろうか。
もしそうならばノティスとジェーンの婚約を望む王家は、レオナルドにとって酷なこと強いているのかもしれない。
レイヴンが躊躇いながら問い掛けると、レオナルドは目を丸くしていた。
そして苦笑を漏らす。
「ジェーンは妹ですよ。僕にとってジェーンは、アリシアは同じ妹です。ただそうですね……、僕にはジェーンに対する負い目があります。だからジェーンを託せる相手が現れるまで、結婚するつもりも婚約者を持つつもりもありませんでした。それは間違いありません」
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