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第2部 4章
15 寵愛
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アリシアたちが部屋へ戻ると、すぐにレイヴンがアリシアの傍へ来た。
軽く抱き締めて頬に口づける。
アリシアもレイヴンを抱き締め返し、笑顔を見せる。
「外は寒くなかった?」
「ええ。今日は良いお天気ですもの。外はとても気持ち良かったですわ」
「そうか、楽しめたみたいだね」
見つめ合いながら微笑み合う2人にサラが頬を染めている。アシュリーは口元を扇で隠しながら、「まあ、まあ、まあ」と嬉しそうな声を上げていた。
男性陣でも、そんな2人を見慣れているのはレオナルドだけである。
元々レイヴンの気持ちを知っていて侯爵邸での2人を見ているロバートは大体予想できていたようだが、それでもアリシアの反応に驚いている。
その他の男たちは、最近聞くようになった噂や先程の話からレイヴンがアリシアへ寵愛を向けていることは理解していても、実際にその様子を目にするのはまた違うようだ。
アダムは複雑そうな、苦虫を嚙み潰したような顔で視線をオレリアへ向けていた。
父親としては既に嫁いでいても、娘が男に抱き締められたり口づけられているのを見るのは複雑な気持ちになるようだ。だけどオレリアは仕方ないでしょう、といった顔で苦笑している。
サラと同じく領地でレイヴンとジェーンの噂を聞いていたルーファスは、アリシアへの寵愛を全身で表すレイヴンに驚いていた。
ルーファスもその噂自体は眉唾物だと思っていても、レイヴンとアリシアの仲が改善されているとは王都へ来るまで思ってもいなかったのだ。
それに先程ルーファスたちを迎え入れたアリシアは、ルーファスとロバートが同席することに緊張していて硬い表情をしていた。
その緊張も解けて余裕を取り戻したアリシアは、以前と違って柔らかい表情を見せている。
幸せそうなアリシアを見ていると、レイヴンに協力したいような気持ちが湧いてくる。
視覚の効果は絶大だった。
腰に腕をまわしたレイヴンに導かれてアリシアがソファへ座ると、オレリアたちも互いの夫の隣へ座る。
アリシアは笑っていてもどこか冴えない表情のレイヴンに気がついていた。
「何かありましたか?」と訊いてみても、レイヴンは驚いた表情の後、「なんでもないよ」と笑顔をみせる。
レオナルドへ視線を向けてみても、レオナルドは肩をすくめただけだった。
レイヴンの様子がおかしいのは、先程の話し合いが関係しているのだろう。
アリシアが部屋を出たのは、話を聞かれたくないレイヴンの意を汲んだからだ。
それを思うと、教えられなくて当然だった。
それからはルーファスたちの今後の予定を聞いたりしていた。
驚いたことに、ルーファスもロバートもしばらく王都に滞在するという。
ロバートがどれほど優秀でもルーファスが重ねた実務の経験に及ばないことはある。
その経験から得た知識を教授してもらうのだという。
「勿論すべての領地に同じ方法が通用するとは思っていません。ですが実際に役立った知識を知っているのと知らないのでは大きな違いがあるでしょう?」
「代わりにわたしは商売人としての知識を教えてもらうつもりです。ちょうど名産物の新たな販路を模索しているところですから」
モルガン伯爵家の名産物といえば何といっても織物である。
アリシアはサラが持参した美しい反物を受け取った。
モルガン伯爵家の織物は有名ではあるものの、伝統的なものであり新鮮味がない。新しいもの好きの貴族たちはモルガン伯爵家の織物から離れだしているようだ。
だけどアリシアが受け取ったものには新しい染料を使い、これまでにない美しい図柄が描かれている。アリシアがこれでドレスを作れば社交界で良い宣伝になるだろう。
アリシアはアシュリーとサラが王都を離れる前にまたお茶会をする約束をして皆を見送った。
最後に残ったレオナルドは、いつもより長めにアリシアを抱き締めていた。
ジェーンが旅立ち、レオナルドも淋しいのだと思ったアリシアは、抱き締め返す腕に力を込めた。
夜になり、湯浴みを終えたアリシアは、乾かした後の髪の手入れを受けていた。
専用の香油を使い、何度も髪を梳いていく。
説いているのはレイヴンだ。
アリシアが浴室からドレッシングルームへ移ると、そこでレイヴンが待っていた。
驚くアリシアにレイヴンは夜の支度を手伝いたいと言う。
残っているのは髪の手入れだけだ。
間違いなく王太子がするようなことではない。だけどレイヴンはこれまでもアリシアの湯浴みやマッサージを手伝ってきた。
今日はアリシアの支度が終わるのを大人しく待っていたものの、待ちきれずにこうしてやってきたのだ。
アリシアは一度部屋のソファで待つよう言ってみたものの、どうしても一緒にいたいというレイヴンを受け入れることにした。
レイヴンがこうした甘えたところを見せるのは、昼間の話が関係しているのだと本能的に察したのだ。
レイヴンが優しく髪を梳かしていく。
部屋の隅には侍女が控えているけれど、レイヴンが何か手順を間違えない限り声を掛けることはない。そしてただ髪を梳かすだけのこの手入れに間違えることなどあるはずがないのだ。
2人は鏡越しに見つめ合い、たわいない会話を楽しみながらこの夜の時間を過ごした。
軽く抱き締めて頬に口づける。
アリシアもレイヴンを抱き締め返し、笑顔を見せる。
「外は寒くなかった?」
「ええ。今日は良いお天気ですもの。外はとても気持ち良かったですわ」
「そうか、楽しめたみたいだね」
見つめ合いながら微笑み合う2人にサラが頬を染めている。アシュリーは口元を扇で隠しながら、「まあ、まあ、まあ」と嬉しそうな声を上げていた。
男性陣でも、そんな2人を見慣れているのはレオナルドだけである。
元々レイヴンの気持ちを知っていて侯爵邸での2人を見ているロバートは大体予想できていたようだが、それでもアリシアの反応に驚いている。
その他の男たちは、最近聞くようになった噂や先程の話からレイヴンがアリシアへ寵愛を向けていることは理解していても、実際にその様子を目にするのはまた違うようだ。
アダムは複雑そうな、苦虫を嚙み潰したような顔で視線をオレリアへ向けていた。
父親としては既に嫁いでいても、娘が男に抱き締められたり口づけられているのを見るのは複雑な気持ちになるようだ。だけどオレリアは仕方ないでしょう、といった顔で苦笑している。
サラと同じく領地でレイヴンとジェーンの噂を聞いていたルーファスは、アリシアへの寵愛を全身で表すレイヴンに驚いていた。
ルーファスもその噂自体は眉唾物だと思っていても、レイヴンとアリシアの仲が改善されているとは王都へ来るまで思ってもいなかったのだ。
それに先程ルーファスたちを迎え入れたアリシアは、ルーファスとロバートが同席することに緊張していて硬い表情をしていた。
その緊張も解けて余裕を取り戻したアリシアは、以前と違って柔らかい表情を見せている。
幸せそうなアリシアを見ていると、レイヴンに協力したいような気持ちが湧いてくる。
視覚の効果は絶大だった。
腰に腕をまわしたレイヴンに導かれてアリシアがソファへ座ると、オレリアたちも互いの夫の隣へ座る。
アリシアは笑っていてもどこか冴えない表情のレイヴンに気がついていた。
「何かありましたか?」と訊いてみても、レイヴンは驚いた表情の後、「なんでもないよ」と笑顔をみせる。
レオナルドへ視線を向けてみても、レオナルドは肩をすくめただけだった。
レイヴンの様子がおかしいのは、先程の話し合いが関係しているのだろう。
アリシアが部屋を出たのは、話を聞かれたくないレイヴンの意を汲んだからだ。
それを思うと、教えられなくて当然だった。
それからはルーファスたちの今後の予定を聞いたりしていた。
驚いたことに、ルーファスもロバートもしばらく王都に滞在するという。
ロバートがどれほど優秀でもルーファスが重ねた実務の経験に及ばないことはある。
その経験から得た知識を教授してもらうのだという。
「勿論すべての領地に同じ方法が通用するとは思っていません。ですが実際に役立った知識を知っているのと知らないのでは大きな違いがあるでしょう?」
「代わりにわたしは商売人としての知識を教えてもらうつもりです。ちょうど名産物の新たな販路を模索しているところですから」
モルガン伯爵家の名産物といえば何といっても織物である。
アリシアはサラが持参した美しい反物を受け取った。
モルガン伯爵家の織物は有名ではあるものの、伝統的なものであり新鮮味がない。新しいもの好きの貴族たちはモルガン伯爵家の織物から離れだしているようだ。
だけどアリシアが受け取ったものには新しい染料を使い、これまでにない美しい図柄が描かれている。アリシアがこれでドレスを作れば社交界で良い宣伝になるだろう。
アリシアはアシュリーとサラが王都を離れる前にまたお茶会をする約束をして皆を見送った。
最後に残ったレオナルドは、いつもより長めにアリシアを抱き締めていた。
ジェーンが旅立ち、レオナルドも淋しいのだと思ったアリシアは、抱き締め返す腕に力を込めた。
夜になり、湯浴みを終えたアリシアは、乾かした後の髪の手入れを受けていた。
専用の香油を使い、何度も髪を梳いていく。
説いているのはレイヴンだ。
アリシアが浴室からドレッシングルームへ移ると、そこでレイヴンが待っていた。
驚くアリシアにレイヴンは夜の支度を手伝いたいと言う。
残っているのは髪の手入れだけだ。
間違いなく王太子がするようなことではない。だけどレイヴンはこれまでもアリシアの湯浴みやマッサージを手伝ってきた。
今日はアリシアの支度が終わるのを大人しく待っていたものの、待ちきれずにこうしてやってきたのだ。
アリシアは一度部屋のソファで待つよう言ってみたものの、どうしても一緒にいたいというレイヴンを受け入れることにした。
レイヴンがこうした甘えたところを見せるのは、昼間の話が関係しているのだと本能的に察したのだ。
レイヴンが優しく髪を梳かしていく。
部屋の隅には侍女が控えているけれど、レイヴンが何か手順を間違えない限り声を掛けることはない。そしてただ髪を梳かすだけのこの手入れに間違えることなどあるはずがないのだ。
2人は鏡越しに見つめ合い、たわいない会話を楽しみながらこの夜の時間を過ごした。
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